夜の太陽

 雲間を裂いて強烈に夜を照らしていた。名もない球体を私は夜の太陽と呼んだ。しかし彼等は夜すらも照らせぬ貧弱で淡い、あんな朧の球体に太陽は似つかわしくないと否定するのだ。


 太陽と冠するには確かに余りにも確かに弱弱しく、隅々まで光を届けることが出来ないが、少なくとも夜という枠のなかに彼女より輝く星はいないのも事実。太陽という言葉を唯一の光と例えるのならば昼の太陽、対する夜の太陽となるべきだろう。


 そう理屈は述べられたものの結局それは満月に名を変えていつの時代も夜を照らし続けた。


 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

雨蛙 沼郎 @ritti

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る