第10話 2021年8月7日 僥倖
8月7日土曜日、静弦希望町のほぼは週末休二日に入りお盆休み前をただ満喫する休息日に入る。訪問6日目にして、黒川家は避暑地を満喫かの筈が、娘双葉の引きが強いのか結構な渦中に巻き込まれて行く。
双葉は朝6時から入念なストレッチを欠かさずと朝食を取り、8ー10時には真行寺建装の短期のアルバイトに入り、自宅に戻っては休息と昼食を取って、ここで学校のテキストの本腰入れては、15ー17時には静弦希望フライングスワンのフットサルの練習に参加、ここから夕食を取りながら充実した造園町ライフの家族談義に華やぎ、ここからまた学校のテキストに真面目に向かう筈が、昨日に限ってはやはりチームメイト分のミサンガを滑り込みで編み上げ、22時は就寝する。有り得ない忙しさだが、双葉が充実しているならば慎重にケアする迄だ。
双葉にとって静弦希望町滞在中はやたら忙しい夏休みになるが、あのまま課題のテキストのほっぽり出しては、親子共々学校に呼び出されて監督不行き届きで、付属の習養院大学のエスカレーターに乗り損ねた事だろう。そうでなくても、ビジネスたるサイクルリングに関して教員室の古参の間では如何の意見もあるらしいので、双葉にはより品行方正と分かっているだろうが、これを言わざる得ないのがただ心苦しい。
そして黒川家一行は、西町の北側の静弦希望町フットサルスタジアムで、屋外フットサルの親善試合の席に着く。
双葉は昨日から静弦希望フライングスワンの練習に参加する訳だが、そのスタジアムの規模が思ってた以上に完備されたものだった。屋外のフットサルコートは3面に夜間照明も立派にある。且つ500人入れる観客スタンドはやや少ないもの、その気になればいつでも増築出来るだろうが、行わないのが造園町の奥ゆかしさか。勿論それに見合った駐車場も備わり、いや何だ、その大きさが軽くヘリ小隊のヘリポートになっても不思議では万全の配備だ。また送り迎えで一際お洒落なクラブハウスに入ったが、正直子供達に合った機能性では無く、日本的な上品さに満ちておりJ1のユースクラブどころか世界のユースクラブを軽く超えていると思う。ただその先見性のある設計思想には敬服する。
現在、日本中の学校の部活動はコロノ禍を乗り越えても軒並み休止中になっている。それは日本国民1254万人が死亡しては職業教員も当然含まれる。その隙間を埋めるべくフリースクール講師業が活発になり一芸あるものは即戦力の講師になった。ここの急成長市場の牽引が大きく、コロノ禍に散々財政出動して、いざ平常時に戻ろうでは振り返っての緊縮財政の恐れが多いにあった。そう市場が動く限り融資は適切行わなくてはならない。死亡者の多いアメリカと日本が予想を反して勃興中なのは、皮肉を超えて残酷としか言いようが無い。
当然フリースクール講師には質も問われる。俺がただ衝撃を受けたのは、静弦希望フライングスワンの監督が勅使河原崇その人物だった事だ。勅使河原崇は短期間も元日本代表司令塔で1・2・3列目を柔軟にこなす抜群のドリブラーだった。2006ドイツワールドカップ最終予選の勝ち点3のみに一縷の望みを託す最終試合で、サウジアラビアの守備陣4人を鮮やかに変幻自在なドリブルで抜き去り貴重な決勝点を挙げては、ワールドカップの切符を手にした。ただだ、日本代表特有の規律とかで勅使河原崇のドリブルは不適合でドイツの華やかな舞台には立てなかった。
当然黒川家は憤ったままの最近だが、当時3才の双葉には、その流れはただ分からないものかなになった。いやそこも双葉は、ああテッシーじゃないになった。何の事は無い今も尚勅使河原崇のドリブル集のまとめは動画サイトでアップされたままで、確かに50万回再生はしていた。インターネットも長寿化すれば言葉では伝わらない事も拝見するだけで通用する事がままあるのはこれも文化の熟成なのだろうか。
その後の勅使河原崇とはと言うと、世界的なフォーメーションサッカーの流れから海外挑戦はライプツィヒの1度だけで、J1・J2のクラブでここはのブーストでしか個性を打ち出せなかったのかが、一ファンとしてもどかしく。そうしてやや影が薄くなり音信も弱くなった5年前にフットサルのFリーグ:安曇野ザエッジで現役引退したとのスポーツ欄を見た日には、そうかの深い溜め息しかなかった。
そして先日静弦希望町フットサルスタジアムに双葉を送って来た時に、静弦希望フライングスワンの監督の勅使河原崇ですとストイックに挨拶を受けた日には、俺も果林もただおっかなびっくりの表情をしてしまった。そこから手短に、5年前に静弦希望町フットサルスタジアム開所同時に学生全年代のフットサルクラブの静弦希望フライングスワンが発足し、鋭意努力してますと。俺は何故にでしょうかになったが、引退後のそこはJ2長野ターミネイトのスタッフになる筈が、虚空先生自ら長野の冬より甲府の冬が肌に合うよ、君を待ってる学生さんもたくさんいるからまずは静弦希望町に移住しなさいと。確かにここから良縁にも恵まれたし、サッカー生活で一番充実してますよだった
ただ名選手が名監督である保証が通説では少なく。暫く練習を見ていこうかになったが、ボランティアスタッフから父兄の観戦は17時終了前の30分ですのでお控え下さいと、一テッシーファンとしては歯がゆかった。そしてきっちり30分前に迎えに来て観客席から見た光景は壮観そのものだった。確かにフットサルは足元が勝負だが、スクール生皆足元が柔軟で、行く行くはドリブラーで炸裂しようかだった。双葉を見つけ見つめると、そこまでリフティングが得意かと言う程にどんなエクササイズの魔法を受けたかが不思議でならない。練習終了解散後、双葉にどうしたかと詰め寄ったが、ボール見てないで気配を感じろになれたら、ポンポンポンだと言う。今すぐ月謝を払いに行こうかになったが果林が既に事務局に行っており、町民だったら福利厚生の範囲でユニフォーム代位のみで月謝は無料であると。もっともそのユニフォームも大鵬お嬢さんに寄与されたものだから、ここまで至れり尽くせりで良いものかと。
今日の親善試合は、午前9時からフットサル20分×2本ハーフで1試合の2部構成になっている。最初の試合は、双葉の出ていない静弦希望フライングスワン:チームオシレーターと、静弦希望町の配送を一手に担う兼崎シープの社会人クラブとの対戦。まあ静弦希望フライングスワンは男女学生のみのクラブで、幼稚園児もしっかり背番号も背負うが試合となると小学生から高校生迄とテクニックもフレッシュも、分が悪いとはひしと感じていた。
ただそれも開始5分で激しく払拭された。チームオシレーターは1-2-1ダイヤモンドフォーメーションで、個人技を駆使したボールホルダーのポゼッションで狙い澄ます。そして3-2とチームオシレーターが僅差勝利も実質スペクタルサッカーそのものだった。ただ果敢に勅使河原崇監督指導のドリブルを全開に仕掛ければ、点数はもっと取れたかもしれない。いやそれは無いな。男女による小学生中学生高校生混成チームなのに、ムラが一切無いのはポゼッションが規律になっているからだ。この指導を甲府のフットサルクラブが敢然に発揮できている事が奇跡に近い。
チームオシレーターに双葉が出ていないに関わらず、この試合に釘付けになって声援を送ってた俺に、観客席最上階の日傘ラウンジへと呼ばれ相席となった真行寺虚空先生が折良く朗らかに語りかける。
「鉄平さん、その表情はまるで日本代表戦のプラチナチケット席の雰囲気だね。まあ喜んで貰って私も嬉しい限りです」
「虚空先生、これは、いや言わざる得ません。静弦希望フライングスワンはフットサルクラブではなくユースクラブであるべきです」
「そこは、皆が最初に通る門ですね。確かに静弦希望町フットサルスタジアムは3面コートではなく、フルコート1本でしたけど、崇さんを引き抜いて来る前のフットサルの試合を見て、考えを改めましたよ。フットサルは深く選手を選ばないから、より静弦希望町の生き甲斐になるのではとです。そう、生き甲斐に止める故に現にこのアカデミーからプロ契約に至る選手はまだいないのです。私としては長い人生を歩むのならばサッカーに限らずの手習いは必ずと願っているので、帰結として同じならばもっともの選択だとは思いますよ。この静弦希望町の指針はそれで良いと思います」
「虚空先生、そのイズムは本当に正しいのでしょうか」
「正しいと言えるでしょう。未来を一本に絞りたい方々が増えるのならば、それはそれで新しい町を作って、Jリーグのクラブを見据えたスタジアム建設もやぶさかでは有りませんよ」
そう或いはの幾つか、黒幕、ダディ、先生、お父さん、その全ての雰囲気は真行寺虚空にどうしても辿り着く。真行寺虚空は体制の黒幕の最頂点に鎮座する。ただそれを知る者は一般社会では一握の砂の限りで、触れるなの他でも無い。
ただ今日に至る迄俺は散々懲りている。国連本部衛生司政官榊志摩に、クラブ群青チーママ不知火鏡花の使者は、想像を超える飛び抜けた人材の直接の使者だ。勿論政治家の何れかが薫陶を受けているだろうが、登録簿上総理大臣も暫定内閣府主席参事及び類似内閣総理大臣臨時代理上原讃徒に先生はと不意に投げ掛けるが、まあまあの笑顔で笑顔でそっぽ向かれる、その笑みはは何れ知るだろうが長くなかったであろうかだ。
そして招かれた俺の自身の資質とはにもなるが、この間にエッジ・ザ・ハルカスの処刑をまざまざと見せつけられては、正直印象が良く無く、ただ警戒する。大阪真髄の会の代表松永真寿郎/大阪真髄の会の副代荒木宗房/情報報道番組極上ハウスアンカーマン松尾定飯の行状は確かに悪人そのものだ。ただその縛り付け椅子の全ギルティーには、いや激しく諭しても良かったのでは無いかだ。もっともその一件も、あろう事か大阪真髄の会自らによる禊演出でお世話を掛けました、そうであろうなの評判では一抹の畏怖感を禁じ得ない。
このままでは真行寺虚空は実体の伴わない存在になるかだったが、それは予想外の部署から、ああ虚空先生はになった。2021 Only TOKYO Olympic無事終了の東海快速新聞の打ち上げで、スポーツ部オリンピック主任屋敷健太が、やはり今の新国立競技場には華がいや花が無いですよね、対等案だったゲーエムペー・インターナツィオナル・ゲーエムベーハー設計の新国立競技場が良かったな、真行寺虚空の造園技が伴えば後世に残るスタジアムになったのに、もはや鬼籍の御子柴大綱総理大臣のゴリ押しあればと。
俺はその名前で前のめりになった、何故屋敷が虚空先生を知ってるかと。知ってるも何も造園界隈の匠ですよ、大きい所では日本平県立自然公園第四次改修作業の篤志外来種の徹底駆除知ってますよね。まあ当時の審議会の官僚曰く、現在の緊縮型新国立競技場の出来レースにするにしても、対案に大物がいないと良くぞコンペに勝ち抜いたのごりごり押しが出来ないものらしいですって。そんな無茶振りに虚空先生も本当にお人が良いですよね。と屋敷から上ってくる虚空先生の手腕は各地サッカースタジアムの造園業の指導の良さだった。日本での芝生ゲームが早く根付いたのは虚空先生なのに叙勲が低いのは如何とはに至り、表も裏も身のある人物なのかと深く察した。
そして時間はやや振り戻る。
その圧倒的に資料が少ない真行寺虚空に漸く出会えたのが今日の静弦希望町フットサルスタジアムでの親睦試合だ。試合開始は9時も、双葉の送迎で7時過ぎにはスタジアムのゲートを潜ろうとした時、長身で開襟シャツにグレーパンツの物腰そのまま女性かと思ったが、柳腰の男性に挨拶された。その男性は真行寺建装の真行寺虚空社長秘書且つ書生の飯富燕と名乗り、虚空先生は現在スタジアムの人工芝の磨耗の再確認をしていますので、お仕事に区切りが着きましたら黒川鉄平先生を観客席最上部の日除けテラスにお招きします、これも御接待ですので謹んでお受け下さいと。妻果林はこの受け入れ難い間を察したのか、その間私はどうなの一人では観戦は寂しいわねと合の手を入れた。燕さんは弛まぬ笑みで、その間果林さんは真行寺建装ゆかりの散々お世話を掛けてます藤山薫樹君のお母さん藤山月舟さんがお相手しますので、より親身になってお世話出来るかと思います。燕さんの変わらぬ笑みは心からで、本名がどうか知らないが燕と男女でも名乗れる以上、その姿なりと合わせてかなり深い業務に携わっている事だろう。その慎ましやかな雰囲気にはまってる俺に果林が肘打ちしては漸くはっとして、ここでお値引きの直談判出来るわよで、その座は爆笑に包まれた。
試合前の4チームの選手達のアップが進む中。観客席の開場は8時なので、その間静弦希望町フットサルスタジアム敷地内の露店にフリーマーケットは確かに賑わい、まるでコロノ禍前の前に戻った錯覚を受けた。徐々に現状回復して行くのではなく、こう言う復興もあるものか確と受け止めた。
その手に汗握る1試合目静弦希望フライングスワン:チームオシレーター対静兼崎シープのハーフタイムに、燕さんが俺達のベンチに歩み寄り、漸く準備が整いました鉄平先生どうぞこちらになった。そして燕さんの傍にいる目がとても大きな女性は藤山薫樹君のお母さん藤山月舟さんで、御挨拶が遅れました薫樹が大変お世話を掛けました、ですがこれを機会に良きご縁になる様に勤めさせて貰いますと、深いお辞儀をされた。
俺と燕さんは観客席の階段を上がり、最上階の日除けテラスの日除けの大きなパラソルが付いた3人掛けのテーブルは5席の前方に上がり切った。そして今日はどうしても深い話になるのか、見た目そのまま頑強そうなハンサム老紳士がにこり佇む中央のみの席に進む。
そのハンサム老紳士の姿はポートレートが遠く甘い東海快速新聞の資料室で見つけた一点の、人生を深く積んでる印象そのままで不思議と安堵した。ただの偏った人物では無いからには、後は俺のどうしても出てしまう、切れのある質問をどう受け止めてくれるかだ。そして俺達はまずは立ったまま挨拶を交わす。
「虚空先生、間違いなく黒川鉄平先生をお連れしました。切り返しが無い事から、無事にお話は弾むとお見受けします」
「どうか初めまして、一個人、黒川鉄平になります。どうしても深いお話になるかとは思いますが、御機嫌は損なわない様に努めます」
「初めまして、鉄平さん。私が真行寺虚空です。私の名前が唐突に上って恐縮の限りですが、それでもこの道なりが合っているか、固いことは抜きにしてお話を進めたいものです」
「虚空先生、まずは愛称カステラハウスのお値引きの談がございますが、私の裁量で宜しいでしょうか」
「燕さん、黒川家は仁のお方。率直なお値引きよりは、付加価値の方が魅力的では無いでしょうか。その先は真行寺建装総出でお話しましょう。今はこんな感じで宜しいですね、鉄平さん」
「はい、そこは純平専務から充分過ぎる御見積もりを貰っています。ただこちらも、何れかで黒川家の永住の地になるのであれば、付加価値のお話は嬉しい限りです」
「燕さん、そう言う事です。標準的な家族とは格別上の別の方々として考えて行きましょう」
「はい、私の思慮が働き過ぎた様です。失礼しました」
ここで燕さんはお辞儀をし、虚空先生のいる右隣の日傘の席座っては、至って何事も無くハーフタイムの終えた試合を和やかに見ている。燕さんのこの度胸は、俺達がどんなどぎつい事を語っても一切揺るぎない事だろう。
時置かず、そこの燕さんの日傘の席に、観客席からするり長身痩躯の男が上って来た。俺と視線が合ったが、その眼差しは天真爛漫そのもので、にこりとお辞儀されした。だが拭えぬ違和感はあった。ただそれも。
「彼は三隈朋胤さんで、今は静弦希望町の独り身のファイナンシャルプランナープランナーで何時迄浮ついているかですね。ただ鉄平さんが、コロナ禍での凄惨な戦場如きを歩んだ直感は今も尚ですか。まあ朋胤さんを有り体に申せば仕事屋でしてね。経歴は元フランス特殊部隊海軍コマンド偵察に長らくで、隠密故に各仕事は卒なくも、いざ本業ともなると生活を死守するファイナンシャルプランナープランナーとはあながち笑えないですね。まあ、まとわり付く物騒な者がいたら東町の頑固保険に相談しに行ってみる事です。特に双葉さんの事案も絡んでくるとやぶさかなお話では無いとお見受けします。彼なら決して嗚咽も漏らさせずナイフで抉ってしまうのですから、後腐れは無い事でしょう」
「お話が早過ぎます。双葉のそれは拐かしの類でしょうか」
「鉄平さん、その善き行いでも、金銭の授受が発生すれば、悪い輩がうろつき始めます。それは肝に命じておきましょう」
俺は一際難しい心境の中、これでもかと隣のテーブル席から視線を投げかけて来る物騒な奴がいる。三隈朋胤は麻のサマースーツの襟を不意に撫でては、観客席には決して見えない様に右手に隠し小型ナイフをきらりと見せる。それは決して俺にではなく、そう俺に敵意の無いのは良く分かっている。俺はただ分かってるとばかりに、左手の小指を立てては人差し指で1本を見せた。朋胤さんは冴え渡る笑みで返した。まあ近いうちに頑固保険に行っては双葉の1億円の生命保険に入るさ。何より双葉が順調にエスカレーター進学して海外留学しようものなら、セキュリティも何もあったものじゃ無い。三隈朋胤が持つであろうのネットワークを考えたらえらく安いものだ。
ここから真行寺虚空のはにかむ顔が、真顔にとふと戻る。折しも第一試合の後半戦の20分強に、話が進むのを当てたと分かる。俺はボイスメモも筆記もしない素振りを見せては、真行寺虚空の短くも長い生涯が重く語られて行く。
長谷川虚空は1941年に長野県松本市に生まれる。生家は信州味噌の商家で長男としてただ期待を掛けられては、甘くも辛くも育てられた。
人格形成の始めを成したのは、1945年終戦間際の長野空襲だった。朝から夕方まで迄続いた爆撃音は何かと尋ねては、これは国家の戦争で、この音が鳴る度に多くの人間が死んで行くと言う。幼少で、人間が成すとはこの世を去るとはを、ゆっくりと丁寧に語られたらしい。そして空襲の長野市から逃げ延びた方々は、何れもくたくたでまさか私達がこんな酷い目にだった。
これは今日迄繰り返した来た事で、人間と国家とはになりますね。どちらの行いが先か後か、その時々で変わるが、歴史を踏まえ何故行いを変えようとする指導者が出てこないかが、私はただ不思議でやるせないです。ならば虚空先生がは、私の使命は生命の神秘とはですよと諭された。
