第13話 キミに決めた
「よろしくお願いします」
「大野くんね。いい身体してるな。期待してるよ」
⭐︎あ、朝陽くんがちゃんと挨拶してる
☀︎おたく、俺のことなんだと思ってるわけ?
⭐︎ん〜、マイペース? 自己中?
☀︎あ〜、じゃあそうさせてもらおうかな
⭐︎ま、待って待って。えっ? 自覚ない、の?
☀︎じゃあ、そういうことで
⭐︎あ、ちょっ、待ってよぉ
「身体も動かせて金も稼げる。引っ越しのバイトにして正解だったわ」
『お前らしいな。で、どうだ東京?』
「一週間かそこらでわかんねぇよ。賢こそ博多はどうなんだよ? また飲食店でバイトか?」
『あ〜、……まあな』
「お前のことだから年齢詐称でホストとかしそうだよな」
『……まあな』
☀︎頭がキレるヤツってのはやることが大胆だな
⭐︎はあはあ。そ、そうだね
☀︎なんで息切れてんの? ヤラシイことしたと勘違いされるだろ?
⭐︎さ、されないもん
「それはいいとして」
『いいのかよ。まあ、いいか』
「おう。この部屋の壁、かなり薄いみたいでよ。隣の声がよく聞こえてくるんだよ」
『あ〜、それは嫌だな』
「だろ? 昨日なんかお隣さん、朝からあはん、うふんって一晩中やってたみたいだし」
『まじか、それはキッツイな』
☀︎キッツイな?
⭐︎そ、そうだ、ね
「誠くん、明日入学式でしょ? そろそろ帰らないと」
「クッ! そ、そうだな。いいか夕陽。東京は怖い街だ。善人ヅラして近づいてきては相手を陥れる。最低限戸締りはしっかりしろよ!」
「オートロックだよ?」
「……いいか夕陽。大学生なんて遊び人ばかりだ。サークルの飲み会なんてカモがネギ背負って行くようなもんだ。絶対に行くなよ」
「……友達できるかな?」
「クッ! いいか夕陽。バイトだって———」
「もうっ、心配してくれるのはありがたいけど、もう少し信用してくれないかな?」
☀︎ありがた迷惑ってやつだな
⭐︎……
☀︎おっ、図星だったか
⭐︎そんなこと、言ってないもん
「以上でガイダンスを終わります。今後のスケジュールは先程配布しましたプリントを参照してください」
「はあ、知らない人ばかりで気が休まらない」
⭐︎新しい環境って慣れるまでに時間かかるよね?
☀︎そうか?
⭐︎……朝陽くんは周りのこと気にならないもんね
☀︎なに? 俺が自己中だとでも?
⭐︎……
☀︎ほ〜
⭐︎……もうちょっと、私にも優しくして欲しいな
「……帰れない」
⭐︎せっかくウチに帰れると思ったのに、キャンパス内は人、人、人。
☀︎あんた、踏み潰されそうだよな
⭐︎だからね、たまたま見つけた身体の大きな人の後についていくことにしたの
☀︎ストーカーみたいだな
⭐︎ち、違うもん。でも、その人のおかげで無駄な勧誘受けなくて済んだけどね?
☀︎ほ〜
「あ、そこの背の高い———っと。ああ、そこの眼鏡の君! 一緒にテニスサークルで汗を流さないかい!」
「そこの背の高い———、じゃなくておさげ髪の君。科学の神秘に迫ってみないかい?」
⭐︎相変わらず、寄ってくるなオーラが半端ないよね
☀︎普通に歩いてるだけなんだけど?
⭐︎モーゼの十戒みたいだったよ?
☀︎見たことねぇよ
「ちょっと、そこの近づくなオーラ振り撒いてる君!」
「は?」
「そんな嫌そうな顔しないでよ。私、一応先輩よ?」
「で、なんか用っすかね?」
「うん。キミに決めた!」
「は?」
「私が最初に勧誘するのはキミに決めました!」
「最初って、新入生あまり残ってないと思うんだけど?」
「ちょ、ちょっと出遅れただけよ」
「いや、なに焦ってんの?」
「ん? 何を言ってるのかな? で、キミ地方から出てきたのかな?」
「えっ? なかったことにしてんの? まあ、いいけど」
「あははは。細かい事は気にしない。それでキミの出身地は関東圏かな?」
「いや、違うな」
「ん、そっか。実は私、勧誘していまして」
「……だろうな」
☀︎ボールの中に閉じ込められるかと思ったぞ
☆ポ○モンじゃないんだから
「地域関係なく、地方出身者が集まってみんなでご飯でも食べながら田舎のことを話そうみたいなサークルをやってます」
「メシ食うサークル?」
「あははは。身も蓋もない言い方するとね。大学内のカフェでお茶を飲むのがメインの活動だったりします」
「それ、活動って言う?」
「まあまあ。これ、サークルの案内のチラシ。来週新歓やるからよかったら来て。なんとなくなんだけどキミとは話が合いそうなんだ」
「えらい殺し文句だな。まあ、もらっとくよ」
「あ、うん。あ、後ろの彼女も一緒にどう———、って、あ〜、彼氏さっさと行っちゃったね」
☀︎彼氏?
☆あ、あれ?
「は、はい? わ、私ですか?」
「あ、うん。ごめんね。彼氏行っちゃったけど良かったかな?」
「えっと、一人です」
「あ、そうなの? ピッタリと寄り添ってたから恋人かと思ったよ」
「あ、えっと、1人だと歩きにくいそうだったので」
「えっ? 見ず知らずの人を壁に使ってたの?」
「……はい」
「あははは、なるほど。私、経済学部2年の
「い、今からですか?」
「うん。まだ友達できてなさそうだな〜って思って。ね、一緒におしゃべりしましょ」
☀︎お持ち帰りされたのかよ
☆い、一緒にお茶しただけだもん
新しい環境でも、私たちの距離は微妙なまま。それでも少しずつ、私たちの距離は縮まっていったの。
お隣さん yuzuhiro @yuzuhiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。お隣さんの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます