第2話 魔剣王 ガルガデス


 純天使兵団を打ち負かし、魔界の都に凱旋する為に、


 魔剣王ガルガデスと残酷魔甲兵団の部隊は、


 魔界の支配に反抗的な街を襲う、手下たちが街中に雪崩れ込むと、


 街の中は騒然となり、人々が悲鳴を上げて逃げ惑っていた。


「悪魔だ!悪魔どもが来たぞ!逃げろ!」


 俺の手下たちは(多分・・・?)手際よく街の者を捕まえては、


 手に持った太い棒で打ちのめした。


「ギャアーーー!うわああーー!」


 俺は(ああ、ひ、酷い、なんて酷い事をするんだ・・)


 黒い悪魔の馬上で顔を背けた。(どうしよう?止めなければ・・・)


 今、止めないと、こいつ等は人を殺しかねない、


 俺は馬上から降りると、腰の剣を掴み、天に翳して大声で叫んだ。


「うおおおおおおおおおおーーーーつ!ウオオオオオーーーーーー!」


 剣を翳した手から黒い炎が燃え上がり、天の黒雲が渦を巻く、口から吐き出す雄叫びは大地を震わせる。


「街の者たちよ、我が前に姿を現せ!さもなくば、隠れた家ごと踏み潰す!」


 俺の発した声は街中に響き渡った。少し経つと、おずおずと待ち人たちが姿を現す。


 有る物は力なく、ある者は怒りの顔を浮かべながら、俺の前に集まって来る。


 俺の手下の一人が言った。

「流石は、魔剣王ガルガデス様だぜ!街の者どもが言い成りだ!」


(俺の名は、魔剣王ガルガデス・・・)だが、兎に角、この場を収めねば、

「街の者よ、我が剣に逆らえば、お前たちの街は地獄となる。我が前に、全てを差し出せ!」


 街の長が俺に言う、

「魔剣王よ、街の者たちの命も体も差し出せと言うのですか?」


(俺はそこまで言ってない!)

「持っている財宝を全て差し出すのだ!金貨一枚隠さずに出せ!」

(ちょっと言い過ぎたかも知れない・・・)


 街の者たちは怪訝な顔をして、ポケットや懐から、お金を出し始めた。


 それを見た俺の手下が、疑問を言う、

「俺たち、魔界の魔兵は、人間の財宝は必要有りませんぜ、必要なのは命と体だ。」

「そうだそうだ!人間の血で祝杯を上げ様と言うならまだしも、なんで財宝なんて集めるのか?」


 俺は焦った。

「お、お前たちには解るまい、こ、この財宝を我が軍の軍資金にして、もっと大きな事をするのだ!」

 手下の一人が、

「ま、まさか、大魔王領を奪い取るんじゃ・・・」


 その言葉に、他の手下たちがどよめきを上げる。

「たとえ魔剣王ガルガデス様でも、魔界の大魔王領を奪い取るなんて事は不可能だ!」

「それに人間の財宝が、魔界兵の何の役に立つんだ?」


 俺は黒く燃え上がる剣を手下に向ける。

「人間の武器を集めるのだ!そして兵士も、」

「な、なるほど、俺たちの盾にするお考えか!?」


 それを聞いた街の長が呟く、

「矢張り、我々の命も体も捧げろと言う事ですか、悪魔め!」


 確かに俺は、見た目は悪魔だった。



 2020年4月12日、文章、齋藤務、

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