11 決戦

 ルルドの都を囲む防壁、その西側の通路に立ち、ミリアムは夕空を睨んでいる。

(今度こそ決着をつける)

 山の稜線に太陽が沈んでいく。光は徐々に衰え、消える――そのはずが、光はむしろ輝きを増し、その中心からドラゴンが現れる。

 宿敵は黒い翼を広げ、一直線にこちらへ向かってくる。

 ミリアムは深呼吸をして、弓に銀の矢をつがえた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【仲間に「アラン」がいなければ→1「ミリアムの家」へ】


【仲間に「アラン」がいれば↓下へ】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「悪ぃな、お嬢ちゃん。正直、今の今まで信じてなかった」

(知ってた)

 問題は、真実を目の当たりしてどうするか。逃げても責める筋合いはない。

「まだ射つなよ」

(……!)

「もっと引き寄せろ。数発当てれば奴はきっとお嬢ちゃんを攻撃しに降りてくる。上手くかわせ。その隙に、俺は奴の背に飛び乗る」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【仲間に「天使」がいなければ→1「ミリアムの家」へ】


【仲間に「天使」がいれば↓下へ】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「オラ来い! こっちじゃ、この間抜け!」

 天使が飛び回ってドラゴンの注意を引き付けてくれるおかげで、ミリアムとアランは攻撃に専念することができた。

 ミリアムは狙い澄まして銀の矢を放ち、アランは背びれに捕まって何度も剣を突き立てる。

 夕闇の仲間、静かな攻防が続く。西側の防壁付近には住居がない。ドラゴンの鳴き声や吐き出す炎に気付き、かつ義心のある者がいたとして、ここまで駆けつける頃には戦いは終わっているだろう。

 空に一番星が輝いた。

 手応えは、ある。ドラゴンの動きは徐々に鈍ってきている。

 しかし、銀の矢はもう残り少ない。天使も口数が減ってきた。アランの体力も限界が近いだろう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


【道具に「石剣」がなければ→1「ミリアムの家」へ】


【道具に「石剣」があれば↓下へ】


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 矢が尽きた。

 ドラゴンの顔が迫ってくる。

 背びれから振り落とされ、防壁にかろうじて着地したアランが叫ぶ。

「お嬢、逃げろ!」

 無理だ。

 もう間に合わない。

 ドラゴンの頭が一瞬大きくのけ反ったかと思うと、次の瞬間、その口から炎が吐き出された。

 眼前が急激に明るくなる。

 達する前からすでに熱い。

 ミリアムは弓を捨て、石剣を握って全力で横に薙ぎ払った。

 その行動に深い考えがあったわけではない。所謂やぶれかぶれである。

 剣で、ましてや刃物ですらない石の剣で、炎が斬れるわけがない。が、現実として、炎は真っ二つに斬り裂かれた。


 火喰い鳥の爪クロウ・オブ・クロッサリー


 剣の名などミリアムは知る由もないが、勝機は見逃さなかった。

 ドラゴンはこちらへ急接近しながら再びのけ反り、ほとんど零距離で炎を吐きつけてくる。

 その輝きを石剣で両断して、禍々しい牙が並ぶ口内に毒針を突き立てた。


 ドラゴンは、何かに弾かれたようにミリアムから離れ、身を捩った。

 そして、忌々しげに一度咆哮すると、ルルドの都に背を向け、西の空へと飛んでいった。


(勝った)


「おっしゃあああー!」

 どこにそんな力が残っていたのか、地面に這いつくばっていた天使が勝鬨を上げた。

 アランは通路に腰を下ろし、どこに隠し持っていたのか、酒瓶の蓋を開けた。


 ドラゴンの姿が完全に見えなくなると、ミリアムは小さな声でアランに「ありがとう」と言った。

 自然と頬が緩む。この長い長いで、初めて笑えた気がした。

 アランはただ一言「おう」とだけ言って、髭だらけの口もとをほころばせた。


【終】




THANK YOU FOR PLAYING!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

予言者ミリアムの試行錯誤 森山智仁 @moriyama-tomohito

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