第6話

 


 


「にゃーにゃにゃー。(捕まらないのー。)」


「にゃーにゃんにゃ。(疲れたねー。)」


「にゃっ!にゃっ!(手でダメなら口なのー。)」


なかなか捕まらない生命の光にじれてくるマーニャたち。


クーニャに至ってはさんざん前足で捕まえようとあがいていたが、どうにも捕まえることができないため小さな口を大きく開いて噛みつこうとする。


すると、生命の光がすぅーっとクーニャに近づいてきた。


そうして、そのまま大きく開いた口の中に吸い込まれるように消えていく。


「にゃっ!!?にゃっ!!?(ど、どうしよう。飲んじゃったのー。)」


実際には飲んだ感覚はなかったが、生命の光は口の中で溶けるように消えていった。


驚いたクーニャはその場で尻尾をぶわっと膨らませてぴょんぴょんと飛び跳ねた。


「にゃーにゃにゃにゃ!!(えー、クーニャってば飲んじゃったのー?)」


「にゃにゃにゃんにゃんにゃ?(それ美味しかったのー?)


生命の光を飲み込んでしまったクーニャを、マーニャとボーニャは驚いたように見つめている。


マーニャはクーニャのことを心配しているようだが、ボーニャは生命の光の味を知りたいようだ。


「にゃにゃにゃん。(味なんてわかんなかったのー。)」


どうやら慌てすぎて味がわからなかったらしい。


もしくは、無味無臭なのかもしれない。


「にゃーにゃんにゃん?(身体はおかしなところはないー?)」


マーニャが心配そうにクーニャを覗き込む。


「ふみゃ。うにゃぁ~ん。(うん。大丈夫なのー。)」


クーニャは両前足をジッと見つめながら答えた。


「にゃーにゃんにゃんにゃー。にゃんにゃん。(でも不思議なのー。疲れが吹き飛んだのー。)」


「にゃっ!?(えっ!?)」


「にゃにゃにゃん?(ほんとう?)」


「にゃーにゃんー。にゃーにゃにゃにゃんにゃんにゃん。(ほんとーなのー。マーニャもボーニャも食べてみるのー。)」


クーニャがそう言うが早いが、ボーニャとマーニャは生命の光を口に入れようと小さく可愛らしい口を大きく開いた。


すると、マーニャたちが生命の光を追うまでもなく、生命の光の方からマーニャたちの口に飛び込んできた。


「にゃー!!?」


「にゃにゃー!!?」


マーニャとクーニャは驚いて声にならない声をあげた。


急に生命の光が飛び込んできたので驚いたのである。


「にゃ?(あれ?)」


「にゃにゃにゃ?(あれれ?」


でも、次の瞬間その驚きは別のものへと置き換わった。


なぜならば、クーニャの言う通りに生命の光が口の中に入ったら、ダンジョンで生命の光と戯れていた際の疲れが一気に飛んだのだ。驚かないわけがない。


「にゃにゃんにゃー。(すごいのー。)」


「にゃーにゃんにゃぁんにゃん。にゃんにゃんにゃー。(思った以上なのー。クーニャぐっじょぶなのー。)」


疲労も飛んで元気になった三匹はダンジョンの更に下の階層に向かってダッシュで階段を降りていくのだった。


「なあ、見たか?」


「ああ。見た。生命の光が猫様の口の中に入っていったぞ・・・。」


「そもそも生命の光って捕まえられないよな?」


「口でなら捕まえられるのか?」


生命の光をマーニャたちが取り込んだのを見ていた冒険者たちはその場で首を傾げた。


でも、生命の光を口にした瞬間にいきなり元気になったマーニャたちを見ていた冒険者たちはゴクリッと喉をならした。


もしかしたら、生命の光には疲労を回復させる効果があるのかもしれないと思い至ったのだ。


生命の光に疲労を回復させる力があるのならば、わざわざ高くて嵩張る回復薬をダンジョンに持ち込まなくてもよくなる。そうすれば、荷物は減らせるし、金銭的にも楽になる。


その場に残された冒険者たちは一心不乱に生命の光を捕まえようとするのだった。


しかし、手で捕まえようとしてもまったく捕まえることができず、マーニャたちがしたように口で捕まえようとしたが、マーニャたちの時とは違って生命の光は口に飛び込んできてはくれなかった。


それどころか、あざ笑うかのように口に入る瞬間でスッと飛んでいく。


何度も何度も試してみてもそれはかわらない。


そして、他の冒険者が試してみてもそれはかわらなかった。


ダンジョン内の昆虫を採取するために持ってきていた網を使って、生命の光を捕まえようとした冒険者もいる。


しかし、生命の光は網をすぅっとかいくぐってしまい捕まえることなどできなかった。


「・・・無理のようだな。」


「ああ。さすがは猫様だな。俺たちには敵わない。」


「ああ、そうだな。」


「でも、生命の光を取り込むことができたらっ・・・。」


「かなりの有益になるなぁ。どうにか出来ないものだろうか。」


「猫様にできたんだぞ!きっと俺達も・・・・。」


「でも、猫様だからこそ生命の光を取り込めたのかもしれないわよ。」


「「「猫様・・・。」」」


生命の光の絶大な効果を見てしまって冒険者たちは諦めきれずに涙を飲むのであった。


そんな冒険者の葛藤もしらずに、マーニャたちはダンジョンをどんどん攻略していくのであった。


 


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にゃんこ三姉妹の華麗なる冒険記 葉柚 @hayu_uduki

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