戦後、弾圧されていたカトリック教に一族は再び合流し、慈愛とはから全生物の尊さの勉学に勤しんだと。生命の真理に近づく程に学校の成績は上がり、信州味噌の商家は5人兄弟妹の何れが継ぐであろうから、私には世の為に勉学に勤しみなさいと。その早くからの指南で関東帝都大学農学部に進み論文を積み重ねたものの、生産者と消費者の人生の豊かさがあってこその、全生命の循環では無いかと深く刻んだ。ここからは若輩早々にして、松本市の商家の人脈を生かしては政に多く関わって行った。ここで何故議員にならないのは、事案によっては巨額の資金を要するので、国家への背信ならずやで、知らずここ迄来てしまいましたと。ここは恥ずかしながら私の愚直さそのものですかね。
そんな、危なっかしい長谷川虚空の契機になったのは、昭和最後の日本再興だった。首都圏集中で地方過疎化が進んでは、これではいけないと甲信越駿河の基盤修正していた時に、清水の行きつけの蕨餅菓子店の看板娘馨と懇意になったと。
その時点で長谷川虚空は50才で馨さんは24才も親子とも言えるに距離感はまるでなかったと。長谷川虚空の生家はカトリック教で、一時は修道士も道も考えたがまずは現代社会での清貧を選んだのでややの不犯は充分有りだった。ただ馨さんについ微笑み諭された、子供は可愛く血縁なら尚更ですと、見事なプロポーズであったと。
そして老齢今やで子供が出来るかと半ば諦めていたが、それは間も無く来た。難産でも何でも無いが、やたら産声が大きな娘が生まれ、喜びより先ず赤児こんなに声が大きいものかと辟易したが、病院中に木霊しては皆が集まり、煩いどころかこれは大物になるの賞賛で照れ臭かったと、ここで純粋に親らしい顔を見せては、互いに声に出して笑った。
果たしてそれが一人娘の大鵬で、名前違わずに命名したものの、大物どころかただの元気娘で、やたら皆の尻を叩く呑気、いやこれも大物の部類かで連れて爆笑した。これだけ声が大きかったら、ややシャイでも粋な彼氏を連れて来る事でしょうとも。今まで連れて来なかったのですかは、知る程真行寺虚空の娘ともなると遠ざかる事もただ多くてです。まあ大鵬も良き家族であればそこは折り込み済みなので、日々せっせですよ。確かにせっせだ、移り行く時代の変遷と共に、間も無く大きな網に大物が捕まると俺は深く願っている。
ここで折良く第一試合の試合終了の笛が鳴った。虚空先生の話も興味深かったが、目の前のアマチュアでものフットサルの伸び代がどうしてもにと視線を注いでしまい、もっと聞き出せたかもは、第一取材でも何でも無いフリートークなので、真行寺虚空の人物は実直に分かち得たとは思う。
俺は、あのうになった。虚空先生はただ和やかに、娘大鵬による黒川鉄平全集スクラップ特にこの記事は面白いを空読み出来ますので、今更自分語りでも無いでしょうになった。ここはそうだろうと。俺はこれぞの面白いの鉄板トークを持っていない。あっても娘双葉の爆笑ネタになるので、ここが俺の非常に悪い所だ。双葉に露見した日には三日視線を合わせて貰えない。たった三日なんて双葉は大人ですよと、これも言おうものなら、更にこっぴどく怒られる。ただそれを正直に虚空先生に切り出したら、手を叩いて喜ばれた。近い内に真行寺建装の盛り上げ会をしましょう、実に良い家族ですと。虚空先生は実直に頬の涙を掬い上げて見せた。双葉に露見するのはそれよりきっと早いと思う。
そして10時30分開始の第二試合、双葉の出場するかもしれない静弦希望フライングスワン:チームカットオフと、既に懇意過ぎる真行寺建装の真行寺タートルの社会人クラブとの対戦は昨夜からさざめき始めていた。真行寺タートルは元日本代表の不動のサイドバック:我妻隼人を擁する以前から地域選抜大会に出場するかの強豪で、そこに静弦希望フライングスワンのテクニックだけの結果を出せていない3番手のチームカットオフが挑むとあって、何が起こるのかと通りすがらも話題が持ちきりだった。
双葉から、勅使河原崇監督から明日の選抜チームはと発表された時はおおはでは無くいけるの声援だったらしいと。
何でも、静弦希望フライングスワンのフットサルスタイルはドリブルとキープが大前提で、ポストに送り込めるクロスもスローイングを繰り出して来た、双葉が収容されたチームカットオフが新鮮だったらしい。まあ実情としては、テッシーが仕掛けたがりが多くてやっとまとまったなのゴーサインの選抜爆笑らしい。
静弦希望フライングスワンのベンチ前では、全学生参加故にデコボコの円陣が組まれ、その皆の左手には双葉が思い練り上げたミサンガの巻かれ、ただぐるっと回りその色彩は鮮明で感動しかない。声掛け役は双葉だ。“冷静沈着、安全第一”でオーも、真行寺タートル全員がそれは俺達の掛け声でしょうとばかりに双葉と仲良くわちゃわちゃに入っている。何か愛されて感が出て非常に良い。
そして中央ピッチ周辺では選手達がウォーミングアップに入り、観客席は両者拮抗の声援が自然と飛び交う。俺の視線は静弦希望フライングスワン:チームカットオフと真行寺タートルへと交互に飛び、覇者と挑戦者の雰囲気を存分に醸し出していた。そして虚空先生とのお話は再開する。
「鉄平さん、来訪6日目にして住み心地はどうでしょうか。もっとも狭い町ですから、何かとお節介かけてしまうのではないのです」
「いいえ、そこは快適に尽きます。そしてお節介とまで行かずとも、お近づきになれば融和的です。ただ、印象として排他的な感じがします。これは深入りするなの雰囲気とも取れますが合っているのでしょうか」
「鉄平さんのその直感は正しいです。この町にはどうしても集ってしまう傾向です。そこにはどうしても事情のある家族もいます。私の一存としては、排他的の入り口のそこで去ってくれれば、私の本望です」
「それで良いのでしょうか。この町の風景は日本国が正しく進んだ先の地域発展の町並みであるべきと禁じ得ません。この造園町の意を汲んで、ここから発展出来ないものでしょうか」
「この普段の光景を眺めたら、その気持ち先走る事でしょう。ただ冷静になりなさい。今の日本国は、死者が一番のアメリカが約3000万人に、次いでになる日本国は約1200万人ですよ。静弦希望町も本来ならばもっと入植者が多かった筈も、実に切ないものです。このコロノ禍の2年に及ぼうかで失った方々を思えば、どういう祈りが適切か、ただ礼拝に没入せざる得ないものですか」
「虚空先生、それならば防ぐ術は有りましたよね」
「まるで無いでしょう。聖書に描かれる業病の深さは果てしないものですよ」
ここで虚空先生閥の名前を出そうか、そして出されないかは、今はそんな機会では無いとの打ち消しだ。この方の懐にどう入れば良いかは、俺の個性を知っているならば強気に出ても受け入れて貰える筈だ。
「虚空先生は、この先どうされたいのですか」
「そうですね。今から5年前に厚生が行き届かなくて地獄に落ちろ日本国とSNSで吼えた母親がいましたね。その取り巻く方々はそうなって本望では無いのですか」
「それは戯言です、決して真に受ける方は誰もいませんよ」
「鉄平さんはどうしても仕来りには薄いものですね。言霊は一番効く呪詛ですよ。素人は尚更扱いに慣れていないので、魔にとらわれやすい。その恐ろしさは打ち消しようが有りません」
「それは敬愛と言うのものですか」
「今はそれで良いでしょう。しかし何時からこう言う幅を広げて生きる時代になったのでしょうかね。災いは災いをどうしても招いてしまう」
「ここ10年で生きる場所がインターネットに移行になったのですから、止むえなき事かと思います。昔であれば辛うじて検索出来たものが、言葉を吐くように膨大なログとなりましたので、言いっ放しが罷り通ってしまいます。この先検閲が入ろうとも、その言葉の速度は滞る事はほぼ無いと、私は見ています」
「鉄平さんは、えらく潔いですね。言葉の重みが解き放たれた現世、人は何時から孤独を愛するのでは無く発散しようとするのでしょう。その傾向は都市圏程に顕著です。これでは何の為に、大阪真髄の会を駆逐し、大阪臨時行政区と円環府を叩き潰したか、その意を汲んで貰いたいものです。そうですね、ここは丁寧な解釈が必要です。日々の心的重圧が積み重なり、何の為に人口密集している都市圏に、どれ程の意味が有りましょうか。密集構想はコロノ禍を通過した今日だからこそ解体すべきとただ願います」
「大事業ですね。ですが、虚空先生には勝算があるのですね」
「勝算も何もしがない世界を憂いる園芸師です。何れの朋輩は、惨事はやり直せ無いと深く悟った事でしょうから、世界は動き始める事でしょう」
いざ大阪の深い事案を出されると、この方に何処迄踏み込んで良いか途方に暮れる。苦し紛れにただピッチに視線を送ると、いよいよアップを仕上げた選手達が集い合い、ベンチ前で監督から試合前の最後の指示を受けている。静弦希望フライングスワンの勅使河原崇監督は兎も角、真行寺タートルは真行寺大鵬のお嬢さんが監督とはらしいと言えばらしく、ただ活気に満ちている。
