無音魚雷の行方
草薙 健(タケル)
サブマリナーの生死を懸けた戦闘
音を立ててはならない。音を立てれば、我々は駆逐艦に気付かれて一巻の終わりだ。沈黙こそ、我々サブマリナー最大の武器。今はとにかく耐えるときだ。
我々の任務――それは、駆逐艦によって厳重に見張られたターゲットに対し、無音魚雷をお見舞いすること。
(駆逐艦の現在位置は?)
作戦の指揮を執る艦長の俺は、隣にいる副長にアイコンタクトを取る。
(分からない。測的手、どうだ?)
副長はあらかじめ決めてあるハンドサインで、同じ室内にいる測的手に合図を送る。
最近はほんのささやき声ですら相手に聞こえてしまう恐れがあるため、リスクを避けるべく無音で会話するのが現代戦闘の常識だ。
しかし、測的手からの反応が無い。
まさか、緊張に耐えかねて意識を失ってるんじゃ……!?
俺が後ろを確認しようとしたまさにそのとき、耳に響いたのは駆逐艦がすぐ近くを通り過ぎる音。
頼む、気付かないでくれ……。
(よし、やり過ごした!)
副長の顔が少し緩んだ。そして、後ろにいた測的手からも肩を叩かれる。
なんだ、息を潜めていただけか……。心配して損したぜ。さぁ、駆逐艦の目がこちらからそれている今が、作戦実行のチャンスだ。
(水雷長。魚雷発射管、一番と二番に無音魚雷を装填)
(アイ、艦長。発射準備完了)
(ターゲットに向けて発射)
(発射します)
魚雷が無音で発射された。
(魚雷、命中せず。繰り返す。魚雷、命中せず)
(なに!?)
ターゲットに魚雷が届かなかった……?
ま、まずい。もし駆逐艦に無音魚雷を回収されたら、我々が持つ無音魚雷の秘密が敵に漏れてしまう!
俺は副長に再びアイコンタクトをとる。
(無音魚雷を回収しろ!)
(わ、分かった!)
しかし、最悪なことに駆逐艦が引き返してきた。まるでこちらが見えているようではないか……!
(どうする!?)
副長の顔が蒼白になっている。
(祈れ……!)
しかし祈りは届かず、駆逐艦による爆雷攻撃が始まった。
■
「
学年末テストの試験監督をしていた
「だからもっと作っとけば良かったんだよ!!」
「テスト直前になって作戦に参加しといて、何言ってんだ!?」
「お前、地面に落としてんじゃねーよ!!」
「仕方ないじゃねーか! 風に流されたんだよ!!」
(ごめん、艦長……!)
四人が教室から連れ出される様子を、僕――
(了)
無音魚雷の行方 草薙 健(タケル) @takerukusanagi
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