後編 祖母と神様
俺はその時、おばあちゃんの家に遊びに行っていた。家は浜辺の街から電車で二時間ほど揺られた後、少し山を登ったところにあった。その家はほぼ山頂にあるような感じで、小さく、浜辺の街が見えた。その家には鍾乳石だという彫刻がたくさんあった。おばあちゃんは海についての話をいっぱいしてくれた。おばあちゃんは昔、浜辺の街の近くに住んでいて不思議な少年がいたこと、海のきらめきがいかに美しいものかなど、僕にはまだ分からないことをたくさん話してくれたけど、おばあちゃんの話には魅了されるものがあり、僕はその話が好きだった。
「日向、海はきれいなのよ。怖いこともあるけど、美しいわ。私は海に行くと会える少年が好きだったの、まぁ、思いは伝わらなかったけど、鈍感な人だったから。彼はね花粉を人のような形にしてね、それは不思議だったわ」
「そんなことできるの?」
「彼はできたのよ。彼は。自分で特別な存在とか言っちゃってるのが恥ずかしかったけどね」
おばあちゃんは笑顔で話した。
「彼はねぇ、壮大な夢を持ってのよ。一人でこの世界の海を守るっていつも言ってたわ。馬鹿みたいに思うかもしれないけど私はねぇ、それが「かっこいい」って思ったのよ。今、思い直せばおかしいけどね。ウフフ」
「そして、会って間もないころにね、海の秘密を見つけるだ。海の全てを知る海賊王になるとか言ってわ。そして、どこかに行ってしまったわ」
「その子はどこに行ってしまったの?」
「わからないわ。でも、海の秘密を探しに行くはずなのに、山の中へ行ったのは覚えているわ」
「その人は頭悪いのかな?なんで、海に行かないんだろう?」
「そうねぇ。まぁ、彼が行ったならそこに何かあるんじゃないかしら」
「そうなのかな・・・・ねぇ」
「何?」
「じゃこれは?」
「そうねぇ・・・・・・・・・・・
僕は祖母の話の「少年」のことについて、思い出した。今まで、なぜ気付かなかったのだろう。その少年は、そのまんま神様じゃないか。じゃあ神様はどこにいるのが妥当なんだ?洞窟か?海?いったいどこだ?そして、最後のおばあちゃんの言葉を思い出した。
「この花って何?」
「それはね、枯れない花なの」
「枯れないのって、おかしくない?」
「いえ、それは正確に言うと花ではないのガラスでできた美術品。まるで生きてるようでしょう。それはその子といしょに浜辺で見つけたのよ。その子はこの花には不思議な力があると言っていたけれど、結局何かは分からなかったわ。そうだ、あなた困ったことがあったらそれを持っていきなさい。不思議な力って言うのが守ってくれるかもしれないわ」
「いいの?ありがとう。おばあちゃん。大切にするね」
あの家はまだおばあちゃんが死んだ後も、片づけずそのままにしてあるはず。
その花は星降り草ではないかもしれないけれど、同じような力があるかもしれない。行かなけらばいけない。心の中でそう思った。
「ねぇ、春香。星降り草があるかもしれない」
「え?それどういうこと?」
「おばあちゃんの持っていた美術品に、ガラスの花があった」
「ガラスの花って、それまさに星降り草じゃない」
「じゃあ取りに行かないと・・・」
「その家はどこにあるの?」
「向こうの山の上にある家だけど」
「それじゃあ陸の結晶を使って、それがあれば一度だけ行きたい場所へ行けるはずよ」
「でもそれじゃあ君は・・・」
「消えてしまう。でもそんなことどうでもいい、今はこの危機をどうにかしないと」
「それじゃあ。一緒に行こう」
「一緒にですか。できるかわかりませんよ」
「それでもいい。それに君がいなくなれば、俺たちは困るかもしれないし」
「じゃあ、やってみましょうか」
すると彼女を中心に結晶から、光が出て球状に僕ら二人を包んだ。そして、球は一度大きな光を発してすると、周りの風景が変わった。どこか、嗅いだことがある緑のにおいがした。そこはおばあちゃんの家の目の前だった。
「成功 ですかね?」
「そうみたいだ」
「じゃあ、花を探しましょう」
