第3話追憶
「じゃあな、未来!また遊ぼうな!」
手を振りながらその子は言ってくる。
雪が積もった日、俺たちは寒さを無視して遊んでいた。
「ああ!またな!」
俺は中学の時この子、山下 華湖(やました かこ)とよく遊んでいた。
口調からも分かるように華湖は男っぽい。その口調のおかげで付き合いやすかった。
もうすぐ日が暮れそうな時間になって、十分に遊んだ俺たちはそれぞれの家へと帰る。
「遊んでるときは暑かったけど、やめると急に寒くなるな・・・手袋着けとこ」
涼しさが無くなった風を受けながら、なんとか家に着いた。
「ただいまー」
「お帰りなさい。荷物置いて、手を洗ってきなさい。ご飯もうすぐできるから」
「雪遊び、楽しかったかい?」
靴を脱いで、両親がくつろいでいるリビングを抜けて自分の部屋へ行こうと、廊下へ繋がるドアを開けた時、家のチャイムが鳴った。
「あら、配達屋さんかしら?はーい、今行きます」
今日のご飯はなにかな~
ウキウキしながら部屋へ向かう。
ドタッ!!
うん?なんだろう、今の音?
音が気になり、リビングのドアを開ける。
そこには、見知らぬ覆面マスクを被った男と父さんが立っていた。
それから、父さんは崩れ落ちた。そのあと、父さんが起き上がる気配はなかった。
そんな父さんの傍に立っている男の手には、赤い液体がついた包丁を持っていた。
玄関に続いているドアは開いており、その奥では母さんが倒れていた。
男は俺を見つけると包丁を前に出し、こちらへ向かってくる。
男が包丁を振り上げて・・・・
そこで俺の意識は途切れた。
次目覚めたときは、警察署の中だった。
目を覚ました俺に、大人たちは何か質問してくる。
どうやら、俺がうっすら覚えている覆面マスクの男のことについて聞かれているようだ。
けれど、どの質問にも見覚えが無かった。
質問が終わってしばらくすると、刑事のような見た目の人が入ってきた。
「今回殺人を犯したと思われる男だが、近くのコンビニで強盗を起こした犯人と一致していた。そっちの少年はどうだった?」
「やっぱり、この少年はあの男を殺したわけではなさそうですよ。男に刺さっていた包丁に少年の指紋もありませんでしたし。少年も手袋とかを着けてた訳でもないですしね。となると、人を殺したことによるショックで自殺したかと」
俺に質問してきた人が途中で部屋に入ってきた人になにかを伝えている。
今あの人たち手袋って言った?
そう思って自分の手を見る。
あれ?俺って手袋着けてなかったっけ?
「そうか、分かった。すまなかったな。親戚の人の電話番号は?今から迎えに来てもらうから」
質問の答えを聞いた人が俺に言ってくる。
親戚?なんで父さんとか母さんじゃないんだ?
「すいません、なんで親を呼ばないんですか?」
そう聞くと、警察の人たちはみんな気まずそうな顔をした。
そんな中、番号を聞いてきた人がこっちを向いた。
「未来君・・・君のご両親は、・・・お亡くなりになった。出血死だったらしい」
!!??
記憶は薄れてたけど、あの状況からはあり得ることだった。でも、そんなこと思いたくもなかった。
あの事件が起こった後、俺は親戚に預けられることになった。
親戚の家は住んでいた地域とは少し遠く、中学校も転校した。
手袋はあのあと見つからず、諦めていたら何故か数日後に俺のところに戻って来ていた。
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パンッ!!
その音と共に痛みが頬に伝わる。
「あっ・・・健二、照・・・」
目の前にはいつの間にか健二と照がいた。
「ここから離れるんだ、走るぞ!」
「う、うん」
今でもトラウマか・・・
あのとき、立ち向かっていれば、二人とも生きていたのかな・・・
紋章の辿る道は ぱるぱす @yakusokunoyoru
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