第24話 安野がちょっとツンデレ
「結婚しよう」
「おう。なかなかいいんじゃないか?」
「ほんとに?やったぁ。練習の成果がでたみたい」
「いや、むしろ早いくらいだろ。まだ文化祭本番まで一週間近くあるぞ」
俺は放課後、いつもの風紀委員室で安野の劇の練習に付き合っていた。
今のは劇の最後のセリフなんだが、安野はなかなか堂に入っていて、そこらの男子なら勘違いして婚姻届けを持ってきていたまである。
「でもごめんね、遅くまで付き合ってもらっちゃって」
「いつもより一時間ほど延びただけだろ。買ったラノベも全部読み終わったし、暇なだけだ」
一時間ほどというのは文化祭準備ということで最終下校時間がその分延びたのだ。
とはいえ今までも安野の劇の個人練習は見てやっていた。
文化祭準備はだいたい最終下校時間の一時間前までに終わらなければいけない。
つまり、俺たちは各々の準備が終了してから、ここに集まっているのだ。
「和瀬君ちゃんとクラスの準備手伝ってる?」
「まあ、ほどほどに」
「怪しいなー」
「やってるって。買い出し行ったり装飾品作ったり買い出し行ったり」
「買い出し二回言ってるし。それに多分それ一人でやってるよね」
「俺は誰かの力を借りなくても一人でこなせる活力と能力があるんだよ」
「こなせるというかこなさざるをえないんでしょ?話しかけられないから」
「きこえなーい。何もきこえなーい」
俺が白々しく耳を塞いでいると、安野はクスッと笑った。
からかいやがって。
「そういう安野は意外と努力家だよな。もう十分すぎるくらいなのに個人でもこうして劇の練習をするなんて」
「意外とって。努力せずに成功する人なんていないよ」
「天才でもか?」
「多分ね。私は天才じゃないからわからないけど」
頭脳明晰、運動神経抜群、容姿端麗でみんなから崇められているが、安野は天才ではなく努力でここまで成り上がってきたらしい。
普段のハイスペックぶりからは想像できないな。
「でもあんま無理すんなよ。お前、風紀委員の仕事も忙しいみたいじゃないか。会議で色々チェックしたり、現場の指揮とかそのための会議とか」
「え、ええ。そうだけど私が何してるかまで和瀬君に言ったっけ?」
「あー。実は豊岡から聞いたんだよ」
「え!?豊岡さんから?知り合いだったの?」
「まあ、中学の時塾が同じだったんだよ」
「ふ、ふーん」
「なんだよ」
「別に……」
なんでちょっと不機嫌そうなんだよ。
安野は前髪をむやみにいじりながら帰宅の準備を進める。
「じ、じゃあさ、和瀬君。ちょっとお願いしたいことがあるんだけどいい?」
「ん?なんだ?」
「わ、私と文化祭一緒に回らない?」
「は?」
「べ、別に和瀬君と一緒にいたいからじゃなくてただ、和瀬君が他の人にいじめられないかを監視したいだけだからっ!か、勘違いしないでよねっ!」
「おー。今のツンデレっぽかったぞ。俺に言われずともヒロインの自主練なんて感心するなぁ」
「あ、で、でしょ?」
安野が俺にいらぬ心配をかけているのはわかったが、安野のヒロイン力が上がっていることを満足に思いながら、俺はほおーっと息を吐く。
でも、そういえば俺には先客が……
「あー。まあ一日目だけならいいぞ」
「え、なに。まさか女の子でもできた?」
急に安野が眼光を鋭くして食い下がってきた。
なんだよ。
「まあ、そうだが。豊岡だよ。あいつに風紀委員の手伝い頼まれて、それで二日目は一緒に見回りすることになっただけだ」
「また豊岡さん……仲いいんですね」
「別に仲いいって程じゃ……今回もあいつが一方的に押し付けてきたからで……」
「わかったよ。なら一日目は私と回ってね」
「了解だ」
俺の返事を聞くと、安野は相好を崩した。
何がそんなに安心できるのかわかんねえがな。
とにかくこれで俺は文化祭の一日目に安野と。二日目に豊岡と回るという今までの俺には考えられないようなイベントが確約されたのであった。
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【読者の皆様へ】
蒼下銀杏です。
更新が遅れてしまい申し訳ありません。
『ヒロイン属性だらけでワナビの超絶美少女にいつしか俺は溺愛されていた』の今後について近況ノートに報告させていただいているので、よろしければそちらを参照していただくと助かります。
更新は続くので、厚かましいお願いではありますが、これからもどうか拙作をよろしくお願いいたします。
ヒロイン属性だらけでワナビの超絶美少女にいつしか俺は溺愛されていた 下蒼銀杏 @tasinasasahi5
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