第12話 森の妖精、森の主 ~幻想の森~

ココもハミュの目の前に現れたのは小型の馬だった。

全身が青白く輝いていて、体中に葉のついた蔦をまとっていた。言葉だけでは汚らしくも感じてしまうかもしれない、青く光るたてがみと幼い顔立ちが妖精のような雰囲気を醸し出していた。

走ってきたので自慢であろうたてがみが美しくなびいていた。


「・・・・・・・・・・・・」


3人とも沈黙。

ココが耐えきれずに声を出した。


「え、ええっと……どうすればいいの?」


ごもっとも。ハミュも困っていた。すると…


「$ agvtool mvers ya」

「ミュ!」

「うわ…!な、何か話しかけてるのかな?」

「$ xcodebuild yo」

「ミュミュ!」

・・・


少しの間その馬とハミュは話し込んでいた。その間ココは2匹を観察していたが、安堵の表情や驚いた表情などころころ変わるのでとても不安だった。

白い馬から悪い雰囲気を感じなかったことはココにとって救いだった。

やがてハミュがココに振り返って会話の内容を伝え始めた。


「この馬…ユニコって言うミュけど、この森を守る役割があるんだってミュ」

「守る…?もしかして私たちが悪者だと思われてたってこと!?」

「いやいや!違うミュ! 守ると言ってもパトロールのようなものらしいミュ 乱暴なことはしないってミュ」

「そっか…よかった それで他にはなんて?」

「この森はいたずら好きの妖精がたくさんいるらしいミュ おいらたちは迷わされたんだろうってミュ」

「えぇ!?いたずらって言っても私達食べられそうになったんだよ!?」

「あのバナナみたいなやつは何も食べれないってミュ 蔦から栄養を得るから食べる必要もないんだってミュ おいらもびっくりしたミュけど…あれは脅かすためによく使われるらしいミュ…」

「えぇ…もう食べられて死んじゃうかと思ったのに。。。」

「ミュ〜…でもこれ以上のいたずらは止められるらしいミュ!」

「そうなの!?」

「ミュ〜ちょっと怖い情報ミュけど… ここには"森の主"がいるらしいミュ 王様とかじゃないミュけど、みんなに讃えられる存在らしいミュ」

「うん」

「その森の主に敵じゃないって認めてもらえたら、みんないたずらもやめるってミュ」

「えっ………」


状況を早く理解したくてハミュの言葉を休み無く聞いていたが、一瞬凍った。


「それって…森の主に会わないとだめってこと…?」

「そうミュ…」

「………」


ココは不安で仕方なかった。先程立て続けに怖い思いをしたのだ、森の主が何もしないわけがない。

目の前にいるユニコはとこも神秘的で…なにより可愛い。だが"主"と呼ばれるなんて怖いし強いに決まっている。ココは森の主が魔王のような悪いものを想像した。きっと今の精神状態じゃなければここまで悪い想像にはならなかったのに。


「ミュ! で、でもユニコは怖がらなくていいって言ってるミュ! 森の主は強いけど優しいってミュ!」


明らかにココが良くない想像をしていると感じたハミュが必死になだめている。

ハミュは森の主がどのような者かわからないが、ユニコから直接話を聞いたことで幾分気持ちは楽になっていた。ユニコは癒やし効果があるようだ。


「そ、そっか…! でも会わないといたずらが止まないんだもんね…」

「そうミュね おいらたち完全に迷子ミュ 正直選択肢はないミュね…」

「うぅ…」


ココは身体的にも精神的にも疲れていた。

順調だった旅もこの森を進んで180度変わってしまった。自然にばかりで綺麗なこの星を完全に信用していた分、そのショックは大きかった。


「$ adb daijobu?」


ココが心も体もボロボロなのを察したのか、ユニコが優しく声を掛けてくれた。

残念なことに、ココには何を言っているのかわからない。だが、何か優しい雰囲気を感じてココの心も少し楽になった。ユニコは癒やし効果があるみたいだ。


「ユニコも心配してるミュ」

「あ、ごめん…ユニコ優しんだね!」

「話してみるとすごく優しいミュ! 見た目も優しそうミュ! だからおいらユニコの言うことは信用出来るミュよ!」


ハミュが笑顔で言い放った。この森で迷子になったと認識してから暗い雰囲気だったが、ようやく笑えた。

ココもハミュの笑顔を見ると少し元気が湧いてきた。それから妙にユニコが信用出来るように思えてくる。


「あはは! ユニコとはさっき会ったばかりなのに!」

「ミュミュ…! そうミュね! まるで詐欺師に引っかかるみたいミュ!」

「あっはは!」


1回の笑顔を機に2人は何か安心したように気持ちが軽くなっていった。

これもユニコの癒やし効果なのか。


「$ emulator okuru」

「ミュミュ!」

「ん?」

「森の主はこの森の出口の方にいるってミュ 時折迷いやすいところも通るから道案内してくれるって言ってるミュ!」

「えぇ! いいの!?」

「森のみんながこんなに森の奥まで迷わせたのは初めてだってミュ おいらたちには何かあるってみんな感じてるってユニコは言ってるミュ だからぜひ森の主に会わせたいらしいミュ…」

「わたしたちに…何かがある? えぇ…何にもないのに。。。 森の主さんがっかりしちゃうんじゃ…」

「食べられないようにしないといけないミュね」

「ヒィ…」

「ミュミュミュ! 冗談ミュよ」

「もう! と言うかハミュは森の主さんがどんな生き物か心配じゃないの!?」

「もちろん心配ミュ…でもユニコが大丈夫だって、安心していいって言ってたからきっと大丈夫ミュ」

「む〜 私もユニコとお話したい」


「$ .....」


ユニコはまた何か言っているが、もちろんココにはわからない。


「ユニコもココと話したがってるミュよ でも残念ミュね」


ハミュが意地悪く笑いながら言う。

うー悔しい。


「いいもん! スキンシップでカバーするもん!」

「ミュミュ! まぁそれもいいミュね」


意地悪。


「真面目な話ミュ、森の主のところまではそこそこの距離があって、ここからだと1日がかりみたいミュ」

「えぇ! あぁ…外から見る森はすごく広かったからなぁ それくらいはかかっても仕方ないよね…」

「今日はここで野宿して、明日出発するミュ ユニコも一緒にいてくれるって言ってるミュ」

「ほんとに!? ユニコがいてくれると安心! 大好きユニコ♡」

「ミュミュ…調子がいいミュ…」


ココはやっと休めることにホッとしていた。だが知らない森で自分たちは完全な部外者なのだ、そんな中の野宿は恐怖でしかなく、ユニコがいてくれるのは本当に心強かった。


ユニコを撫でながらココは今日の探索を思い返していた。

”今日は珍しい植物をたくさんスケッチした、これをお父さんに見せればきっと見直してくれる。でもこの森から出て帰らなきゃ…!”


ハミュは呆れ顔でユニコを撫でるココを見ていた。そんなハミュも今日の出来事を思い返していた。

"今日は散々ミュ…でも探索は楽しかったミュ この森では怖い思いしたミュ〜…でもこの森はすごく綺麗ミュ なんだかいいことも悪いことも起きて大変ミュ… この先は大丈夫かミュ〜?"


野宿用のテントを立て終わると、2人は文字通り体力を使い果たし、ご飯も食べずにすぐに寝てしまった。それぞれの想いを持って…。

ユニコはそんな2人を優しく守るかのように、テントの前で眠りについた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

半熟2丁ココハミュ探索記 @svs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