逆境世界の真反対の勇者

齋藤務

第1話 今の世界からの転身


 ある世界と反対に有る世界が入れ替わる。

 

 そんな事が起こって仕舞った。


 逆境の世界、人々は悪政に苦しみ、あらゆる苦難に襲われている。


 そこに俺は、悪の手先として転生していた。


 気付くと黒い棘のある馬上で目が覚めた。



 そんな俺の脇から、角の生えた仮面を被った兵士が聞いてきた。


「ご主人様、今日はどの様に、街の者をいたぶりましょうか?」


 不気味な兵士を、俺が凝視する。


「何時も通りに、手当たり次第に捕まえて、街の者たちが見ている前で、

 ご主人様の、天使も切り裂いた剣の腕前を見せ付けてやれば、出す物を出す筈!ククククク、」


 更にもう一方から、角の生えた不気味な兵士が、


「この街の者共は、反抗的な上に、俺たち残酷魔甲兵団を舐めてやがる!徹底的に懲らしめましょうぜ!」


 穏やかでないその者らの言葉に、俺は馬上で仰けぞった。


「どうしたんですかい?天使兵団との戦いの傷が痛むんですかい?あれだけの数の天使どもを一人で蹴散らしたんだ。」


「仕方がない、街の奴らから生贄を差し出させましょう!生贄の血ですぐに治りますよ!」


(生贄!?何だそれ?)


 自分の体を見回すと、黒光りの甲冑、腰に差した禍々しい剣、


 どうも俺は、この世界では凄腕の悪魔の剣の使い手だった。


 そして、この真っ黒い甲冑を身に纏った姿で、これから向かう先の街の善良な人々を苦しめなければならない、


(ええつ!?何で?どうして?)


 そう思っても、すぐに街に到着し、周りの手下たちが、既に街の者たちをいたぶり始めている。


「あ、悪魔だ!悪魔の兵士が来たぞ!」


「キャアーーーツ!キャアーーー!」


 逃げまどい悲鳴を上げる街の人々、


(うわあ!なんて事をするんだ!やめろ!)


 と、言っても、その者らは、俺の手下たちだった。



 20年4月4日、文章、齋藤務、

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