猫日和
ゆう
第1話 吾輩は猫である
我輩は猫である
いかにもな始まり方であるが
『猫の自己紹介ランキング』という物があれば堂々の一位であろう。
それくらい猫界では鉄板ネタである。
まぁ、今日日、一人称が吾輩なんて猫はいない。
俺に決まった名前は無く、人によって呼び方は様々。
タマと呼ばれたり、ミーと呼ばれたり、、、
そう
俺には飼い主(パートナー)はいない。
いわば野良猫(フリーランス)である。
『猫というのは、こんなに流暢に話し、物事を考えている生き物なのか?』
こう考えている読者の方も多い事だろう。
俺も最初から、教養があり、気品溢れる野良猫だった訳ではなく、猫歴がとてつもなく長いのだ。
『猫として生まれ、猫として死に』を何度、繰り返しただろうか。
何度も何度も猫として生まれ変わっている。
それも前世の記憶を残しながら
これだけ何度も転生を繰り返せば、自然と人の言葉も、教養も身につく。
最初の何回かは戸惑いもしたが
今では新鮮味もなく、100回目を超えた辺りから数えるのをやめた。
この生まれ変わり、猫界ではそこまで珍しい事ではない。
昔会った奴なんかは
『次で99万回目。ここまで来たら、大台に乗ってやる。』
なんて息巻いていたが、今は何をしているやら、、、
そんな事だから
人語はほとんど理解出来るし、生きていく術も十二分に身につけている。
ただ、今の社会は、野良が生きていくには、人間が生きやすく作られすぎていて、非常に生きづらい。
江戸の頃は良かった。
地面は剥き出しで
早いものといえば馬くらい
空き小屋や、廃寺なんかも多かったから住処にも困らなかった。
よく七輪の上の魚をくすねては
裸足で追っかけてくる変わった髪型の女中と追っかけっこしたもんだ。
それが今は、地面のほとんどはアスファルトに覆われ、鉄の塊が走り抜ける。
防犯対策とかで、人のいない建物とかはほとんど更地にされてしまっている。
本当に生きづらい世の中になってしまった。
え?
だったら、野良を辞めて飼い猫になればいいって?
全くその通り。
昔は飼い猫として、生きていた時もあった。
しかし、ある時を境に、俺は飼い猫になる事を辞め、野良として生きていく事を決めた。
その理由はまたいつか話をしよう。
今は、ここ、猫ノ谷商店街を本拠地に魚屋でゲンに切り身を貰い、肉屋でタツに切れ端を貰って、自由気ままに楽しく暮らしている。
この物語は、そんな旧き良き商店街の人々と俺の心温まる交流を描いたハートフルな作品だ。
猫日和 ゆう @ek115713
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。猫日和の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます