〇〇少女ワールド 番外編 2020夏

渋谷かな

第1話 2020夏前の3月下旬

「2020年、東京オリンピックは開催されなかった。」

 イマドキの世界観。

「地球は未知のウイルスに汚染された。」

 これも時事モノ。

「世界で10億人の人々がウイルスに感染して命を落とした。」

 ウイルスに犠牲はつきものである。

「代わりに四年に一度のウイルス散布実験オリンピックが開催された。」

 悪の科学者たちの本拠地は中国の武漢。

「今回は成功だー! イヤッホー!」

 実験の成功に悪の科学者たちは大喜びである。

「ほとんどのウイルスが実験段階で失敗。先輩ウイルスのサーズは発症させることはできたが、世界中に広めることが出来なかった。」

 サーズの感染者は1万人を超えなかった。しかし、今回のウイルスは既に約10万人の感染者が確認されている。

「それにしてもよく考えたものだ。ウイルスを広めるのはウイルスをバラ撒かなくても、中国人に感染させて、春節祭で世界旅行に行かせれば、あっという間に全世界に広まるではないか! ワッハッハー!」

 もちろんウイルスを作れる悪の科学者たちは優秀である。

「武器でも政治でもない! 世界を征服するのはウイルスだ! ウイルスの名前は、コロナ・ウイルスだ! これで世界は私たちのものだ! ワッハッハー!」

 悪の科学者たちの目的は世界を我が物にすることだった。

「世界の大統領どもに、ウイルスで死にたくなかったら、降伏しろとメールしろ。抗体が欲しれば、我が軍門に降れとな! ワッハッハー!」

 未知のウイルスは最強であった。

「大変です!? ドクターウイルス!?」

 そこに下っ端助手の悪の科学者が慌てて走り込んでくる。

「どうした?」

「未知のウイルスの抗体の入っていた容器を割っちゃいました。アハッ!」

 世界を恐怖のどん底に落としているウイルスの容器を助手が割ってしまった。

「なんだ。割れたのか。ワッハッハー!」

「ワッハッハー!」

 ドクターが笑ったので助手も一緒に笑う。

「なにー!? ウイルスの抗体を割っただと!?」

 現実に戻り悪の科学者が声を裏返らせながら激怒する。

「バカ者ー!? 原因不明の感知しない未知のウイルスなんだぞ!? 感染したら死んじゃうんだぞ!? ふざけるな!? なんとかしろ!?」

 悪の科学者も、ただの一人の人間である。

「ウッ!? 体が重い!? フラフラする!? まさか!? 私はウイルスに感染してしまったのか!?」

 悪の科学者ドクターウイルスは、自分の作ったウイルスに感染して死んでしまった。

「いや~、ドクターが死んでくれて、怒られずに済んだ。ラッキー! アハッ!」

 助手は目の上のたんこぶが消えてスッキリとした。

「これで、この世界は僕のものだ。だって僕の体にはコロナ・ウイルスの抗体の注射をしてあるからね。」

 実は助手は天才だが、ドクターがうるさいのでバカを演じていた。

「世界征服が完璧に創作できている。怖い、自分の才能が恐ろしい。アハッ!」

 やはり助手も世界を、その手に欲しがっていた。

「ウッ!? なんだ!? 目の前が三重に見える!? 馬鹿な!? 僕もウイルスに感染したというのか!? はっ!? もしかして突然変異か!? 考えられる可能性はそれしかない!? 死ねない! 死ぬ訳にはいかないんだ! 僕には世界中の人々をウイルスで感染させて殺してでも守りたいものがあるんだ!?」

 助手も未知のウイルスに感染した。


「ようこそ! ウイルスの祭典! ウイルス祭へ!」

 ここは悪の科学者たちの細菌製造工場である。たくさんのウイルスが集まっていた。もちろんウイルスたちはゆるキャラやマスコットキャラクターや擬人化したものまでいる。これがウイルス祭だ!

「おまえたち! 感染したいか!」

「おお!」

「聞こえないぞ! おまたち感染したいのか!」

「おおー!!!」

「感染したいくて仕方がないのか!」

「おおおー!!!!!!!」

「俺たちは最近だ!」

「おおおおおー!!!!!!!!!!!!!!」

「ウイ! ア! ウイルスー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「おおおおおおおおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ウイルス祭の会場のボルテージは、人気アイドルのコンサートみたいに最高潮に盛り上がっていた。

「こいつら、アホか?」

 その様子を悪の科学者のドクターウイルスがクリーンルームから呆れながら眺めていた。

「え? このウイルスたちはドクターウイルスが作ったんでしょう?」

 新しい新任の助手である。ドクターウイルスは二代目で、一代目のドクターウイルスを殺した助手が悪の科学者ドクターウイルスに成りすましている。

「あ、そうだった。アハッ!」

 まだドクターウイルスに慣れていない元助手。

「俺たちの愛すべきメンバーを紹介するぞ!」

「おお!」

 ウイルスたちが紹介されていく。

「まずは新入り! 既に全世界で20億人に感染! 10億人の人間を抹殺した! ウイルス界のホープ! 新型! コロナ! ウイルス!」

「おおおー!!!」

 ナウでトレンドの新型コロナウイルスが紹介される。

「抹殺だ! 人間なんか! 皆殺しだ!」

「おお!」

「おまえたち! 武器でも人間でもねえぞ! 俺たちウイルスが最強だー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 すごいシャウトを効かせる新型コロナウイルス。

「おおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 会場のウイルスたちはウェーブで盛り上げる。

「続いては、サーズ先輩だ!」

「おおー!」

 続いて少し前に流行ったウイルスのサーズ先輩が現れる。

「おまえたちの今日があるのは、この俺、サーズのおかげだー!!!!!!!!」

「おおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「ウイルスを愛し、ウイルスに愛されたウイルス。それが俺、サーズだー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「おおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 サーズ。ある意味で恐るべしウイルスである。

「そして本日のウイルス祭のために特別ゲストを呼んでいるぜ!」

「おおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「おまえたち! ウイルス界のレジェンドに会いたいか!」

「おおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

「それではご紹介しましょう! 世界を黒一色に染め上げたウイルス界の大大大大大先輩! 黒死病! キング・オブ・ウイルス! レジェンド・ペストの登場だ!」

「おおおおおー!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」

 ペストがウイルス祭の会場に現れる。

「ウイルスを作るのに忙しいから手抜きなんだけど、これでいいのかな?」

 その様子を見ていたドクターウイルスは思わず首を傾げるのであった。


「私の名前はウイルスマン! 地球を悪い人間から守るんだ!」

 この物語は、普段は悪者のウイルスをUターンさせ、正義のヒーローにしてみたお話である。

「お金儲けのためだ! 工場から毒ガスを排出するのだ! ワッハッハー!」

 悪い人間は何処にでもいる。

「とう! そうはさせるか!」

 颯爽と現れるウイルスマン。

「ストップ! 大気汚染! 悪い人間め! これ以上、地球を壊させないぞ!」

 ウイルスマンは悪い人間と戦う正義のヒーローだ。

「がんばれー! ウイルスマン!」

 もちろん、ちびっ子たちにも大人気。

「ありがとう! チビッ子の諸君! みんなの声援がウイルスマンのエネルギーになるんだ! ウイルス・チャージ!」

 説明しよう。ウイルス・チャージとはウイルスマンが必殺技を出すために戦闘力を上げることをいう。

「くらえ! 人間ども! 必殺! コロナ光線!!!!!!!!!!!!!!」

 ウイルスマンは強力な感染力を誇る新型コロナウイルスを放つ。

「ゴホゴホ? 急に咳が? 体がフラフラする? 高熱だ!? ポックリ~。」

 悪い人間は新型コロナウイルスに感染して死亡した。

「悪い人間は許さない! 地球の平和はウイルスマンが守ってみせる! キラーン!」

 正義感の強いウイルスマン。

「ありがとう! ウイルスマン! カッコイイ!」

 もちろん、ちびっ子は正義の味方ウイルスマンが大好きだ。

「良い子のちびっ子たちは歯を磨いて寝ような! さらばだー!」

 風の様に消えていくウイルスマン。


「ふ~う。正義のヒーローも大変だ。」

 ウイルスマンも正義のヒーローの重圧にプレッシャーを感じていた。

「うわあ!? 森林伐採に、森林火災。地球の砂漠化の、トイレットペーパーの買い占め。本当にトイレットペーパーでお尻を拭きたい人がお尻を手で拭いているなんて!? まったく、この世の中は困った人間ばっかりだ。」

 悪い人間たちに憤慨しているウイルスマン。

「久しぶりだな。ウイルスマン。」

「あなたは!? ドクターウイルス!?」

 ウイルマンの元に悪の科学者ドクターウイルスが現れる。

「どうだ? ウイルスから見た人間の世界は?」

「はい。ドクターウイルス、あなたに生命を頂いて地球の色々な所を旅してきました。私が感じたことは、人間たちは自分たちの私利私欲のために地球を破壊している。お金儲けのために、この美しい地球を、また純粋な子供たちの笑顔まで奪っているんだ! 私は人間たちを断じて許すことはできない!」

 ウイルスマンは悪い人間に怒りを覚えていた。

「私が人間を絶滅させてやる! 世界中の人間に新型コロナウイルスに感染させて、美しい水と緑の惑星! 地球を取り戻すのだ!」

 シャキーン! さすがは正義のヒーロー! ウイルスマン!

「そうだ! その調子だ! ウイルスマン! 私たちウイルスこそが正義のヒーローなのだ! 除菌されるのは人間の方なのだ! 行け! ウイルスマン! 良い子のちびっ子たちの未来を守るんだ!」

「分かりました! ドクターウイルス! ウイルス・チャージ!」

 今日もウイルスマンは世界中にウイルスをバラ撒き、悪い人間たちを駆除していくのだった。

「ゴー! ゴー! ウイルスマン!」

 戦え! ウイルスマン! 地球の未来は君の手にかかっている!

 終わる

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