第15話 おしごと

移動する電車の中、相変わらずオスどもの視線が痛い。

姉は既にお顔を余所行きに着替えている。が、先ほどから電車内を殺意の波動が覆っている。

「あんたさぁ、仕事どうするつもり?」

姉が訪ねた。


どうすると言われても、今のバイト先はいずれ辞めて独立を考えていたから別に未練はないし、バーテンの仕事は別の職場でも特に問題はない。

なんならこの棚ぼたで手に入れた美貌で稼ぐ方法だってある。一日でここまで順応できる俺は適応力が高いのかそれとも、どっか麻痺してるのか。若くて綺麗な女が特に労なくチヤホヤされてるのを見るのはこの世界ではそう珍しくない。こういう状況だからこそこれを利用しない手は無いとも思える。


「普段着は適当に選ぶとして、仕事にあった服買わないといけないでしょ?バーテン続けるならそういうのあった方がいいよね?」

意外と考えてた。流石社会人10年目。


漫画読みすぎだなんて言ってごめんよ、姉ちゃん。


ふと電車の窓からまだ準備中の繁華街を見下ろす。顔なじみのライバル店のバーテンが忙しそうに酒瓶を運んでいた。「はぁ~、とりあえず店長になんか言い訳しておかなきゃなぁ。バックレたままじゃ流石にまずいからな」


バイト先のテナントビルに目をやると店長も酒瓶担いで階段を上っていた。

本来は俺がやってる仕事だなぁ、悪ぃな店長~と思って眺めていたら、酒瓶を置いてうずくまった。「あ、あれは腰イッたな…」姉が呟いた。


ほんと悪ぃな…店長、ファイト★


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わすれもの @JacOR

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