家の中に入ると花粉の粉がたっぷり入った瓶があった。それも一応持っていくことにした。花は花瓶に飾られて、テーブルの上にあった。
すると瓶の中の花粉が動き出しやがて神様の形になった。
「やあ、君久しぶりだね。そして、そちらは巫女さんかな。私は神様です」
「よし、帰ろうか」
『え。無視ですか?』
「そうですね。そうしましょう」
『あ。これ無視きたわ。これキッツ』
「でも、陸の結晶使えるんですか?」
「確かに、どうしましょう」
「そこで、私の出番なのだよ。さあ、浜辺まで戻してあげよう」
すると、何の前触れもなく、浜辺に移動した。もはや、驚くことなどない。
「ありがと。神様。それで、『怪物』はいつからなの?」
「あと十分だよ」
「よし、じゃあやりますか」
「はい、そうしましょう」
「まず何をする必要があるんだ?神様」
「大量の花粉がまず必要だ。その間に、星降り草の準備をする。巫女がだ」
「準備がいるのか?」
「そうよ。あれでは最大の力を使えない。そのために、青光沢石がいるわ。」
「それは、私が儀式した分がある。」
「そうね。それじゃあ準備に通りかかりましょう」
「君は、私についてこい。君は仕事を覚える必要がある」
「わかりました」
それぞれ分かれて作業を始めた。
「で、神様、俺は何をするんだ?」
「うん、私の言うとおりに動け、そのうち分かる」
神様は陣を花粉で描き、中に旧式文字で海と書いた。俺はそれをまねして、同じように隣に描いた。
「よし、できるな。まずそれを浜辺の端から端まで描け、『怪物』は少しの間私が食い止める。急いで行け」
「はい」
俺は、言われた通りに描き続けた。すると、花粉の扱いに慣れ、同時に十五個一気に描けるようになった。すると、作業の効率は格段に上がり、わずか三分で描き切ることができた。そして、神様に借りたハンズフリー電話で報告した。『何故、そんなとこだけ、ハイテクなのか?』そう思ったが、喉の奥に飲み込んだ。
「終わりました。次は、何をすればいいですか?」
「おぉ。もう終わったのかい?さすが君にも、星降りの力が巫女の近くにいることで目覚めてきたかな」
「星降りの力って?」
「何でもない」
あ、察し。都合のよくないことだけ、黙り込んでんじゃねえよ。
「海を見てろ、陣の意味が分かだろう」
「はい。もう分かってます。」
先ほど、海から来た大きい波は、陣の中に吸い込まれていき、陣から放出され、巨大な水の壁が出来ていた。しかし、一部の水は吸い込まれずに陸に流れこんできている。
「あの壁は応急処置ですよね。」
「ああそうだ。あれは長いことは持たない。『怪物』の前では、気休めにもならない。じゃあ、次に何をするかだな。というか、我々にはこれ以上できることはない」
「それは、あとのことは巫女に任せるだけなのか?」
「そうなるな。まぁ、光沢石でも持って、巫女のとこに行ったら?」
「私はあまり巫女と一緒にいない方がいいからな」
「じゃあ行ってみますよ。どこにいるんですか?」
「海の中だな。」
「それって、」
「そういことではないんだ。海の結晶があればな」
「海の結晶って、陸の結晶のように、光沢石に刻印が刻まれたものなのか?」
「そうだな・・・確かに光沢石なのだが、『青』だ」
「神様が作ったらいいじゃないですか?」
「それは、出来ないんだ。私は一年で一度しか作る権利が与えらあれていない。ただ、神様でないとなると話は別だ。お前がやれ。そのために陣を描かせたんだろ」
「じゃあ、やりますよ」
「そう来なくっちゃ。ラスト一個の光沢石だ。失敗はないぞ」
「それじゃあ、呪文は、・・・
『海の神よ陸の神よ我に許しを、悲しみに慈悲を、どうか恵みを下され』
そう言った途端神様の手の上にあった黄光沢石を中心に
円が生まれ二方向に赤と青の光が・・・・・出なかった。そして、石から緑色の光の筋を出し、俺の周りで渦巻き始め、やがて完全に包み込み俺は意識を失った状態で石の中に閉じ込められた。
『おい、お前、聞こえるか?』
ああ、俺どうしちゃっただろう。力が入らない。体が動かない。見たことない場所にいる。この人誰だろう。そうか、俺は失敗して死んだんだな。
