かつて短距離走をこころざし、いまは会社員として日々を送る主人公の、走ることへのくすぶる想いが語られます。カタキ役の山本係長のうざ絡みとそれに対する主人公の敵愾心あふれる対応が、生煮えの想いを増強していて面白いです。この生煮えの感じの質感が、とても胸に迫ります。そもそも主人公が少年時代に走ることに目覚めたのは、うまく走れないことの鬱積が解消されたことをきっかけにしているので、物語の最後の展開は、その第二期にあたるのかな、と希望を持ちます。締めくくりの早朝のシーンの空気感が、とてもさわやかな読後感でした。
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