第6話 白い部屋
気がつくと、飾り気のない真っ白な部屋にいた。目の前には大きなモニター、その少し手前には天井から吊るされている固定マイクがあった。
「うわ〜、殺風景な部屋に目立つ僕...アンバランスすぎでしょう。」
淡白な部屋とは対照的な黒い革ジャンに鈍色の無地のTシャツ、藍色のジーパンと、なかなかにパンクな服装をしている自分を見た感想だった。しばらくして他に何かないのかとうろつき始めた。
「な〜んにもないねぇ〜。無駄に広いだけで他には何も...なにこれ。」
よく見るとモニターの右端に「あと一回」と書かれたボードが何かを覆うようにして壁にかかっていた。
「んー気になるけど...今はまだいいかな〜。」
そう呟き、後ろを振り向くと気づかない間に4段はあろう大きな本棚が二つ、その隣にダーツのボードが壁に出現していた。しかし、その本棚には一冊の本しか置かれていなかった。手に取ると表紙には「一夜目」と大きく縦書きされていた。
「なにこれ...読んで見ないといけないやつかな〜、これ...」
怪訝そうな顔も表紙を開けると驚いたような、軽く青ざめた顔になった。
「著者......
書かれていたのは著者の名前、自分自身の名前だった。見覚えすらない本の著者が自分自身だった。そこに恐怖したものの、好奇心がそれを塗り潰した。
ジッ...ジジ...
「一夜目」とタイトル付けされた本に夢中になっていると、火花が跳ねるような音を立て、目の前にでかでかとあるモニターがついた。しかし、そこに何かが映し出されるわけでもなく、一度大きく点滅したのち薄暗い視界が映し出されるだけだった。それを視界と認識できたのはモニター越しに聞こえてくた呻き声のおかげだ。そのモニターに意識は向けつつも、その目は本に釘付けだった。
「なんだ...そういうことだったんだ...」
全てのページに目を通し終わり、陽斗は一連の出来事の全てを理解した。そんな中、モニターには便器が映っていた。「はぁ」と軽くため息を吐くとマイクに近づき、声をかけた。
「お?吐きそう?大丈夫?」
となりの僕ら 碧鳴 直 @doctus-animus
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