人は独りでは生きていけない。
だから人はみな、自分がかかわった人たちの人生を想いながら生きつづける。
だから人はみな、誰かの人生の影にとらわれながら生きている。“私も”そう思う。
墓参りのシーンと(ほんの少し主人公の恋心を感じさせる友人)明日香についての回想シーンを、作者は(墓参りのシーンで)甲斐甲斐しい妻の様子のみを描くことによって巧みに乖離させる。
「お母さんのことは、俺たちに任せておけ」という台詞の「俺たち」という伏線。
「後悔」の象(かたち)と彩をひたすら探るような情景描写。
そのすべてを、墓所を去る際の妻の台詞に収斂させる作者の技量には唯々平伏である。
「後悔」の対義語は何であろうか。主人公の後悔を見事に払拭させた作者にきいてみたい。
極めて自分勝手な私見を述べさせていただきました。すみません。
墓所を去る際の妻の台詞(ネタバレになるので書きません)で、一気に涙腺崩壊です。ご用心。
人生とは「何かを得て、そして何かを失っていくこと」だと、改めて思い返すことができるお話です。
もちろん、できることなら失いたくない。
でも人生っていうものは難しい。
失ってしまったものが、自分にとって大切な存在だったということも、ままあることなのです。
そんな時、どうすればいいのか。
どうやって、心を整理するべきなのか。
この作品の中にあるように、その人の事を悼み、そして偲ぶ。当たり前のことかも知れませんが、そのことを改めて思い返させてくれた、これはそんな素晴らしい作品です。
春風に包まれながら、故人を偲ぶ。
きっと故人も、それを喜んでくれるのではないでしょうか。