終わり、そして始まる。


 全てが終息したかに見えたその街の、隅にある一軒の民家での出来事。


 そこにはロンシャン帝国技術顧問、ウォンを息子に持つフェイの姿があった。


 自分が暇を頂いていたちょうどその日に、帝国がこのような事になってしまうとは。


 彼は帝国に尽くし、シャオランの為に死ぬと決めていた。

 それがどうだ。あの被害ではこの国はもう終わりであろう。


 城も崩壊し、シャオランとて無事ではあるまい。


 そう悟った彼は、もう一つの生き甲斐だけでも守りたかった。

 なんとしても、自分の孫娘を守りたかった。


 孫娘と言えど彼女とフェイに血の繋がりは無い。


 ウォンが結婚した女性の連れ子である。

 詳しい経緯はフェイもウォンも気を使って聞かなかったが、どうやらユーフォリアの男性との間にできた子らしい。


 ウォンは子連れの彼女を受け入れ、フェイには孫娘が出来た。


 しかし、まだ子が幼いうちに彼女は病で亡くなってしまう。


 ウォンはそこから狂ったように研究にのめり込むようになりあまり娘の世話をしなくなった。


 自分と血の繋がらない子だからだろうか? フェイには分からなかったが、少なくともフェイにとっては、かけがえの無い孫娘である。



 そして、フェイは気付いてしまった。

 ウォンは自分の娘を人体実験に使うつもりだ、と。


 その為の薬剤も家に持ち帰り、微調整をしているようだった。


 フェイにとっては気が気ではない。

 何としても阻止しなくてはならない。


 そう決意し、暇をもらって家探しをしていた時の事だった。


 帝国の終わりがやってくる。

 そして、自らの命の終わりも唐突にやってきた。


 だからこそ、目の前で血だらけになり倒れている孫娘だけでも助けなくてはならなかった。


 どう見ても助かる傷では無い。

 しかし、諦める事など出来ない。


 そして彼は、禁忌に手を染める。

 自ら阻止しようとしていた薬剤を、同じ場所に用意されていた注射器に注ぎ、今にも死んでしまいそうな孫娘へと投与する。


 それしか救う道は無い。

 自分も深い傷を負っていて、程なく息絶えるであろう。


 しかし、孫娘だけは生きていてほしかった。

 たとえどのような物に変わり果てようとも。


 孫娘は自分を恨むかもしれない。

 だとしても、僅かな希望に縋りたかった。


 初めてフェイは、息子の研究に感謝し、その成功を願う。


 この家にはウォンの作った武器や、フェイには分からぬような物が沢山ある。

 もし彼女が生き延びたとしたら、それらが助けになるかもしれない。


 仮に人として生きられぬ身に落ちようとも、たとえそれらの武器で人に仇なす存在に堕ちようとも、ただただ、生きていて欲しかった。


 そして彼女は無事に、ある意味人では無い何かとして新たな人生を送る事になるのだが、フェイがそれを知る事は無い。


 目覚めた彼女はしばらく自分の身に起きた現象に嘆きはしたものの、その強い意志で単身ユーフォリア大陸へ渡る事になる。


 祖父の残した力と命を胸に。

 父の残した武器を手に。


 そして彼女は……神と出会う。



 だが、それもまた些細では無い別のお話。








★★あとがき★★



この作品だけを読んだ方で最終話まで辿り着いた方はいらっしゃるんでしょうか(笑)

これはぼっち姫は目立ちたくない! に登場するロンシャン帝国、そしてリンロンにスポットを当てた話になります。

勿論、ただの過去話、というだけではなく今後の本編への布石にもなってはきますが、この物語は読んでも読まなくてもぼっち姫という作品には影響ありません。


そんな作品をここまで読んで下さった方へ、改めて感謝を。

最終話についてはそれこそぼっち姫本編を知らない方にはなんの事だか、という状態かもしれませんが、もしよろしければ本編の方を読んで頂けると嬉しいです。


本編はこの作品とはかなり毛色が違うのでこちらから入った方は戸惑うかもしれませんが。

本編はドタバタありシリアスありギャグあり鬱ありのTSファンタジーでございます。

お時間ありましたら是非覗いて見て下さいませ。



カクヨムには後書き機能がありませんのでここに書かせて頂きました。

それではまた別の場所でお会いできることを祈って。

お付き合い有難うございました。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

【亡国の皇女】〜帝国最後の日〜(ぼっち姫、外伝その弐) monaka @monakataso

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