第5話 Life in his school

 大慌てで朝食代わりの食パンを齧りながら、紺色の学ランに袖を通し、荷物を持って、家を後にした。陽斗の無駄口を無視しながらも、現存する謎を整理していた。

(1つ、これまで殺し合っていた世界はなんだったのか。2つ、陽斗は何者なのか。3つ、なぜ陽斗は生きて、俺の頭の中にいるのか。...)

(憶測でしかないけど、それなら答えられるよ〜。)

 予想しなかった陽斗の返答に思わず、軽く飛び跳ねてしまった。短いため息の後、小言を零した。

(喋っても考えても聞こえてんのかよ。)

(まぁね。一心同体なんだから。)

 駅で電車を待っている間に陽斗が咳払いを境に仮説を提唱し始めた。

(僕が思うに、あの場所は夢に似た何かとしか言いようがないね〜。要は脳内で行われたみたいなもんだよ。あと前にも話した通り僕は君だよ。言い方を変えると...二重人格みたいなもん。3つ目に関しては...まず殺されてないし〜、君から生まれて君の中でしか存在してないんだからぁ...なんでって言われてもねぇ〜。)

 次々と軽薄に明かされて呆然と立ち尽くしていた蓮にゆっくりと速度を落とした電車が通った。


 都立、分層ぶんそう高等学校。蓮が通っている学校だ。昇降口を抜け、階段で2階に上がり、3番目に見える教室。1年C組にはクラスの生徒の半数ほどが賑やかに談笑を楽しんでいた。蓮が教室のドアを開けると、まるで教師が来たかのような反応を見せた。蓮が一番黒板側かつ、窓側、つまり角の席に座る頃には、クラスは賑やかさを取り戻していた。

(何?君〜、クラスメイトに嫌われてるわけ?)

(見ればわかるだろ。少なくとも、誰1人として良い印象は持ってないだろうよ。)

(ふ〜ん。)

 不機嫌さが窺える蓮の風貌はまさしく「陰キャ」そのものだった。

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