人形師 ―神の手を持つ者の選択―

作者 やいろ由季

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★★★ Excellent!!!

 妻を失った男、魂を与えられた人形、人形に魂を与えた人形師という登場人物が織りなす物語は、室町時代という時代設定も相まって、独特の雰囲気を持っています。

 雰囲気に飲み込まれる文体で、そこで見る光景は、私は墨絵、水墨画の世界のような感じられました。墨の濃い黒と和紙の上質な白の背景に、極彩色の登場人物がいる、そんな雰囲気です。

 そう感じるのは、やはり人を書いているからだと思います。

 物わかりが良い訳ではなく、頑固なところも多分にあり、直情家の主人公二人は、どこか「この程度の事、いわなくても分かっているだろう」という風な人付き合いの下手な点があります。

 その不器用さは色々な他の物語でも出てくるのですが、多くの物語では周囲が変節して丸く収まる事が多いのですが、本作は互いに互いの事を思う事で、その変化は変節ではなく深化、或いは成長といえるものによって治まった気がします。

 それがあるからこそ、この物語の結末が納得できるものになったのだ、と私は思っているのです。

 幸せに物語なのです。

★★★ Excellent!!!

魂なのか、身体なのか、はたまた名なのか。
人を人たらしめているモノは何なのだろう?
そんな疑問を掻き立てられる、とても怖く、切なく、暖かな作品です。

歴史物という舞台設定がとてもよく効いていて、まだ科学に染まっていない文明で、人が何を信じ、何を重んじたのか。

光司郎さんと東吉さんの対立構造もそこに焦点が絞られていて、どちらも正しく、また、どちらも間違っている。
そんなある意味で円環構造を構築している世界観に打ちのめされました。