『おいお前、大丈夫か?この世界に来たら、死んだと勘違いする人が多くて、嫌だわ~』
「え?俺、死んでないんすか?」
『ため口かよ、生意気だな~。最近の若者は敬語も使えないのぉかぁなぁ』
「で、俺はどうなってるんですか?」
『死と生のはざまだ。と言っても分からないだろうけど、』
「じゃあ、俺はしてはいけないことをしてしまった・・的な?」
『そんな、イメージでいいよ。まぁ、いけないことをしたのは事実だしね。』
「で、あなたは?」
『海の神様だ』
「ああ、あの迷惑な奴か?」
『違う。陸の神様と一緒にするな。あいつより神聖な存在だ。世界を作ったのは俺様だし、生き物を作ったのは俺様だし、陸に住み着いているだけの下等生物と一緒にしないでくださぁ~いぃ~』
「なのに、そんなに興味もっているんですかぁ?もしかして想い人とか、現代『G』とかもありだと思いますけど」
『ホントに殺しますよ・・・』
真顔って、怖いわ~。
『まあ、(それはおいといて)実はな、『怪物』を起こしているのは、俺様ではない、いわゆる邪神と歌われる存在だ』
「邪神ですか?」
『ああ、そいつを消してほしい』
「消すって、殺す?」
『それは違う、あいつは元々この世にいない存在だ。だから、死にはしない』
「でもどうやって?」
『察っせないやつだな。そのために呼ばれたんだろ?お前に海の御石を託す』
「海の御石?青光沢石じゃないのか?」
『その上位種と考えればいい。じゃあ、元の世界へ帰れ』
「神様、最後に一ついいですか?ここはどこです?」
『ここはな《海の中心》だ。じゃあ、おやすみ・・・』
あれ?意識が薄れていく・・・
三十分前
「おいおい、石になるってどういうことだよ・・」
「神様。これはどういう?」
「おお、巫女か。私にもわからない。わかるのは、見ての通り、石になったということだ。」
「石の封印とでもいえばいいですかね?解除すれば出て来るのでしょうか?」
「私が聞いた話によると、光沢石の中には、海の結晶という成分が含まれているらしい。そして、海の結晶の活動エネルギーは人だとさ」
「じゃあ、喰われてしまうのですか?」
「いや、エネルギーを必要とするのは、結晶ではなく、海の神様だ。その間役と思ってもらえばいい」
「あなたって、海の神様じゃないですか?」
「違うよ。私は陸の神様だ」
「で、エネルギーは何に使われるのですか?」
「海の再生だ。主に御石を作るのにつかわれる」
「確か、光沢石の上位種ですよね」
「海の結晶をより強固に固めたものだ」
「それは、何のために使われるのですか?」
「『邪神』の排除だ」
「邪神は海を犯すものですよね。もしかして、『怪物』って邪神が?」
「その可能性が高い」
「じゃあその生贄に・・・」
「いや、海の神様は『怪物』を抑えるために尽力する人を生贄にしない」
「じゃあ、恐らく海の御石をもらって帰ってくるだろう」
「石にも変化が起き始めましたね」
「さぁ、帰ってこい」
石からは青色の光が発せられ、渦巻いて、人の形になった。
「やぁ、ただいま」
「で、御石をもらってきたか?」
「なんで知ってるんだか。まぁ、神様と巫女だしな。これだよ」
その石はエメラルドグリーンの輝きをした、神様の似顔絵付きの気持ち悪いものだ。
「さすが、海の神様だな。芸術センスが死んでる」
「ですね」
「まぁ、見た目は・・・とりあえず、海の御石であることは変わらないんだ。それで、神様、これで何ができる?」
「掲げてみろ」
言われた通りに、海の御石を掲げると海は動きを止まり、波はもう押し寄せてならなくなった。しかし、海の街の人々の時まで止まるらしいので,また、海の時間を動かした。その間、巫女の動きは完全に停止していて、面白かった。その後、めっちゃくちゃ怒られた。また、祭りの方も進んでいて、母からのしつこいメールによると、神輿を担いでこれから、海の社に移動を始めるようだ。そして、神輿が海の社に着いた時、『怪物』は本来の力を発揮するらしい。
「神輿が海の社に着くまでに何ができるかってことですよね」
「ああ、そこで活躍するのが星降り草だ。巫女、準備は?」
「できてるわよ。それは最高の出来」
「じゃあ、海の御石は何に使うのですか?」
「それは、邪神が来たらの話だ。なんせ、社の祠は海の中心につながっている」
「それじゃあ、海の神様が危ないんじゃないか」
「海の神様は、海の中心と海の中心と言うところに住んでいるのですか?」
「巫女は知らなかったか」
「海の人は神様について、調べてはいけないルールがありますから」
「海の中心はいわゆる、天界のような場所だ。といってもその名の通り、海の中にあるのだがな。あと、結界があるから、邪神なんて入れないんだけど」
「邪神は来ても何の意味も無いんじゃ?」
「何のために、数百年という時間を待っていたと思う」
「それじゃあ、力の強さは前と比べ物にならないと・・・。もしかして、和真が怖がってたのって・・・」
「ああ、その可能性が高い。まぁ、今はそれが重要じゃない。巫女の準備も終わったようだし、待つだけだな。浜辺にでも行くか」
「まぁ、他に出来ることないですしね」
「そうするか、神様が言うし」
「海が荒れてますね」
「そうだな」
「神輿までは?」
「母によると、もうすぐだよ」
「あれ?和真がこっちに地数いてるような?」
「挙動が明らかにおかしくないですか?」
「消えろ、下等生物。捨てろ、その石を」
「なんか言ってますけど・・」
「おい、邪神かありゃ?」
「おお、陸の神様もいるようだね?久しぶりだね。邪魔だから消えろよ。『下等生物』」
「おい、その口をふさげ」
神様は拳を上げた。
「これは、何の罪のない体だぞ。きずつけていいのか?」
「フッ。冗談に決まってるだろ。ふざけてんのか?」
「ふざけてなんかない。俺の目標は変わってない。この海がほしいだけだ。ん?『おい、日向。今のこいつはやばいさっさと封印しろ。俺は気にするな。』中から、何か言ってるやつがいな、あと、ちなみに俺を消すとこいつも一緒に消えるぞ。」
「俺は、和真のことしか信じない」
『海の御石よ。その輝きと共に悪を消せ。』
「ああ、友達は仲良しだな。言っとくが俺は封印しても消えないぞ」
「お前の声は、届かない」
『闇を消し、世界に秩序を』
「聞けないやつだ」
石から出た光は、和真へ一直線に飛んで行った。がそこに邪神の心はなく、日向の真後ろにいた。
「ははっ。残念だったな」
「何言ってんの?お前がだろ?」
「お前何言って?」
そう言ったときそいつの動きは止まっていた。
「光はただの惑わし。そんなんも分かんないのか?和真をどうこうしてくれたんだ。怒ってるに決まってるだろ」
邪神の足跡には、陣が描かれ、光の障壁が囲んでいた。
『封』
「お前、俺はまたここにきて、お前を殺してやる」
「来たら、また封印・・・
ううん、消してやるよ。たった今。」
『神よ、海に災いをもたらすもの。その存在をかき消せ』
陣は消えた。そして、そこに邪神はいなかった。
「日向、お前・・・」
「何、神様?」
「すごいな」
「何が?」
「あの呪文は海にはない、陸の呪文。いや、お前の呪文だな。お前は完全に陸の神様という存在になった」
「陸の神様はあなたじゃないんですか?」
「正確には、陸に神をもたらすものだ」
「じゃあ、あなたは、もうすることがなくなって消えてしまうのですか?」
「違うよ。俺の名は涼海、ただのひとさ」
そういうと、涼海は小さくなった。
「俺は、完全に人になったんだよ」
「え、一緒の学校?それはないわ~」
「そんなこと言うなよ」
いつの間にか和真がいた。
「まぁ、祭り行くか、今更で怒られるか」
「私も連れてってよ。そんな楽しそうなのに連れてかないって、どうなのよ」
「まずは、言い訳考えないと」
「うん、それ大事だな」
僕らは、笑いながら、海の社へと向かった。
海の見える街 kana @umihimekaho
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