将棋の基本ルールその1



 と、言うわけでさっそく将棋のルールについてのお話。基本の基本から行くので、知ってるって人は読み飛ばしてください。幾つかの用語と一緒に、ゲームの流れを説明しましょう。



 まず、将棋には『王将(玉将)』をはじめに、八種類の駒があります。それぞれに個性があり、得意不得意のあるこれらの駒を駆使して、相手の『王将(玉将)』を捕まえること。これが将棋の目的です。お互いに捕まえられないようにしつつ、相手を攻めていく。その間に発生する駆け引きや、「さぁ捕まえるぞ!」という興奮を楽しむゲームです。



 細かいの駒の種類は後から説明するとして――まずはこの、『捕まえる』ってなんなの? ってことを、説明していきましょう。


 これをご覧ください。


  ――――――――――――

 | | | | | | | 

  ―+―+―+―+―+―+

 | | | | | | |→(続く)

  ―+―+―+―+―+―+ 

 | | | | | | | 

  ―+―+―+―+―+―+


      ↓(続く)



 ちょっとわかり辛いですが、こんな風に垂直に交差した線で区切られた盤が『将棋盤』です。『本将棋』――つまりNHKなんかでちょいちょい放送してる所謂『将棋』は、これを縦9マス横9マス、9×9の81マスならべたものが使われています。


 で、こちら。


   | | 

  ―+―+―

   |王| 

  ―+―+―

   | | 


 この真ん中の『王』という字が、上で説明した『王将』のことだと思ってください。




 将棋の駒には『動かせる範囲』というものが種類ごとに決まっています。自分の手番(他のゲームで言うところの『自分のターン』)では、一度に一つだけ駒を選んで、それぞれの『動かせる範囲』に動かします。




 王将の動かせる範囲は、こう。




  ●|●|● 

  ―+―+―

  ●|王|● 

  ―+―+―

  ●|●|●




 この黒丸の部分が王将の『動かせる範囲』です。




 罫線がごちゃごちゃしますので整理すると、こうですね。




  ● ● ●

  ● 王 ●

  ● ● ●




『王将』は「自分の周り一マスずつ」が、『動かせる範囲』です。




 他の駒も同じように動きが決まっています。これを交互に動かし合っていくことで、将棋は進行していきます。




***




 では、動かせる範囲に他の駒があるときはどうなるのでしょう。




 下を見てください




   |歩| 

  ―+―+―

   |王| 

  ―+―+―

   | | 




 この『歩』も駒の一種です。これが『自分の駒』の時、王将の『動かせる範囲』はこうなります。(罫線を省きます)




  ● 歩 ●

  ● 王 ●

  ● ● ●




 一マス減ってしまいました。




 『自分の駒のある所には、駒を進められません』




 他にも駒があると……こんな感じになります。




  歩 歩 金

  金 王 ●

  ● ● 銀


    王<狭い!



 自分の駒、意外と邪魔です。


 なので、将棋では一手一手、自分の駒を動きやすいように動かしていくのです。


 ――(特に将棋は始まるとき、駒が自分の陣地に固まっています。スゴク、セマイ。動かせる手が必然少なくなります。だから、これから将棋を始めるという人は『最初の一手から五手目くらいの定石』を自分なりに作ってみると、遊びやすくなります。お試しあれ)――


 ちょっと休憩しましょう。


 ここまでで覚えることは二つです。




1、『駒は決まった動きをする』

2、『自分の駒があるところには、ほかの駒を動かせない』




 休憩ですのでお茶でも飲みましょう――




 まだいける人はどんどん読んじゃってください。




***




 ごちそうさまでした。




 それともまだいけますか?


 今回説明することはあと二つで終わりです。よろしくお願いします。


 上で説明した通り、『自分の駒のあるところには動かせない』ということはわかってもらえたかと思います。では、『相手の駒』がある場合は、どうなるのでしょうか?


 これをご覧ください。


   |敵| 

  ―+―+―

   |王| 

  ―+―+―

   | | 


『敵』とあるのが相手の駒だとしましょう。(本当はもっとスマートな表記がありますが、カクヨムの機能だと再現できませんでした)この場合、王将の動きはこうなります。



  ● ● ●

  ● 王 ●

  ● ● ●



 全部動ける!


 そう、『相手の駒のある所には、動ける』


 そして、このように動いたとしましょう。




   |王| 

  ―+―+―

   | | 

  ―+―+―

   | | 



 この時『敵』の駒は自分の手元に『取る』ことができます。


 バーン! とぶつかると倒せる、ということです。


 このようにして、敵の駒を一つずつ倒して『取って』いきます。この繰り返しで、ドンドン相手の王様に近づいていくわけです。



 で、相手の王様を『取る』ことができるとき、勝利が決まるのです。


 つまり、こんな感じ。(敵の王様を『玉』として書きます)





  ――――――――――――

 | | |玉| | | | 

  ―+―+―+―+―+―+

 | | |金| |飛| |

  ―+―+―+―+―+―+ 

 | | |香| | | | 

  ―+―+―+―+―+―+




     玉<タスケテ! タスケテ!


      




 うん。駒の動きがわからないと、さっぱりですな。




 とにかく、重要なのは二つ。




3、『相手の駒のある所には動ける。動いたら、相手の駒を『取る』』

4、『相手の王将をとれたら、こちらの勝ち!』


 これが、将棋の基本ルールです。


***


 どうでしょう。わかっていただけましたか? 図解をつかえればもっと良かったのですが……。最低限以下の四つが伝わっていれば幸いです。



1、『駒は決まった動きをする』

2、『自分の駒があるところには、ほかの駒を動かせない』

3、『相手の駒のある所には動ける。動いたら、相手の駒を『取る』』

4、『相手の王将をとれたら、こちらの勝ち!』



 さて、ここで最初にいった、『王将を捕まえる』という言葉についての説明です。


 将棋では交互に手番がすすみますから、『次の相手の番で王様が死ぬ』というのがわかるときがあります。所謂『詰み』というやつですね。


 この時、負けたほうは自ら「負けました」と宣言して、将棋の勝敗は決着します。


 もっというなら、『次の相手の手番で』となる前、『相手が最善手で差して来たら〇〇手で死ぬ』というのが読めたとき、自ら負けを認めます。


 王将が討ち死にする前、手駒が無暗に死ぬ前に、潔く負けを認めることで、将棋の決着はつくのです。――これは、お互いに『相手はミスせず自分を追い詰めるだろう』『相手は自分と同じくらいにこの先の展開を考えているだろう』という信頼関係があるからこそ、成立する文化です。


 だからこそ、多くの棋士の方々が将棋を説明される際、『相手の王を殺す』や『敵を倒す』ではなく、『王将を捕まえるゲーム』と、表現なさいます。


 戦う相手への尊敬と、自分の引き際を見極める冷静さを表す、素晴らしい表現だと、僕は思います。


 これから、駒の動きや、いくつかの作中で用いた用語の解説、モデルにしたエピソードの紹介など行う予定ですが、単純な単語の羅列では伝えられない精神性が、この一文には詰まっています。


 繰り返しになりますが、この解説をきっかけに、是非皆さんにも将棋に親しんでもらいたいと思います。



――主人公にそういった精神が今のところ見られないのは、触れないでね!




 では、本日はこの辺で。




 ありがとうございました。

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これで異世界でも生きていける! よくわかる(かもしれない)将棋講座 絹谷田貫 @arurukan_home

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