第5話

 


 


「にゃーん。にゃにゃにゃにゃーん。(はにゃーん。これがダンジョンなのー。)」


「にゃにゃーん。(いっぱい人がいるねー。)」


「にゃにゃにゃーんにゃあ。(みんな重装備だねー。)」


たどり着いたのは山の中腹付近にあるダンジョンの入口。


周りにはたくさんの重装備の冒険者がダンジョンの入口に並んでいた。


どうやら並ばないと入れないようである。


「にゃーにゃんにゃんにゃん。(結構ならんでるのー。列の最後尾に並ぶのー。)」


「にゃにゃ。(はーいなのー。)」


「にゃんにゃにゃ。(早く入りたいねー。)」


冒険者の最後尾に並ぶマーニャたちを並んでいた冒険者たちは驚いた目で見つめていた。


しかし、声をかけるのは恐れ多くてただ見つめるだけだった。


「ね、猫様がいる・・・。」


「しかも、3匹もだぞ。」


「ダンジョンに潜るのかな?」


「えっ!?猫様の保護者はいないのかっ!!」


「マジかっ!俺、保護者に立候補したいっ!」


「私が立候補したいくらいだわ!でも、冒険者なんてやっていると猫様をお家でお留守番させることになりかねないから、見ているだけがいいのかしら。」


猫様の保護者になりたくても、冒険者という危険と隣り合わせの職についているため、保護者になることを断念する冒険者たちだった。


「えっとぉ。君たちも入るのかい?保護者はどうしたのかな?」


マーニャたちの順番になると、ダンジョンの入口に立っていた男の人に声をかけられた。


「にゃあ?(誰なのー?)」


「にゃにゃんにゃぁ。(どうして邪魔するのー?)」


「にゃにゃー。(入りたいのー。)」


「こまったな。俺、猫様の言葉なんてわかんないんだけど・・・。」


「あら。この猫様たちダンジョンに入りたいって言っているわよ。」


困っていた男に横から助け船をだしたのは、マーニャたちの後ろに並んでいた金髪の女性だった。グラマラスな体系が悩ましい。


女性冒険者はマーニャたちの意をくみ取って男性に通訳して伝える。


「そうなのか。ごめんね、猫様たち。このダンジョンはギルドで管理しているんだ。一応。だから2階層から下に行くにはギルドへの登録が必要なんだよ。」


「にゃにゃにゃーん。(そんなー。)」


あきらかにしょんぼりと項垂れる、マーニャ、クーニャ、ボーニャ。


ダンジョンには楽しいことがいっぱい待っていたはずなのに。とぼやく。


そんな姿を見てしまったダンジョンの管理官の男性はおたおたと慌て始めた。


「ご、ごめんにゃー。ダンジョンの1階層は安全なんだけど、2階層以上は危険なんだよ。」


慌てふためくあまり語尾に「にゃー」をつけてしまう管理官だった。


「まあまあ。猫様だからダンジョンは危ないところじゃないんじゃないかしら?むしろ猫様だからどこにいても安全よ。」


「で、でもにゃー。規則だからなぁー。」


「じゃあ、今すぐギルドマスターに連絡なさい。念話、使えるんでしょ?」


「ま、まあな。わ、わかったよ。確認するから、ちょっとここで待っててくれにゃ。」


そういって管理官の男はギルドマスターに念話をし始めた。


この念話というもの実に便利なものであり、魔力を持っている人間であれば誰でも使用できる優れものだ。


頭の中で話したい相手に語り掛ければいいだけなのだから。


「あー。ギルドマスターからあっさり許可がでちゃったにゃー。」


男は頭をポリポリと掻きながら答えた。


「ほらね。猫様はどこにいたって安全なんだって。ほら、行きましょ。猫様たち。」


「にゃにゃにゃーん。(ありがとなのー。)」


「にゃんにゃにゃにゃにゃ~ん。(やっとダンジョン入れるのー。楽しみなのー。)」


「にゃにゃにゃ~んにゃん。(ミルクあるかなー。)」


マーニャたちはご機嫌でダンジョンの中に入っていったのだった。


 


 


 


 


「にゃぁあ~~~~。(綺麗なのー。)」


「にゃぁああああん。(幻想的だねー。)」


「にゃにゃにゃぁ~ん。(キラキラ光ってるのー。)」


初めて入ったダンジョンの中で、マーニャたちはキラキラとした白や黄色の光の粒が舞っている光景に目を奪われた。


そうして、その光の粒を追いかけるようにマーニャが手を伸ばした。


マーニャの手をスイーッとよける光の粒。


「にゃあ?(あれ?)」


「にゃあああん。(つかめないのー。)」


どうやら光の粒は触ることができないらしい。


マーニャたちは不思議に思いながらも猫の習性かしばらく光の粒を捕まえるためにジャンプをしたり手を伸ばしたりと忙しく動き回っていたのだった。


「はわー。可愛い猫様が生命の光と戯れてるよ。」


「ぐふっ。なんて可愛いんだ。」


光の粒は生命の光と呼ばれるダンジョン内を漂っている物体だった。


ただ、誰もこの生命の光を捕まえられた者がいないため、これが生物なのかそれともただの光の屈折なのかはわかってはおらず、なぞに包まれている。


生命の光と呼ばれる所以は、ダンジョン内でモンスターを倒した場合にモンスターの身体にこの光が集まることから来ている。


倒されたモンスターの死体はこの生命の光に囲まれた次の瞬間には、死体が消えているのだ。


また冒険者が瀕死の怪我を負った場合にも生命の光が冒険者の周りにこの生命の光が集まりだす。そうして、その場から冒険者は姿を消すことになる。


だけれども生命の光は誰にも恐れられてはいない。


なぜならば、瀕死の状態の冒険者はただ消えるのではなくギルドに転移させられているからだ。


そのため、冒険者の間では生命の光を恐れる者は誰もいない。


まあ、転移させられるときに所持金が半分になっているということとダンジョン内でゲットしたお宝等が消えてしまうという不都合はあるのだけれども、そのままダンジョン内に放置された場合は死んでしまう可能性が高いので冒険者たちも文句を言う者はいない。


文句を言って瀕死の状態でダンジョン内に取り残された方が恐ろしいのだから。


ただ軽傷の傷については生命の光は関与しないので傷は自分の治癒力に頼るしかないが。


 


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