レビュアーの好きな曲にLindbergが1993年に発表したアルバムに収録された『July Blue Rain』というのがあります。とにかく詞がキュンキュンする。いつも屋上で虹が出るまで屋上で雨を眺めてた男、そして彼を慕う女の子。しかし男は『虹を探しに行く』と言って彼女の前から姿を消します。女の子は告白もできないままその屋上で雨を眺め続け、彼が帰るのを待ち続ける……、と言う歌詞です。この物語を一読してまず思い浮かべたのは正にこの『July Blue Rain』でした。
雨の中天に腕をかざす男。そのかわいらしく優しい理由。そして受け継がれるやさしさの連鎖。
『July Blue Rain』は永遠の別れを示唆する悲しい終わり方ですが、この物語は受け継がれるやさしさで終わっています。その読後感はふんわりと、それでいて爽快。真野てんという作者のやさしさが作品中からにじみ出ている良作と信じます。