第102話 意地悪48(秋デート)

 付き合ってしばらく経った頃、秋になり周りも涼しくなってきた。


「なぁ、雨宮。紅葉見に行かないか?」

「え、先輩から誘われるなんて。勿論行きます!」


 こいつは俺のことが大好きなので、予想通り嬉しそうに食いついてくる。


(くくく、幸せそうに笑いやがって。俺の作戦も気付かずに呑気なやつだ)


 華の舞うような満面の笑み。よほど俺から誘われたのが嬉しかったのか、ぴょこぴょこ跳ねている。


「そんなに嬉しいのか?」

「当たり前です! 先輩からデートに誘ってくれることなんて滅多にないですから。ふふふ、そこまで頑張ってまで私とデートしたかったんですね? 仕方ないですね。行ってあげましょう」


 くすっとおちょくるような笑みを浮かべて上目遣いに見つめてくる。相変わらず付き合ってもいちいちからかってくるところは変わらない。だから、俺に意地悪されるのだ。


「そんなこと言うなら、別に行かなくてもいいぞ?」

「嘘です。冗談です。ちょっとからかっただけじゃないですか。絶対行きますよ!」


 酷い慌てようで食いついてくる雨宮。ちょっと必死すぎて、思わず一歩引いてしまう。腕引くな。千切れそう。


 俺の身を守るためデート行くことを決定させ、放課後を待った。


♦︎♦︎♦︎


「ふふふ、楽しいですね」

「ただ講演を歩いてるだけだけどな」

「それがいいんじゃないですか」


 放課後、約束通り近くの大きな公園にやってきた。沢山の落葉樹が葉を色づかせ、赤、黄色と暖色で周りを染めている。


 隣を歩く雨宮はいつになく楽しそうだ。鼻歌まで歌ってやがる。くくく、この後に俺の作戦で意地悪されるというのに呑気なやつだ。


 しばらく歩くと、イチョウの木が立ち並ぶ道が現れた。下見した時と同じく、道路には銀杏が落ちていて、潰れてるものも多く、臭いを放っている。


「うわ、ここ臭いですね。早く抜けましょう」


 スタスタと早歩きしようとする雨宮。すかさず手を握る。


「ふぇ?! ちょ、ちょっと先輩?!」


 こんな臭いの強烈な場所に引き止められたことで、かなり焦っている。声まで上擦らせて焦っているのがバレバレだぞ?


「そんなに急ぐなよ。せっかくのデートなんだし、手を繋いでゆっくり歩こうぜ」

「え、え? わ、分かりました……」


 ぎゅっと逃げないように力強く握ってやれば、大人しくなった。逃げられないことを悟ったらしい。完璧だ!

完璧に作戦が上手くいった!


 デートと託けて、雨宮を困らせる作戦が上手くいったことに内心でほくそ笑んだ。


♦︎♦︎♦︎


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懐いた後輩がうるさくて寝れないので、意地悪して嫌われようと思う〜それ意地悪じゃなくて惚れさせてますよ? 午前の緑茶 @tontontontonton

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