彼らが注目を浴びる理由
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彼らが注目を浴びる理由
生徒会のメンバーというものは、兎角注目を集める存在だ。そして、此処・中央高校の生徒会のメンバーも大きな注目を集めていた。
というのも、それもそのはず。彼ら……もとい彼女たちは、開校初の女生徒のみで発足した生徒会、加えて成績優秀、容姿端麗、おまけに機転も応用力も持ち合わせた才色兼備な集団であるためだろう。事実、彼女たちが生徒会に就任してから『空前絶後のどんでん返し集団』として、注目を集めている。
実際、彼女たちが生徒会に就任し、まだ三ヶ月も経っていないにも関わらず、書記である
……と、早くも通常の生徒会が任期満了時点でさえ達成し得ない成果を出し続けている以上、彼女たちの手腕を評価する流れが生じるのは当然だろう。むしろ、こんなに短期間で多くの業績を上げていて、注目されないはずもない。
だが、彼女たちの生徒会メンバーが注目を集めているのは、それが理由ではなかった。勿論、彼女たちの業績も多くの指示を集め、感謝され、注目を集めているが、それ以上に皆の注目を集めることがあったりする。
*
「ねえ、私たち……。いつになったら、業績の方を見てもらえるのかしら?」
中央祭がひと段落し、生徒会室の中でボソリとボヤくのは、今回大活躍をした会計の奈良岡良奈。机につっぷしてボヤくため、漆黒のロングヘアが邪魔をして美しい顔は見えそうにない。だが、ツヤ声とハリのある声と存在感だけで、十分人並み以上の美しさを持っていることは伝わってくる。
「んー。そうねえ、はっきり言って、私たち五人でやってる限りは無理じゃないかしら?」
「わー……。副会長、バッサリ言っちゃいますねえ」
「夢ないですよ、さすがに」
クールな表情でバッサリ斬り返す副会長の目力が、端麗な顔立ちと相まり、迫力を増大させる。間近に見ると怖気付く人がいても不思議がないほどの力強さも、元々美しさに定評のあるメンバー同士。誰一人として、臆する様子はない。現に、絵麻も藍も動じていない。
「そりゃあ、そうでしょ。というか、絵麻たちも私と同じ考えなんでしょ?」
「ふふふ、バレちゃってますか。副会長」
「まあ、『アッチ』のインパクトはエグいほど凄まじいですし。ちょっとやそっとの功績では、太刀打ちなんて出来ないでしょうねえ」
絵麻と藍の返事を受けて、副会長は爽やかな笑みを浮かべて凛と答える。
「そういうこと。だけど、私としては『アッチ』のインパクトに目が向いているからこそ、勝機があるとさえ思っているけどね」
「どういうことですか?」
撃沈していた良奈がムクリと起きて、副会長に困惑の声を投げ掛ける。すると、目の前にいるメンバーたち……書記・前田絵麻『まえだえま』、庶務・楢葉藍『NARAHARAN』、会計・奈良岡良奈『奈良岡良奈』と、窓際で見守る会長・七瀬ナナ『ななせなな』に順番に目配せをした後、副会長・成海ルナ『なるみるな』は優雅に述べる。
「名前をひっくり返しても通じるメンバーばかりが集まった『空前絶後のどんでん返し集団』という理由ばかりが先行すれば、必ず交渉相手は油断する。油断があればあるほど、勝機もゴロゴロ見つかるものだし」
副会長が述べた通り、今期の生徒会メンバーは全員、漢字もしくはひらがな(カタカナ)もしくはローマ字で名前を表記した際、ひっくり返しても……どんでん返ししても成立する名前の持ち主ばかりの珍しい集団で成り立っているため『空前絶後のどんでん返し集団』という異名が立ち所に有名になった経緯がある。
どんでん返ししても成立する名前の持ち主ばかり集結する確率はとても低い。だけど、そんな集団がどんでん返しの功績を積み上げていく確率は更に低い。だからこそ……。
「むしろ、私としてもその武器を最大限活用するつもりよ」
そう言って、七瀬会長自ら見世物要素さえも武器にする気概を見せている限り、『空前絶後のどんでん返し集団』の快進撃は続いていくだろう。
【Fin.】
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