うまく言葉にできないけれど、優しくて悲しくてあたたかいストーリー。
人間生きていれば救いようのない絶望を抱えてしまうこともある。それでも人生はそこで終わり、なんて簡単にはできなくて。たくさんの苦しみや悲しみややるせなさや罪悪感を抱えて生きているんだよね。
でもきっと、それだけじゃない。長くて暗いトンネルだっていつかはきっと終わりがくる。その終わりは過去を「忘れる」こととかじゃなく、「大事に抱きしめながら」太陽の光を浴びて、楽しいときに笑って悲しいときに泣いて、しっかりと眠って、そしておいしいごはんを食べることなんじゃないかな。
とにかく、くりゅうがとてもすき。(結論)
夕食の時間をシェアするという、単純な約束。
それは明日を臨むための、やさしい拘束。
持ち物がなにもない部屋にポツネンと居る絵里子と、ぶっきらぼうだけど心底優しい恭介はお隣さん同士。
べらぼうに料理の上手い恭介の手料理は、どれもこれもが震えるほどに美味。
絵里子は毎日、とある期限まで、その恭介の料理を食べることになっていて。
よく考えてみて欲しい。
『食べる』は、どういう意味を持つことなのか。
そこに込められた深い意味がわかるとき、当作の隠し味があなたにもわかるはず。
これは、明日をあたたかくくるむ陽だまりを臨むための優しいお話。
どんな崖っぷちに立たされたとしても、横から掴まえる手が伸びる、震えるほどにきらきらした陽だまりのお話。