第7話 独占欲

ナリくんが姿を消した。たぶん、あおが新月と一緒にいるところを見たんだと思う。新月は頭がよすぎるから、そういうちょっとした作戦をあおの知らないところでしているから嫌いだ。でも嫌いだって文句を言うと新月はあおの首をしめてくれるから、そこもあってあおは嫌いだって言うようになったのかもしれない。


新月が嫌うのはナリくんじゃない、エンさんだ。新月は絶対的にエンさんには勝てない自負がある。

幾度も幾度も新月はエンさんに戦いを挑んでいる。

でもエンさんは戦うよりも先に、あおを盾にして新月にこう吐き捨てる。

「欲しけりゃどうぞ。どうする?あお」

エンさんはずるい。自分があおの兄弟だって立ち位置を変えない最強のやり方をして、新月を徹底的に殺していく。


この前はひどかった。

新月が目の前に住んでいることを利用して、カーテンを開けて私を見せつけたのだ。

新月は新月で素知らぬ顔で見下していた。


あおはそんな中、ナリくんを思っていた。

ナリくんだけは私の心を侵さない。ナリくんに会いたいと思ってカフェに行くけれど、ナリくんはもうどこのいもいなかった。

いっそ、ナリくんを追いかけてこの街を出ようかとも思った。


でもあおには新月がGPSが常につけられているし、1分でも帰宅が遅くなったら、次の日はエンさんがあおを外に出してくれないから、どうにもならなかった。


ナリくんとお昼寝をしていたころが懐かしい。

ナリくんの優しさが好きだった。ただ見つめている優しさが、ただ隣にいてくれる陽だまりのような木漏れ日のような存在が。


あおの目の色が人を狂わせたとしても、新月やエンさんほどおかしなことにはならない。

新月はあおの目を見て、自分のすべてをその手で壊してしまった。

エンさんは少しでもあおの姿がわからなくなると、大きなダイヤモンドを買ってくる。唐突に、突然に。


だから、損得のないナリくんのあの存在が懐かしい。


四方の大将の起点は北の大将だ。

なぜなら、北方は冥界との唯一の入り口だから、発言と行動は絶対であり先鋒なのだ。

つまり、あおのご気分次第ですべてが決着していく。

そのご気分も冥界からの明快な指示があり、実はあおの気持ちはあおの手中にはない。


世界はこうして、四方の大将の感情と共に変容していく。






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Avici‐私の秘密‐ アヤメ @YanaiMegumi

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