赤だったのか、ピンクだったのか


お仕事お疲れ様。

エアメール、届きました。だいぶ早かったね(笑)

あなたらしいなと思ったけど。


経緯は知らないけど、分かりました。お互い持っている荷物はないと思うし特に何もないよね…

こちらこそ何かあれば言ってね。

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いつものようにフランクでかつ直球な口調でメールで返事がきた。

彼女の態度を気に入らない人は、彼女のことを「ツンケンしていて生意気」だという。

自分にとってはそれがありがたかった。


彼女と出会った当時、何より自分自身が勝手に空気を読んで勝手に消えたくなっていた自分にとって、彼女は自傷行為を伴わないで生を感じられる機会だった。


男だから情けないと思われるだろうか、という小さな恐怖はあったが出会ってしばらく経ったころ、麻耶に「最近、なぜか心や体が生きようとしているように感じるんです。前までそんなことはなかったのに。」と言ったことがある。

こんなことまだ付き合ってもない相手に言わなければ良かったけれど、自分は不幸なことに人間関係のコントロールを全く考えられないやつだ。


その時に曖昧な相槌しか返ってこなかったのは今思えば大してその話題に興味を持たれなかっただけなのか。



まだお互い日本にいて月に2回くらい会っていた頃、麻耶の小さい頃の話を聞いた。昔の彼女は今の姿にも通じる元気でおてんばな様子であり、今よりも物静かで少女趣味なようだった。

その頃の麻耶にはよく思い浮かべる心象風景があり、そこでは穏やかな木漏れ日の近くに木の机があり、その上ではノートが木漏れ日を受けていたという。


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