いや待てだ、昨夜から双葉のバランスが何故か良い。静弦希望フライングスワンから戻ってきた双葉が血走ってチームメイト分のミサンガを編んでいたが、ペースが思った以上に早く夜なべ寸前で終えては、完成撮影会に雪崩れて込んでいた。
そういえば朝のフィジカルバランスも、以前の50%が70%に向上したかだ。不意に双葉に投げかけてみたが、そこは厳しいメソッドで名実共にスロースターターに火が付いたからじゃ無いと、特段変わらずで車中はそれで終えた。
そして両クラブの選手が居並び、健闘を讃え合い、試合開始の笛が胸の高鳴りのまま山間部に響き渡った。
スタメンに双葉がいないものの、俺の拳には自然と力が入ってる。双葉の左腕には差し障りがあるものの、十分に走りきれるし、以前の様にパス回しにも参加出来る。あとはテッシーのメソッドがどう働くか、やはり昨日の最後の30分の練習風景を観ただけでは物足りない。そう俺はこの試合に、ただ期待を寄せるしかない。その前に俺は俺の成すべき事として話を進ませる。
「虚空先生、今も曖昧な線引きの関与第三波ですが、多くの副作用を孕んだウルトラワクチンの立案はあなたではないのですか。三船栄一郎有効財団病理学研究所名誉所長枚田照明が関与第三波で亡き今、そのウルトラワクチンの起源を深く知る者がいません。いや国連本部衛生司政官榊志摩が私にコロノウイルスかの化学式のヒントを投げ掛けたものの、あいつの表情はウルトラワクチンに関しては知らないの、本当の真顔です。私はまず家族にウルトラワクチンの副作用者が出た以上、追求を止める訳には行きません」
「私も知らないですね。ただ枚田照明名誉所長は善人面もマッドサイエンティストそのものでしてね。手に負えない悪人とは得てして五分の成果を喧伝し、残りの五分を妄想に費やすものです。鉄平さんはその甘き誘いに乗ってしまった御子柴内閣を糾弾したいのも分かりますが、そこは少し風向きが変わりますね。20世紀スペイン風邪の人類1/3罹患を鑑みて、何もせずに自然抗体を待つが知己の医学博士の意見を踏まえての私の持論でした。ただ高名欲しさの万能殺鼠剤を開発した若松憲司の調書を聞き及ぶ程に、コロノウイルスとは人類だけでは無く地球上の生物に罹患し、全生物を全滅させたかもしれないのです。昨今の国際化で、媒介が小動物だけの筈が人も媒介する事で、それは是非も無い最悪の結末しか生みません。さて、悪人は悪人をよく知るとは皮肉な結末です。私の見立ても甘いものです。いいえ、それも現在進行系のお話です。今後どこかのコロニーで大量の生物が死ぬ時、地球の生態系はかなり深く崩れ始める事でしょう」
「ですが前回の完全第五波で、推定全人類が感染しても滅びなかったのです。ウルトラワクチン無しでも凌げたのではと、私はそう思います」
「私は変節有りきになりますが、鉄平さんのそれは如何なものでしょうか。人類にある一定の安全装置が担保されているとは、生物の構造上検証も出来ません。それは人類の歴史を紐解けば数々の文明が沈みました。原因は闘争本能かもしれませんが、そこの多くはどうしてもウイルスが関与した事でしょう。そして世界の越境が多くなった以上、安易なワクチンmRNAではウイルスの変容に追いつけず、皮肉な結果としてコロノウイルスの進化の部分だけを抽出馴染ませたウルトラワクチンは、やや正解としか諭す以外有りません。当然鉄平さんには受け入れ難いでしょうが、辛うじて生きていれば未来は繋がります」
「ですが、」
「それは無しにしましょう、ウルトラワクチンの拡大接種をかまけた、板橋区行政はどうなりましたか。巨大感染した板橋区完全包囲の仕置を日本国全土に施行して、結果流入阻止出来ずに日本国はどうしても全滅した筈です。我どうにかなるのコミュニティ囲い込みは結果悲劇を招きます」
「今日迄のその変遷は、国家、いえ人類にとってあるべき形なのでしょうか」
「事情有りきの静弦希望町に来訪されて、感じ入ってのそのお言葉でしょうが、私はそこまで意固地で無いですよ。救える術が良策であればその手段も押しましょう」
「ですが、ウルトラワクチンは本当に大雑把に捉えられる福音なのでしょうか」
「福音は思いが伴ってこそです。そう日々のワクチンの進化は瑣末なものです。ですが国連宣言The Gospel Oneを持って人間の意識は少しづつ変容する事でしょう。その準備は出来ています」
「それは先々の国連での追加の宣言書でしょうか」
「聖書に限って言わせて貰えれば、黙示録の続きになります。煉獄の先の海の岬の風景、その光景は決して風光明媚なものでは無いものの、己の成すべき事ががはきと見える筈です」
「虚空先生、あなたには見えるのですか」
「そこはいいえです。年の功あればと語りたいのですが、丁寧に見て聞いた話を漏れ無くをやっと語れる程です」
「仮に人類は救われるとして何を望むのです、双葉の様な差し障りを持ってしまっても、道標はあるものでしょうか」
「その道標は確かにですね。現状何もかも便利すぎて富の有る無しに満足感を得られる時代です。この先にきっと何かはあるは、もはや手詰まりでしょう。そうとは言え、何かを捨て得られる担保は何処にも有りません」
「虚空先生。私の求める答えになってませんよ」
「これは失礼しました。度々八分で言葉を止めてしまうのは悪い癖です。道標の一つとして、強いて挙げれば創造と言えましょう。何かを後世に残すと言う事は尊いものです。改めて向かって右の競技場の壁画をご覧下さい。あの天の岩戸の壁画を見て漸く学ぼうとは私もさてですね。この静弦希望町フットサルスタジアムも本来ならば市民球場だったのですが、私が特段目に掛けていた若き漆喰名工藤山一考が志半ばで身罷った事で未完成のままです。このまま誰かが引き継げば良いのですが、残念ながらその先の筆致は私であっても見果てぬものです。長らく未完成のまま止めおいたのですが、その藤山一考さんの子息であのやんちゃな藤山薫樹君がサッカーに格段の興味を示したものですから、まあ親心が動きましてね、それならばフットサル場に構想変更しての今日です。この連なりを一つの好例と捉えて貰えませんか」
その若き漆喰名工藤山一考の漆喰画は見事なものだった。天照大神の全身での歓喜はこの距離でも読み取れ、あとは連なる八百万の神が想定されては会場の外壁に迄も描かれる筈であっただろうが、その一つ一つの躍動は通う程に発見があった事だろう。これでは虚空先生の気落ちも察して止まない。
その間にピッチでは、藍色と純白色の静弦希望フライングスワンのサッカーユニフォームを来た上背125cm一人の少年が入った。その少年は藤山一考さんの忘れ形見の藤山薫樹君。いや確かに、双葉の何れの賞賛では抜群のドリブラーではあるが、軒並み大人の試合に入って良いものかやきもきする。
ただ、それも試合間も無くの薫樹君への容赦無いプレスでも足首を柔軟に使い引きつけてはパスワークに徹する。確かにフットサルはフィジカルコンタクトには厳しいファウルを取られるので、これだけ球さばきが上手いと五分五分、いやそれ以上にゲームを圧倒出来るかもしれない。
しれないは、先方の真行寺タートルの大きな声出し指示が試合開始通じて半端なく飛び交う。静弦希望フライングスワンが個人技で圧倒的にポゼッションしているのにも挫けないからだ。相手が未成年男女でここ迄圧せられては普通ならば士気も挫ける筈だが、流石地域選抜大会に食い込もうかの真行寺タートルは一発狙いで覆せる強いクラブと窺える。前半0ー0のここ迄は実に良いゲームだ。俺の頰の緩みに虚空先生が反応する。
「鉄平さん、あの子薫樹君はどう見えますか」
「昨日と今日を窺い知る限り、粘り強く、ドリブルが上手いですね。先々は私が言うのは何でしょうし」
「その詰まり具合は何かしらを感じてのこそでしょう。鉄平さんはやはり本能で察してしまいますか。そう、彼には有りようが見えるのですよ。今は点でしょうが、成長する毎に連なる筈です」
「それは、私が知り得る超能力者達の一連でしょうか」
「超能力者。そう言う表現は、下世話なエンターテイメントが善悪に振り分けて来たので今後は無しにしましょう。ここは聖書の通りにギフトが通りやすいと思います」
「ギフト、そうですね。お聞きできるなら、薫樹君のギフトとは何でしょう。周囲ほぐしてしまう雰囲気は、何ら陰が見当たりません」
「来世者ですよ、これ迄にも主は包み隠さず見ていらっしゃる。ただ私の見通しが甘かったのです。新たに訪れた来世者ならば、もっと、いやもっと深い理由があった筈なのに。この静弦希望町に匿うのがやっとです」
「若過ぎる神の子なんて。それであっても、このコロノ禍の今日迄の状況を食い止められた筈では無いのでしょうか」
「鉄平さんは愉快ですね。とは言え、死屍累々の地獄を見つめ息をして来たあなたならば、それを言う権利はあります。ただ神の子は現象では有りません。降りしきる雨は止むのを待つだけです。ただその後のぬかるみを避ける案内は出来ます。聖者の道程はそれにのみで輝きに満ちます。どうでしょう、実感は持てないでしょうが必ずや受け入れて貰いたいものです」
「ご冗談をと言いたいですが、私達家族もクリスチャンです。まさか受け入れる日が来ようとは」
俺は深い世界に没入し、イエスが残した奇跡が駆け巡った。ただその現象はギフトを持つならば倣う事が出来る、いや高度な技術を持った現代ならば受肉以外にも世に表す事が出来る。この現代で神の子がいる術とは何か、俺は俺なりの答えを見つけようとしている。
その間に試合は動いた。真行寺タートルのプレスが的確になり、静弦希望フライングスワンで今や潜在能力一番手のチームカットオフのポゼッションは大きく後ろにスライドしている、まずい展開だ。チームカットオフの1-2-1フォーメーションのダイヤモンド後方にいるキャプテン不破廉太郎さんが声を張る、前向きだ、前にスペース出来てるぞで、即時に反応したのが藤山薫樹君だった。フリースペースに送られ制動のあるスルーパスに、引きに引いていたトップの御影芽衣さんがダッシュで追いつき、ゴールキーパー新田誉さんと1対1、必要最低限に左右に軸をぶらしてはゴールキーパーを揺さぶりながら、左に大きく抜けたシュート体制を見せ、ゴールキーパー新田誉さんがグランダーのケアーで横飛びするも、果たしてボールは来なかった。その2秒後にパサと高緯度からボールがゴールネットを揺らした。
観客席は忽ちウン何かになったが、三点録画していたカメラの再生が野外ポータブルスクリーンに現在のゴールが再生されると。御影芽衣さんが左の横に仕掛けた瞬間にボールを影に追い込み、消える芸術的なヒールリフトを高らかに上げ、コントロール抜群に見事ゴールネットに吸い込ませた。おいだ、全くだ、こんなの海外サッカーでも観れるかのテクニックに俺はただ仰け反るも、即座に姿勢を正し拳を握っては、何度もゴールと叫んだ。
虚空先生も微笑みながら拍手をするが、薫樹君の制動を掛けたペナルティーエリア10m前に送り込みとは絶妙だねと、虚空先生も実に燻し銀の戦術眼を持ってると称えると、虚空先生から伸ばされた握手に応じた。
そして程無く、前半終了の笛が鳴り、真っ先に真行寺タートルのメンバーから賞賛の拍手が起こり、静弦希望フライングスワンが微笑みのままにハイタッチを交わすという、ほのぼのとした10分間のハーフタイムに入った。そこで虚空先生は淡々と来世者藤山薫樹君のまだ短かきも重厚な物語が紡がれる。
「藤山薫樹君は、藤山月舟さんと今は亡き漆喰名工藤山一考さんの間に受肉しました。藤山夫妻の馴れ初めは今から9年前に国立北海道相生大学の増築中に出会い。一考さんの製作中の漆喰画を度々見つめるその頃小平月舟さんとで、何見てるの、良いから続けてで、どちらもから懇意になり、増築完成数日後に麓の甲府プラザで結婚しました。その後はまだまだ整備半ばの静弦希望町で共に暮らしては、それはもう温かく睦じい家庭を築いて来ました。
ただそれも一考さんは腎臓が弱い傾向で、今から8年前の定期検診で左に腎臓癌が見つかりました。見つかったものの、ただ若さ故に進行が早く今更摘出しようにも腎機能の兼ね合いからそれは難しく、投薬治療に専念しました。大学病院ではにもなりましたが、甲府一帯は私の力の入れ具合で万全でも有り、最先端の設備に人材が日々更新されています。一考さんの症状は安泰と告げられていたものの、生来の腎臓の弱さと日々の体調の低下から、お別れのその日が近い事は声に出さずとも皆は悟っていました。そして、この治療期間中に月舟さんの懐妊が判明したのですよ。藤山夫妻の日々はこれで死ね無いと微笑ましいものでしたが、予定日の半年前に藤山一考さんの容態は急変しこの世を去りました。
一考さんも胎内にまだ見ぬ子を残したままさぞ無念であろうも、日々病室には若き頃から共にして来た仲間に支えられ、病床ではただ笑いが絶えなかったのが、唯一の救いと言えるものでしょうか。そう真行寺建装の面々が何れも訳ありで、親との現世での縁がただ希薄で、幾重の取引先関係でも見兼ねた私と妻馨が児童施設より引き取り、手元に寄宿させて来ました。共に心に深い傷みを知る同志でその繋がりは深く、またきっと会えるさの掛け合いも心の内では葛藤しており、それでも心穏やかに送り送られたのは、それで合ってるとは、私も残酷なのでしょうかね。そして葬式後の一考さん不在の皆の落ち込みは激しく、私もその一人でした。その憔悴の日々に東方の三賢人が現れした。
大袈裟に聞こえましょうが彼の東方の三賢人はそのままです。小平月舟さんの国立北海道相生大学の同僚で三先生方:古米結子さん/篠宮葵さん/高山泰子さんは、励ましを兼ねて月舟さんの出生前検査を行いましたが、俄かに信じられない事が起こりました。超音波検査からの違和感から触診したところ“おかあさん、だいじょうぶ”と励ます声を三先生方が聞いたそうです。敬虔深いと言われる私にも相談され改めて立ち会いましたが、それは脳内に直接では無く、間違いなく聴診器から聞こえたものでした。そして月舟さんにも聞かせましたが、ギフトの存在は早々と知るも、それがいざ我が子となると頑張りますと拳をきつく固め、その出産の日を楽しみに待ちました。
そしていざ出産当日も、声も出さずに生まれ出た神の子でも、これはまずいと立ち会った東方の三賢人の一人篠宮葵さんが堪らず赤子のお尻を叩いたそうですが、それでも呼吸だけでしたと。ここで堪らず月舟さんが、薫樹シャンとしなさいと発破を掛けたら、漸く産声を上げたそうです。漸く生まれ出た安堵も、母親からの窘めで漸くの産声とは、幸先が良すぎて二の句が継げないですよね。
この経緯で神の子とはを全て置き、普段通りに生活に着けるのでは、ここは私達はまだ浅はかであると知ります。1歳の誕生日を超えた翌日から、ごく普通に会話出来る様になり、月舟さんは元看護師もままある事では無いかでしたが、妻の馨が何を仰るのと余計な言葉を覚えさせないようにやんちゃな輩達にはよくよく言い聞かせました。九官鳥を飼うのでは無いからと諭すも、この子達のやんちゃではこれ位でやっとですとえらい剣幕に付き合わされました。とここ迄でやっとの神の子の歩む道の序盤です。鉄平さん、一方的で退屈では有りませんか」
俺が繰り出した言葉は、いいえのとても固い一言だった。確かに赤子の奇跡は稀に良く聞く逸話も、受肉と共に消え去るのが運命だ。強すぎるギフトは決して体が持たないとの自制が働き、この近代で潜めるのは至極当然の成り行きだろう。ただ虚空先生は、神の子の歩む道の序盤とそっと置いた。真に東方の三賢人が立ち会った以上、イエスの再臨はこの甲府で静かに幕を開けていたのだ。
俺は思考の果てに、この日差しで水分を取っていない事にやっと気づいた。そこに書生さん飯富燕がトールサイズのアイスティーの容器を差し出し微笑んだ。ごゆるりと、この抜群のタイミングはきっと何人かの到達者に話されての、この冷え切ったアイスティーそのものなのだろうと。俺は1/3飲み干しては、素直に本能が戻った。もっと聞きたい、いや聞くべきなのだと。虚空先生は次の章に入る前の呼吸を大きく吐きながら、こうと。
「鉄平さんもこの短期間でギフトをご覧になって、感じ入る事が多いとは思いますが、ここからはどうか素直に聞いて欲しいものです。薫樹君のギフトは治癒になります。古から業病の論議はされて来ました。いざこのコロノ禍真っ只中に放り込まれると、果たして身罷った方々は悪しき心を持っていたかなど、考えるときりが有りません。そもそも救済に思惟は必要でしょうか。それを容易くも乗り越えてしまうのが治癒ではないかと覆います。そして癒された後に方々は振り返ります、何故生きるのかと、答えは一人ではでないでしょうが、私はささやかでも希望に繋ぐ為と禁じ得ません。
さて本筋の治癒なのですが、鏡花さん・芽衣さんのギフトの様にすぐさま感じ入る事が出来ないので、暫し事例をお聞きき下さい。今の所鉄平さんが知り得た真行寺建装の紹介になります。
4番ゴールキーパーの新田誉さんですが、幼少の際から父親が呑んだくれで家族にただ暴力を振るっては、痣がいくつもで、決定的なのは右手甲に残った紫斑が消えずに私が責任を持って引き取りました。甲府の学校は私の意思が行き届いているので、茶化される事は無かったものの、親友一歩手前に成る程説明を窮した様です。僕が悪い子だったのだと。私はその都度厳しく訂正させての今日ですが、そうは簡単にそれでの生父の事は悪くは言えません。ただ3年前に右手甲の紫斑が見る見る小さくなり消えました。大人になるにつれの新陳代謝ではと困った医者の判断でしたが、誉さんが泣ながら語りました。薫樹君が誰も悪くないよと日がな摩っていたら時期に消えた様です。
