第12話 卒業
「ごめん夕陽。ダメだった」
「……うそ」
☀︎あ〜あ、大事な時期に女にかまけてるからだよ
⭐︎……私は頑張ったもん
「あさくん、合格おめでとう」
「おう。やっと鈴姉から解放されるぜ」
「ちょっとちょっと? かわいい弟分のために勉強付き合ってあげた健気なお姉ちゃんに何か言うことないの?」
「人の部屋来てスマホいじってただけじゃねぇかよ」
「うっ! あ、あさくんが困ったときのために待機していてあげたんじゃない」
「出番なくて悪かったな」
「もう。年々可愛げがなくなっていくんだから」
「高校生にもなってかわいいとか言われて喜ぶような性癖は持ってねぇよ」
⭐︎たまにかわいいときあるよね?
☀︎は? ねぇだろう
⭐︎そ、その、あの後に疲れて寝ちゃうとことか
☀︎俺までそっちの世界に引きずり込むのやめてもらえる?
⭐︎か、仮にも恋人を変態扱いしないでよ
☀︎あれ? あんた恋人だったのか?
⭐︎えっと、へっ?
「本当に一人暮らしなんて大丈夫なのか? 夕陽はかわいくてバカ正直だから悪い人に捕まったりしないか?」
「それを俺が守るからって誠くんが約束してウチの人、説得したんだけどね?」
「……すみません」
「ううん。いつまでも誠くん頼みじゃ夕陽のためにもならないから。一人暮らしで一皮剥けてきなさい」
「お母さん」
「うん。それに同じ高校から一緒の大学に進学する子がいるんでしょ? 知ってる子?」
「ふぇっ? そうなの?」
「……大野だよ」
「え、えぇぇ」
☀︎嫌そうだな
⭐︎だって、気不味かったんだもん
☀︎ラブラブな彼氏がいたから?
⭐︎違うもん。怪我させちゃったこと
「大野くん? 男の子なのね」
「うちの高校では有名ですよ。いろんな意味で」
⭐︎有名人?
☀︎陰キャ陰キャ
⭐︎派手じゃないけどね?
「ええっ! おばさん卒業式来ないんですか?」
「はいっ? ねぇ、すずちゃん。もう高校生よ? 鬱陶しがられるのわかってるし、行かなくてもいいわよね?」
「当たり前だろ。ってか、俺だって行かないのに親だけ行ってもしゃ〜ないだろ?」
「待って待って、あさくん。あさくんは出なきゃだめよ」
「なんでだよ? 用事があれば不参加でもいいはずだろ?」
「それは受験絡みでの話しだからね? とにかくキミは強制参加です」
「面倒くせっ」
⭐︎えっ! 卒業式でないつもりだったの?
☀︎必要なくない?
⭐︎高校の卒業式だよ? もう会えなくてなる友達だっているんだよ?
☀︎今やスマホで繋がる時代だろ?
⭐︎もう
「来なくていいよ」
「なっ! 何を言ってるんだいゆうちゃん! 卒業したら東京行っちゃうんだよ? それにかわいい娘の晴れ舞台だよ? しっかりとこのカメラに収めるからね!」
「周平さん、そういうところよ」
「キミちゃん! 本当は一人暮らしだって認めたくなかったのに!」
「お父さん、いつまでも小さい子扱いはやめてね?」
「何を言ってるんだい! まだゆうちゃんは小さいままじゃないか!」
「……絶対にこないでね」
☀︎おっ、見事に地雷踏んだな
⭐︎フンッ、朝陽くんにはわかりませんよ
☀︎肩凝るとか?
⭐︎……セクハラですけど
「答辞、卒業生総代、小野夕陽」
「は、はい!」
☀︎よっ! 総代!
⭐︎……誰かさんのせいでまた偽物ですけどね
高校生活、私たちの距離が縮まることはなかった
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