わたしが、この応援歌を読んだのは、世間が日常を取り戻し始めた頃……。
卒業式もできずに、正式な入学式もなかった。でも、突然、日常の学校生活がスタートさせられた、そんな、精神的に慌ただしい時。
悔しい想いをぶつける場所もなく、哀しいお別れに余韻に浸ることもできず。そして、友だちを見つける時間さえ与えられなかった、この年。
そんな荒れそうだった自分の気持ちに、暖かく語りかけてくれたのがこの物語。がんばったね……と褒めてもらったのも。そして、前を向こう……と励ましてくれたのも。
優しくて暖かで、ゆっくりと紡がれた言葉たちに、わたしでなくても、きっと癒されると思います。
皆さまが、優しい気持ちになれますように……。なにかが変わるきっかけになりますように……。
季節は巡り、また満開の桜が青空を背景に希望を高鳴らせてくれます。でも現実の世界は戦々恐々の毎日。目に見えぬ凶暴な敵に向かい、いまこそ私たちは団結することが求められています。今作は吹奏楽を通じて明日への希望を描かれています。来年のこのとき、桜は再び咲き誇るでしょう。歩いてきた道を振り返り、互いに笑顔で桜を見上げたい。だから今できること、しなければならないことを歯をくいしばりやる必要があります。音楽はどんなときだって、私たちに歩いていく勇気を音符にのせて後押ししてくれるでしょう。今作の行間からあふれるメロディは、あらためて心を奮い立たせてくれます。すべてのかたに、お薦めです。