無能少女

烏丸 ノート

プロローグ

 とある化学実験室で、能力を宿した子供が生まれた。

 その子供の名を科学者たちは検体アダムA-1と呼んだ。

 それから五十年の時が過ぎた。

 A-1誕生に伴い、世界各国で超能力を宿した子供が続々と誕生した。手を伸び縮み出来たり、空を飛べたり、能力は様々だった。

 そして、中には炎を操る者や、雷、水、風、空気を操作する者まで現れ、超能力者達は戦闘に用いられるようになった。

 能力者達はそれぞれレベル1からレベル10に分けられそれぞれの持ち場を与えられた。レベルの低い者は雑用、レベルの高い者は第一線にて他国と戦わされた。

 それに耐えかねた一人の少年、検体イヴB-1が道具として用いられたきた超能力者達を率い、RBLOを創立した。

 軍にいた能力者の八割を連れB-1は無人島にて施設を建てた。

 自分たちを道具として扱ってきた無能力者の大人達を全て消し去り、能力者が安心して暮らせる世界を手に入れるために。

 その後RBLOは各国から能力者を助け、勢力を拡大させた。

 それにより作られた非能力者集団GLRAを設立。

 非能力者集団を名乗りながら能力者を使い、RBLOを壊滅させるために全精力を注ぎ込んだ。

 中には志願してGLRAに所属するものもいたが、約9割は非協力的な能力者達だった。


「くそっ!あいつら…僕たち能力者をなんだと思っているんだ!」

「イヴ、落ち着いて…」

「これが落ち着いていられるか!」


 机に置かれたコーヒーをカップごと手で払い除け、部屋に割れた容器とコーヒーが散らばる。


「すまない……」

「大丈夫、あなたの気持ちは分かるわ」

「……本島にて、能力者の募集を行っていたな」

「はい、能力者にのみ伝わるよう。明日の朝この島行きの船を出す予定です」

「ちゃんとステルス機能は付けてあるな?」

「勿論、確認済みです」


 次の日、本島の港では能力により周りからの視線を阻害させ、能力者達は集まっていた。


「皆には、これから船に乗ってもらう。そこから本基地へと向かう。ようこそRBLOへ、歓迎するよ」


 港に集められた総勢三百名の能力者。

 その全員をまとめるためにRBLO基地から派遣されたのはレベル8の能力者、アスカ。自らに向けられた攻撃を反射する能力を持つ。


「ただし、認識された範囲でのみ……ね」


 刹那、アスカの頭と胴が離れ離れになった。

 沈黙が走る中、切られた首から滝のような血が吹きでる。

 そして、その裏にはそれを浴びる一人の少女がいた。


「皆さん、私の名前は@&♪-.#?♡……安心してください。私はGLRAの者ではありません。ですが、今からあなたたち全員を、殺します」


 その日、能力者たちがRBLOの基地に行くことはなかった。

 港に残ったのは能力者の死骸と、ナイフを持った一人の少女のみだった。



※RBLO=レベリオ GLRA=グローリア

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無能少女 烏丸 ノート @oishiishoyu

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