第3話 少女の生贄


 魔剣王の俺が命令した通りに、街の者たちは財宝を出し始めた。


 

 そして、一様に、街の長の指示の下、街の住人たちから、持てる財宝を全て吐き出させたが、


 以外に街の長は平然と、街の住民から財産を奪う仕事を、見るからに嬉しそうにしている。(コイツの方が悪魔に近い!)


 粗方の財宝が街の中央にうず高く積まれた。(これは可なりの財宝だ!)

 と、俺は積まれた財宝を見ながら思った。


 すると何かを思い出したかの様に、俺の手下の者が剣を翳して、集まっていた街の住民に向かって大声で命令する。

「お前らの中から、魔剣王、ガルガデス様への生贄を貰い受ける。若く美しい少女だ!その者を大人しく差し出せ!」


 ああ!?不味い、この街に入る前に、戦いで弱った俺の体を癒す為の生贄の話を思い出した。


 手下の兵士の命令を聞いた。街の長が言う、

「財宝の供出や街の男たちの徴兵は仕方有りませんが、娘まで差し出せとはあんまりな話です。」


 その長の話に、俺が頷く様にして言い掛けると、その横から、兵士長が言う、

「娘全員とは言わん、一人か二人位だ。街一番の美しい少女を差し出せば、後は何もしない、」


 街の長は、苦し気に考え込むが、

「うーん、では、誰か、この街の為に犠牲になる。心が清らかで、その容姿が最高に美しい少女、それは自分だと思う者は、自ら名乗り出る様に!」


 と、おかしな物言いで、中央広場に座り込んでいる街の人たちに伝えて、少女の生贄を募る。


 すると街の者たちが顔を見合わせ、ザワザワとざわ付く、だが少し経ち、その中の何人かが、立ち上がり前に出て来た。


 すぐ様に、俺の手下の兵士らは、街の者たちの中に突き進むと、立ち上がった。その者たちを素通りして、声を上げる。

「美しい少女だ!俺たちの様な顔じゃなく、憎らしい天使の様な顔をした少女は居ないのか?」


 その兵士の気遣いの無い言葉に、勇気を出して立ち上がった少女らが、その場に崩れる様に地面を叩いて泣き出した。


 そんな気まずい雰囲気の中、兵士らは、各々勝手に、美しいと思われる少女らを、次々と俺の前に連れて来る。


 それを覗き込む、街の長と俺だった。


 俺の前に集められた。美しいとされる少女たち、俺は、その少女と、連れて来た兵士を見る。


 胸を張る兵士たち、我こそは一番美しい少女を連れて来たと言う態度だ。


 一番最初に連れて来られた少女は、胸が大きく、只管に胸が大きい、


 二番目に連れて来られた少女は、小さい、兎に角、小さい少女だ。


 三番目に連れて来られた少女は、ツンとお澄ましした目つきの悪い少女、以下etc・・・


 俺の手下の兵士らは、自分好みの少女を連れて来て、自慢げに胸を張っている。


 俺は、マジマジと兵士の顔と少女を見比べる。


 如何にも危ない感じの少女に耳を掴まれながら嬉しそうな兵士、


 頭の上に花飾りを被らされた兵士と微笑む天然少女、


 俺は、本当に彼女らを真面目に選んだのかと言いたくなった。そんな中で、兵士長が、

「どいつもこいつも、仕方がない、適当に二三人混ぜて生贄と仕様!」


 これまた何ともいい加減な事を言い出した。兵士長、

「生きた心臓から血を絞り出し、我が主、魔剣王、ガルガデス様に捧げん!」


 兵士長は、天然少女と小間っしゃくれた少女を捕まえて連れて来る。


 ああつ!まてまて・・・と、俺が言おうとした時だった。


 俺の背後から、透き通った天使の様な声で、少女が叫んだ。

「待ちなさい悪魔ども!生贄なら、この私が為りましょう!」


 俺たちは、一斉に声のした方を振り返った。



 2020年4月16日、文章、齋藤務、

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逆境世界の真反対の勇者 齋藤務 @f16f4t90ah1

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