大地の見守り屋さん

ようなし

初めまして

 地下国家スティングラッドには、

先人族と呼ばれる種族と、人族と呼ばれる種族が暮らしている。

外見的な違いは背の高さぐらいだが、先人族の方がここには長く住んでいると

言われている。



第三層 (居住層)





 今日もまた調査班の洗濯担当という明らかな雑務をこなす。

まずはこの人混みの中、大通りをまっすぐ抜ける。

だが彼、テトラのすれ違う人々より半分ほどの低い身長は

いくらぼろ布のマントで覆われていてもあまりに悪目立ちしていた。


「カトミア、ちゃんと洗濯かご持ってるか?」

「もっちろーん!お昼ご飯も抜かりなしだよ」


 ここより二層上には、最も 地表グランド に近い第一層 (調査層)がある。

そこが俺たちの目的地だった。

だが、そこへ行くには摩天楼にも見える大回廊を2つも上がらなければいけなかった。

さすがに幼馴染のよしみとはいえ12の女の子には重労働だっただろうか。

1歩ずつパターン化された動きで足元を踏み固めるように上っていく。


 大回廊を1つ上がった先は第二層 (商業層)となる。

そこでは外のグランドとの貿易で手に入れた品々(鉱物やその加工品)

が並んでいて娯楽のないスティングラッドで一番活気づいてる

といえるかもしれない。


 しかし、人とは形容し難い像、ずらっと並ぶ同じ形の屋根は、何回も見たら

そのセンスのなさにセンスを感じる。




 本当に”ここ”は退屈だ。

食事はカケラを食べれば事足りるし、何より変化がない。




第一層 (調査層)


 ここでの仕事は、調査班の衣服の回収・洗濯

毎回回収する人は決まっていて、俺たちはこの調査層の1番奥まった場所にある

扉の前で回収することになっている。

だが、この扉は絶対に開けるなという髭もじゃのおっさんからのお達しだ。

「さっさと回収して帰ろう」

そう言って衣服をそそくさとかごに入れ、扉に背を向けた瞬間


ギイィィィ………


  開かずの扉が開き、 

中から、背は俺より1.5倍はあり、髪は肩より下までおろしてある、

顔の整った眼鏡の女性が出てきた。

「あらこんにちは、服の洗濯来てくれたの?」

「はい、そうです」

「かわいい女の子と、そっちの……坊や?名前は?」

「私カトミアだよ!」

「そっちが……、」

「そっちが先に名乗れよ!それに俺はもう今年で18だ!」

「ごめんなさいね私はエリーシャ、この先で仕事をしている調査班よ」

「俺はテトラ、……ていうかその、エリーシャはこの先で何してるの?」

「えとね、、、それは機密事項ね」

「教えて!」

「女の子には年齢みたいに答えられないことがたくさんあるんだよ?」

「俺調査班に入るつもりなんだよ、だから!」

「そっか、、特別にね?」

「私、見守りミモリやってるんだ」


 たしかミモリって、グランドの見張り役だよな?

てことは外の世界を知っている⁈

だったら!

「ねぇ!グランドってどうなってるの?」

「……殺風景なとこだよ」

「もっと詳しく教えて!気になるよ!」

「北には青々とした森があって、あとは草原が広がっているよ。

けどね本当に何もないとこだよ」

「ううん、今の生活と比べたらあり過ぎるくらいだよ!」

「違う、”何か”あるから”何も”ないの……。まぁここよりはマシかもね

ほらっ、交代のミモリが来ちゃうよ。帰って帰って」

「ま、また明日も同じ時間に来るから!」







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大地の見守り屋さん ようなし @younashi__

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