次は5番前線左の志村辰巳さんになります。彼は捨て子で麓の甲府聖母総合病院に初雪と同時期に果物籠の中に入って置かれていました。手紙は身分照会を恐れたか、寸志と書かれた封筒に3万円入っては今も誰が親なのか突き詰めてはいません。ただ赤子の襟元肌にはマジックで辰巳と書かれており、名前をだけは志村辰巳さんにしました。今ではただ陽気な辰巳さんですが、中学の頃東京への修学旅行に出て帰って来た時に襟元に辰巳の文字の刺青が彫られていました。私達は消しなさいと言うものの、俺の存在意義はここから始まるとがんと受け入れません。そして3年前に地元温泉巡りで仲間水入らずで入ったところ、薫樹君が苗字名前どっちなのから、そうだったのかもも手遅れになって、触診しては消えろ消えろと摩っていたら、いつの間にか刺青が消えていたそうです。辰巳さんが俺って阿保ですかねと聞いて来たので、薫樹君に聞いて見なさいと言っておきました。まあここだけのお話名前なのですけどね。
手早くも最後は8番前線右の大谷翼さんになります。翼さんは小学5年迄職業同じく建築家の家で育ちました。ただ対向車線からはみ出したダンプカーと正面衝突して、両親は即死、翼さんは一人生き残るもリハビリを頑張れど車椅子生活そのままでした。翼さんは早くから私も建築家になりたいと申してましたので、引き取っては手習いそのままに英才教育を施して来ました。ただ夢はバルセロナのサグラダ・ファミリアが見える教会建築に携わりたいでしたが、彼女の意思を尊重しても長らく車椅子生活では困難であろろうと察して、日々研鑽しなさいと宥めるのが心苦しいものです。そんな翼さんも、3年前に真行寺タートルの地域選抜大会を観戦しては、ふと漏らしたそうです。私ならばもっとぐいぐい行けるのにと薫樹君に言ったところ両足を丹念触れられ、次第に感覚が戻り半年で車椅子から両杖に、そこから歩ける様になって、今や陸上選手の速さに迫ろうかです。翼さん曰くその内、名前の通り空を飛べると思いますよで、漸く両親の死を受け入れたかと思うと、これ迄の奮闘とは何だったでしょうね。それが試練というのでしょうか。それは皆に言えますが、それも実に切ないお話ばかりですね。ですが、試練とは乗り越えた本人からでないと、その口元から降りないのでしょうから」
俺は打ち震えた。試練の最中にいる人間はどうすれば良いか。まず憤りが来て、俺は教えを乞うとしている。分かってる、現実の奇跡は一つの可能性だ。でも薫樹君の治癒があれば、多分、恐らく双葉はもっと強く生きられる。虚空先生は思った以上に辛いお方だ、より現実を背負って生きなさいとの深い示唆なのか。
不意に後半開始を告げる笛が鳴り、ボールが静弦希望フライングスワンのポゼッションのままに推移する。やはり双葉への選手交代は、レベルが高すぎるのか。それもそうだろう、リードもこの五分五分の均衡では親善試合でも慎重にならざるを得ない。そして虚空先生は腑抜けになっている俺を一瞥しては、尚も進める。
「ここ迄は、お話を聞いても、どうしても3名を除いては一様の反応になりましょうか。全般的に来世者を信じない者は、私の段組みが甘いものですね。折につけ言いましょう。教えと奇跡は等しくです。それは聖書を精読すれば、どうしても身に付きましょう」
「いや、聖書は知っています。ですが彼らの多くは神々なのですよ」
「再び生まれ出ずる魂の数は限られています。深い闇に囚われなければ、人間の体に受肉するのは不思議では有りません。古事記では八百万神が語られています。何の不都合が起きましょうか」
「確かに、常に霊体である事は、真実味が希薄になります。ですが、しかし、」
「受肉はそんなに不思議でしょうか。西洋史に登場するイエスのみでは不都合も確かに有りましょう。その不都合故にその存在は歴史から抹消され続けて来ました。ですが現実にはこの世界滅亡の前に来世者は遣わされました。鉄平さん、ここは固く信じましょう」
「すいません、いや、今は受け止めるのに時間が欲しいだけです」
「結構です。それでは続けましょう。今となっては事後になりますがこの様な感じです。藤山薫樹君を守る為に有志の評議会が開かれました。そこで当然有る無しの二手に分かれますが、それならば聖櫃を開いて確認しようかになりました。ここでの聖櫃は旧約聖書の聖櫃になります。希望の支族が東方での安住の地を得るべく長きの時を経て、今は伊勢志摩惺の森の正殿に厳しく管理されています。私は恭しい参拝を経て、正殿に導かれました。そしていざ燃焼しない様に榊を授け置いては聖櫃は解錠されました。てっきり幻影で諭されると思っていたのですが、何の事は無い誰が書いたかの木札の証明書が28篇が収納されていました。何れも古代ヘブライ語で松坂宮司よる翻訳によって、これと差し出された木札の証明書は来世者は白真珠を持って生まれた者と予知されています。そこではたと思いが繋がりました。健康優良児で出産した薫樹君が長らく左手が開かなかったのですよ。その出産から一週間後にぱっと開かれ溢れた時には、不思議に白真珠を持っていたのです。いつ硝子玉を握ったのかでしたが、知己に鑑定お願いしたところかなり純度が高い真珠で一財産どころか霊験有りますよと、敢えて鑑定額は聞きませんでした。月舟さんにはそのまま伝えましたが、真珠も珠類も飲み込んだ記憶は無く、ただ、」
「ただ、ですか」
「まあ、藤山夫妻は何かの記念に付けては、甲府の大開港寿司に通ってては、貝類をお願いしたので、そういう事でしょうかでした」
「ここは、笑っても良いところでしょうか、」
「存分にどうぞ。出産時の真珠類の産物の何れは、伝承ではままある事です。ただそのまま白真珠になると、十分に来世者を意味すると思われます」
「果たして、その白真珠の存在とは何でしょうか」
「そう、奇跡を闇雲に信じなさいとは言えません。有物的な起源を辿れば、奇跡の根源とはになります。これは白真珠を通じて地球の神秘であるマナが大きく作用してるの他なりません。紀元前のイエスも持ち得たかもしれませんが、そこはどうしても長くとても長くの逃避行で消失したやもでは、伝承に残せばただ世界の混乱を招く事でしょう」
「薫樹君は、どうしても忌み嫌われてしまうのでしょうか」
「各々の機関には手出し無用と、カトリックもプロテスタントも東方正教教会もユダヤからも、現世の光として内諾は貰っていますので、それでも世界を乱す輩は決して出て来ない筈です」
「ですが、魔が差すの言葉が有ります。七つの大罪を踏み越えて、あら憎しの不逞の輩がいつ狙い澄ますかもしれません」
「鉄平さん、現世で悪魔はいないと信じましょう。何より人間は人間以上の業は超えられません。私は薫樹君が無事天寿を全う出来ると思っています。過去イエスが生き抜いた歴史こそがそれを証明しています。来世者の誕生で新世紀は既に始まっています。鉄平さん、こう思いませんか。全生物が死滅を回避出来たのは、薫樹君が来世者の祝福故にです。ここで一つどうしても加えて置きたいのは、ただ神々しい光の対極に漆黒の闇があるの相殺論です。光は何処迄も行届き、どんな闇でも挫きます。ここは清く信じましょう」
虚空先生は丹念に十字を切り、俺も続いた。そして頂上席の端麗な飯富燕さんとどうにも物騒な三隈朋胤さんも続く。まあ、その敬虔さで漸く超えられない距離は縮まった。
暫しの黙想の後にピッチは動いた。真行寺タートルがボールホルダーになってはボックス右後方我妻隼人さんが往年の振りが浅くても必殺スピードパスを見せる。これは皆分かってるがどうしようない決定機だ、ボールは人工芝の摩擦を理解してるかの様に、ボックス前方左の久松潤治の3m前に手際良く収まる。チームカットオフのダイヤモンド後方にいるキャプテン不破廉太郎さんが間合いを詰めようも、久松潤治さんは尋常では無い切り返しで中央に抉りこみ、ゴールキーパー渡邊賢人さんが早めにケアに飛んだ左の逆、右のサイドネットを激しく揺らした。真行寺タートルはここでは紳士的に声を張らずにピッチとベンチに回っては余裕過ぎるガッツポーズを決めてみせる。
強い、いや圧倒的に強い。試合の舵を如何に握られてもそれを覆せる真行寺タートルの秘めた確実なテクニックは、この真行寺タートルは本当に地域選抜大会に出場出来ないクラブなのか。俺は堪らず。
「いや信じられません。隼人さんにでは無く、真行寺タートルの真の強さにです。全く東海快速新聞山梨支社は何をしてるんだ、何故記事を全国紙に迄上げないんだ」
「鉄平さん、フットサルは未だの競技ですよ。確かに東海快速新聞さんは、元日本代表不動の我妻隼人さんを前面では無い総合取材をと、何度か依頼を受けましたが、それは地域選抜大会本選に進んでからにしています。その方が彼らにとっても心穏やかにと言えるものです」
「ああ、いやそうでは無く、何れかがフットサル日本代表に選出されてもおかしく無い技量です。とは言え、今の世界情勢からフットサルワールドカップがいつ開かれるなんて、全く、」
「まあまあ鉄平さん。真行寺タートルの賞賛は有り難いのですが、静弦希望フライングスワンにも逸材はいますよ。もっともこちらは嗜み程度のフットサルアカデミーですので、余程のオファーを受けてならば、先々の受け皿先で楽しみましょうか」
ここで静弦希望フライングスワン:チームカットオフの1分間のタイムアウトに入った。選手交代を頻繁に行うも試合公約全選手7人枠では流石に疲労が溜まったのそれでは無く、純粋に冷静さを取り戻すための時間の様だ。テッシー監督が手短に各人への役割再確認しているのか、適時に選手が頷いて行く。
試合再開からも、チームカットオフはポゼッションでボールホルダーに徹する。ここでトップの芽衣さんがベンチにグッドサインを送ると、双葉が交代ゾーンに迄進み力強くアップし始めた。悲鳴に近い歓喜を上げたのは観客席階下の妻果林に薫樹君母月舟さんで、もう自ら見失ってるのかスタンディングだ。何故に興奮してるのかは、まあママ友ならではかだった。
交代ゾーンでのハグから、芽衣さんOUT双葉INと、更に丁寧にポゼッションが行われる。ここは以前の双葉なら適度なフットサル中級者としてボールキープ出来るのだが、いや、差し障りのある左腕の僅かなバランス喪失も何故かその傾向が見当たらない、野暮ったいが個人技一辺倒のチームカットオフに馴染んでいる。俺は首を傾げる迄も無く試合の推移を眺めている。
両チームがポゼッションにプレスにと、どうしてもチームカットオフは下がってしまい、真行寺タートルの大谷翼さんが勘で右に抜けてはパスカットし前線にそのままショートパス、そこにダイナモの志村辰巳さんが滑り込みシュート。ボールは右上隅に飛ぶも、フィジカルを読みきっていたゴールキーパー渡邊賢人さんがナイスセービング。
俺はそれを全部叫び終える筈が、前線に長いフィードの軌道をつい見つめてしまった。その先はまさかのトップ双葉だった、双葉は送られたフィードを臆することなくヘディングでピッチに叩き落とし、ボールは右斜めに3度バウンドしては流れて行く。悪くは無いがグラウンダーにしては人工芝の吸収が良すぎた様だ。力無く拳を下げた瞬間、黒い影から抜け出た白鳥の選手が前線に滑り込んだ、確かなワンツータッチで右ウィングの女子中学生平岸杏里さんが振り幅の全く無いトゥシュートでゴール右隅に蹴り込んだ。咄嗟に追いつけないのは真行寺タートルの新田誉さん、右手を伸ばすも二手近くもすり抜け、ボールは正面ネットを2度揺らした。どう身内に表現したら良いかもそれはビューティフルなアシストにゴールだった。
ピッチに観客席は大歓喜に包まれた。もはや掴まるものが無いのでただ近くに抱き合う術しか無いのが現状で、ゴールの声を多くの方々から何度も聞いた。階下の観客席では果林に月舟さんが抱き合いどうしても感極まって号泣している。俺も当然号泣と呼べる号泣をした。
バランスそこそこの筈の双葉が鮮やかな走り込みと叩き落としを決めた事に、ただ奇跡としか言いようが無かった。ここに来るまでどんな苦労したか、その全てを俺はただ喧伝したかった、父親なら当然だも、ピッチを見つめた途端に俺だけクールダウンしてしまう。グランドではチームカットオフの歓喜の両額合わせが、あの双葉とあの小賢しい賢人かで、お前ら昨日今日だぞと大声張ろうとした間際、階下の観客席よりかなりどぎつい視線を貰った。果林に月舟さんが共に、口にチャックの仕草をこれでもかと送る。そう、これはセレブレーションなら、まあそういう事もあるさで溜飲が下げざる得ない、俺はそう大人だったのだ。
俺を察して止まない視線の中で、動悸と冷静が一緒くたの中、テーブルに大きめの茶封筒が差し出された。差し出したのは息を潜めていた等のそれではなく、この風景にすっかり溶け込んでいた書生の燕さんだった。そして囁く様な声で慇懃にもどうぞと勧められた。虚空先生の視線はピッチに釘付けで、まあ見て見なさいの雰囲気を深く感じ取れる。
手持ちのタブレット鞄に入れれる無記名の茶封筒から引き出したのは、そのままB5の用紙一枚のみだった。内容は啓発文章のそれではなく、名前/所属・役職/テーマと思しき素っ気無いもので、その名前はメディアには細心の注意を払うも、知ってるいるのやっと2/3位だ。
根来稔頭/地方検察特任捜査官/国際連携外局部の創設懸案中
波多野千速/波多野病理学研究所 主任/生物全般危険次世代ウイルスの示唆
楠木道重/自由芸術学園 学長/新生活教師能動組合より児童充実法案建白
逸見愛梨/相模原総合病院本院 助教授/全世界規模でのリモート外科手術の拡充
万城真樹/Elementary Office 技術広報室長/能動的AIによるコンピュターウイルス分岐阻止
岩清水紀章/NPO Seven Ocean 会長/国際ボランティア各団体とさらなる国際連携協定
嶋田一郎太/超党派深愛党 暫定内閣副外務大臣/段階的核廃絶幹事役拝命
土御門照葉/習養院大学 教授/民俗学的見地から新元号元応の即時改元遂行委員会
安曇迅雷/Platinum moment 主宰/人類進化学とプラチナヒューマニズムの構築による人類のあるべき行いとは
蒲生樹案/Yamaki Music Corporate ピアノ奏者/鎮魂曲たる交響神饌曲「近世常住幻想」鋭意作曲中
立松喬/November Technical CEO/小型衛星ネットワーク通信補完システムへに向けての大網推進
伊達一巡/暫定内閣府 政策総理大臣/公職選挙法大改革及び有志議員制度案立案
俺はただ深く感じ入る。続刊「黙示録」を無事書き終えたら、この12人にインタビューしなさいの示唆であろう。何れのテーマが重厚過ぎて、一地方新聞記者で正しく応対出来るものであろうか。先じてのこの12人が掲載されたら、確実に日本国は前進するであろうも、虚空先生に率直に伺った。
「虚空先生、確かに有り難い紹介では有ります。東海快速新聞には約束が取れ次第、インタビューを掲載させて貰います」
「確実な返事を有り難う。まあ10月始めからの日曜版週一新連載で一苦労掛けてしまいますが、この12人の使徒には、鉄平さんにはくれぐれも丁寧明瞭な説明ときつく伝えておきましょう」
「いや、いいえ、日曜版週一新連載も何も、そもそも現在続刊「黙示録」を3/4執筆の現状です、いやどう終えたらもまだ悩んでいますし、ここに大仕事をですか。いや、そうでは無い、ですから、新元号元応を先んじて紙面に載せたら、世界が混乱します」
「大丈夫ですよ。何より鉄平さんは気概のお方として頼りにしています。そう、新元号元応ですね。東海快速新聞さんが矢面に立つのならば、9月中に厄除けとして発布を急がせましょうか。ですが、そこは本意では有りませんね。官僚と大臣にこの新元号の全てを日本国民に解かせる裁量は有りません。若すぎる土御門照葉教授の言葉添えがあればこその深き納得でしょう。ですが、いきなりでは照葉教授の人となりが今一つ伝わらないのも心苦しいです。やはりここは東海快速新聞さんに一任しましょう。そう、この新元号元応の衝撃で、12人の使徒の会見掲載見送りも無いでしょう。何れも大粒ぞろいのインタビューですが、焦点はやや絞った方が稟議は通りやすい事でしょう」
「虚空先生は御理解が深いから受け入れてるでしょうが、これを読者にどう読み解いて貰うのがかが至難の業で、ここは首都圏紙と提携も、いやそれは危険過ぎる。やはり俺が主幹にならないとですか」
「尚結構です。私も天に召される頃合いが分かりませんので早い方が良いでしょう。それもでしょうか。鉄平さんの「黙示録」も読み終えませんと決して天寿を全う出来ませんね」
「ただ虚空先生、12人の使徒と定義する以上、来世者の実名は出さないものの、入れてはいけない明らかに裏切り者がいます」
「さて鉄平さんも慎重ですね。ユダ相当の立松喬さんでしょうが、周囲と立ち回りの上手い御仁ほど憎まれるものです。見た目は銀髪の若頭ですが潔い方なのですよ。そう銀髪の印象が強いのなら黒髪に戻させましょう。改元の手順も有りますし、身なりは非常に大切です。鉄平さんご教授有り難うございます」
「ですので、そういう事ではなくて、人様の命の扱いが軽い輩と聞き及びます」
「その噂は伏せましょう。表向き紛争のない国で穏便に物事を進めるには実力行使はまま有ります。ここで警察国家とはになりますが、やっと明治の謀反国家が去ったと言うのに、お堅い事は無縁に願います」
「それでは、この掲載を持って、新世紀の始まりを告げると言うのでしょうか」
「来世者の立つべき準備は整いました。鉄平さんが仰りたいのは、コロノ禍が漸く過ぎたのに早くは無いでしょうか。そういうお察しですね」
「私ももはや当事者ですが、こう安泰の未来に入ってる感じが一切しません。この胸騒ぎは何でしょうか」
「それも正しいと言えます。このコロノ禍ではしゃぎ過ぎた国家のインターネットが閉鎖されたのはご存知かと思います。ただ現代はメカニズム社会で書類一辺倒の時代に戻れる筈も有りません。インターネットを遮断された現在、大記録媒体の配送によって体裁を整えています。ただこちらで新たな業が発生した様です。電子ウイルス名Bacchus Integration。その効果はファイルを損傷する等の生易しいものでは無く、増殖して一つのファイルになるべくこの世界を今も往来しています。駆除ソフトがあるのではでしょうが、兎に角一つファイルに統合するので駆除ソフトも飲み込まれてるので死守出来る訳も有りません。その大規模破損として、世界総合企業体連合CRUELのデバイスメーカー:Rafael Sanのクラウドサーバーが全損し、辛うじて残ったシンガポールのサーバーステーションが稼働するのみでかなりの負荷が掛かっている状態です。ここのところ良く聞くシンガポール全土の大停電の幾重もはそこに起因しています。ここに国家的規模の反逆との思惟も有りましょうが、まさか当事者国の原子力発電所を全て止めて迄の暴挙は無いでしょう。
まあ行く末も気になるでしょうから、新興IT財閥Yellow HummingbirdのCEOアスマ・ディアスの言葉も添えましょう。Bacchus Integrationは既存のOSに群がる傾向で、独自及び新規のOSには侵食しないので、全OSの新規移行と次世代通信を通じてのAI検疫を行えば恐れる事は無いそうです。ただここは商人の嗅覚が働きます。膨大な既存ドキュメントの変換業務は少々値が張る様です。そうアスマ・ディアスの来歴ですが、公では順調にアメリカ合衆国の永住権を確保しましたが、その実、1997年香港返還で溢れた棄民出身で交易組合ザ・セレクターから拾い上げられます。ザ・セレクターも目利きですから、これはの思考回路の人材は囲い込みます。その余りの手際良さから率直に君はあざといねとも言いましたよ。そうして、アスマさんは慌てて言いましたよ、世界多種言語同様にOSもバラバラでいい筈も無いので良い機会ですと。バベルの塔の最後の足掻きを知ってるかねと諭したところ、コンピューターのそもそもは電源が無いとただの箱ですよと小洒落た事を言いましたよ。Yellow Hummingbirdが敵か味方の判定は、やや味方とみなしておきましょう」
新興IT財閥Yellow HummingbirdのCEOアスマ・ディアス、なんて事だ。その甘いマスクで日本語も堪能な事から、来日の際の基調講演は中々取れないチケットにあたる。確かに次世代OSは折に触れてだが、既に完成されているのであれば、統合ウイルスを防ぐ為にも世界総合企業体連合CRUELでさえも平伏しなくてはいけなくなる。これはこれで予期せぬ救世主だが、何処迄人類に献身的か預かり知れない。今更紙媒体の時代に戻れぬ以上、優男アスマ・ディアスには丁寧に接しなければならない。虚空先生のやや味方とは深く理解した。
そして最後の衝撃の捲りから、俺は気もそぞろになりながらも、双葉が未だ出場している試合に何とか集中はしている。
チームカットは圧倒的なポゼッションで2-1で逃げ切るつもりだろうが、真行寺タートルの英気そのままのプレスで後方に下がりっきりで、既にボールがこぼれては、そこから何とか取り返し後方でのポゼッションになる。成る程、どこかで破綻すれば2ゴール連続で決められ予定通りの逆転劇か。この駆け引きに気付いてるのは静弦希望フライングスワンでは勅使河原崇監督位で、メンバーへともっと的確に指示を送れの声を掛ける。多分それで良い、あからさまにもう掌中だぞと言おうものなら、学生達のメンタルが総崩れになる。食わせ者は真行寺大鵬お嬢さん監督か、やはり怒らせるとかなり厄介とは深く察した。
真行寺タートルによる集中的なプレスで、チームカットオフの平岸杏里さんのパスが乱れた、そこを見逃さじとパスカットしたのは真行寺タートルの志村辰巳さんで、チームカットオフの自陣深くフォーメーションが崩れ始めていた隙間を、ワンタッチから一気に強烈なシュートを放った。恐れていた最悪の突破パターンだが、双葉が倒れながらも左手一本でボールを弾いた、よしと堪らず俺は叫んだ。
「テクニカルファウルだ、ナイス判断だ、双葉、」
いや、そうじゃ無い。このテクニカルファウルはギリギリペナルティーエリアで、もはやPKしかない、ついに同点かのピンチそのものだ。いや、それも違うんだ。俺はやっと冷静に理解出来た。双葉の止めた左手は、ウルトラワクチンの副作用で差し障りのある痛々しい左手で、あれだけリハビリをしても感覚の戻らない筈の左手が何故。俺は目まぐるしく思考を遡った。昨日から何かどうも様子が違う。
折々に双葉の左手と薫樹君の右手で手を繋いでいる。優しい子供なのかとその時は思った。
帰り際に双葉と薫樹君が両手握手で、長く長く別れを惜しむような所を遠く微笑ましく見ていた。まるで仲睦まじい姉と弟かだった。
そして試合前の円陣、双葉の左隣は薫樹君でがっちり肩を回していた。
つまり、そうなのか。
俺は椅子から膝をつく様に観客席の床に力無く崩れた。
有り得ない。いや理解出来ない。あれだけ双葉が情熱のままにリハビリにストレッチを重ねても戻らなかなった感覚が戻ってる。来世者の奇跡とは、今迄過ごして来た重さを一切拭い去る、薫樹君は見まごうとなき若き来世者だ。俺の熱い涙が幾重にも最上階の床に落ちては、日差しに負けず広がって行く。虚空先生は毅然とした声で話し掛ける。
「鉄平さん、いや果林さん、何より双葉さん。双葉さんの差し障りのある左手は、何年か先に努力の先に戻ったかもしれません。ですが私達は出会うべくして出会いました。イエスの治癒とはこういう事だったと窺い知れます。双葉さんのこの先の苦労は徐々に和らぎ、より敬虔に健やかな生活を送れると思います。それこその一つ一つの積み重ねが世界をより安寧に導くと思います。鉄平さん、ここはどうか、受け入れましょう」
「ああ、何て事が。これが、そう、奇跡はあるのですね。真行寺虚空先生、俺は、どう何を、いや魂の何もかもを差し出せば宜しいのですか」
「鉄平さん、そこは心外に尽きます。まるで悪魔の契約の前払いみたいな事を、そうでは有りませんよ。今一度これ迄のお話を振り返って見て下さい。この数々の災禍で失いつつある何かを、私達は必ずや取り返し、新世紀に向かいます。来世者とはその気付きで有り、この先の満たされる広がりです。これはその証として穏やかに胸に刻んで下さい」
「ああ、主よ、」
俺は胸の十字架を引っ張り出し、ただきつく両手で握りしめるしか出来なかった。
階下では妻果林の咽ぶ声が聞こえる。恐らく同じ内容を薫樹君のお母さん月舟さんから諭されている事だろう。
そして主審の笛が漸く鳴って、双葉にレッドカードが差し出された。この間は、双葉の左手の具合から偶発か故意か真っ二つの判断かと思う。ただファウルはファウルだ。双葉は仰け反りながらもピッチを後にして、ベンチで一際強く声援を上げる。と言うべきか双葉、ここで闘争本能が丸出しなのか、今自らの左手の状態がどうなってるか見当もついていないのか。何故両拳がやっと一際強く握られているのか気づけ。
試合は主審の指示の元、真行寺タートルにPKが与えられ、蹴り手は屈指のアタッカー久松潤治さんがボールを置きに出た。一方のゴールキーパーは高校生いやユースの逸材とも肩を並べる渡邊賢人さんがただタフにゴールを深く死守する。フットサルのポストは小ぶりとは言え、ペナルティーマークから余りにも近すぎる。軍配は九分一分も、双葉のテクニカルファウルが無ければ、試合の流れのままに真行寺タートルの青写真のままだろう。まだ挽回出来る。頼む、セーブしてみせろ賢人、双葉を静弦希望フライングスワンに誘ったのならば、必ずや双葉に初戦勝利を捧げてみせろ。
日差しが益々照りつけるピッチに、久松潤治さんがゆっくりボールを置く。助走はかなり大きく容赦無くスピードを乗せては、確実にボールはインパクトした。ボールはその速度から追いきれずに見失った。ただ、ゴールキーパー渡邊賢人が右に鮮やかに飛んではパンと確かに弾いた音がした。音の方向に振り向くと、デフェンスの不破廉太郎さんが大きく振り抜きボールは大きな軌道を描きタッチラインを超えた。
立ち上がり様、賢人!と叫ぶ筈が、視線はピッチに飛び込んで来た双葉に注がれた。どうしたと思ったも本当の束の間、双葉は勢いそのまま渡邊賢人の首に両手でしがみつき祝福のハグを捧げた。
ここは俺の史上最大の怒号になる筈が、階下では果林と月舟さんがいち早く黄色い悲鳴を上げては、そのまま気が遠くなって席にしなだれた。
いや、この時点で両手が使える程の奇跡が起こったのは何よりだ、更に黄色い声援が静弦希望町フットサルスタジアムを覆うのは、父親にとってはどうしても長い時間だ。嫉妬以上に勝るは、二人の想い支え抱き合う姿が素直に献身的で、何時迄も眺めていられる事だ。
試合はそのまま、チームカットオフが恐れず高い位置でポゼッションした事で2-1で見事逃げ切った。学生のみの静弦希望フライングスワンがアマチュア山梨強豪の真行寺タートルに勝利すると言う金星に、ただ観客席から大きなオベーションが送られた。
その中を掻い潜る様に、果林が階段を足早に上がってきては、泣きながら俺にとてもきつく抱きついた。その溢れる涙の量と嗚咽で、やはり俺同様の事を知り得てる筈だ。双葉の奇跡はただ主に感謝するしかない。ただこの瞬間にもコロノ禍関連の後遺症で苦しむ方々がいる。来世者が誰かは憚るが、これだけは言える。あなた達の足掻き苦しむ時のいつかに、来世者はそっと歩み、導いてくれる。その聖者の群れを決して見逃してはいけない。そしてあなた達もその群れに必ずや加わるべきなのだから。
牛の爪 判家悠久 @hanke-yuukyu
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