smily days2 -自分を責めないで-

若星 明花

第1話

 カン…コン…カン…コン…カン…


 僕は、本当に産まれてきてよかったのだろうか。卓球をしながら僕はそんな事を考えていた。


卓球は、相手を見、相手の考えを読み、相手を動かすスポーツというけれど、僕の場合は一定の方向に来た玉しか打ち返す事ができない。何故なら足が不自由だから。

リハビリでなんとか立つ事はできるけれど、それも一定時間のみだ。


僕は産まれてきてから、この足のせいで親からも、別の人からも何をするにも嫌な目で見られてきた。ストレスで精神科に通う事にもなった。

そしてそのお金でまた親を困らせた。


でも僕は後悔していない。何故ならその病院で呉葉と出会えたのだから。


僕の親は、僕が何か目立った行動をしようとすると絶対と言っていい程制限してきた。


僕が、周りの人達がスマホでやり取りをしているのを見て、スマホが欲しいとねだった事があるのだが、自分で買ったスマホは没収され、変わりに与えられたのは、アプリの導入にも、使うブラウザにも使用制限をかけられたスマホだった。


そして、親の事が嫌いになった。


卓球をしたいと言った時も最初は反対された。但し、呉葉が同行する事で許してくれたけれど。


カン…コン…カン…コン…


相手の動きを見て、考えを読む。


僕とそんなまともなやり取りができるのは、呉葉と卓球の球だけだ。


もっとも、呉葉はこれをどう思ってるかわからないけど。


そう思いながら右手でスマッシュを打った。




ゲームセット。

僕は勝った。


「勝ったよ。」


僕が言うと、呉葉は


「やったね。よかったじゃん。」


それだけ言ってくれる。

でも僕はその言葉が最高に嬉しかった。



僕が初めて試合に誘った時、彼女はすぐに


「嫌だ」


と言った。

何故なら僕の言った言葉が


「こんな僕の試合でよければ、見に来てくれるかな?」


だったから。


「こんな僕の試合って言うなら、見に行かない。応援もしない。翔吾が自分の事を責めるなら、私にだって応援する権利は無い。」


「私だって、自分に自信があるわけじゃないの。だからそれで『頑張れ』なんて言ったら上から目線じゃん。」


そう言って彼女は断り続けた。


「だったら、僕も自信をもつから、その上で呉葉も僕の試合を見て自信をもって欲しいんだ。」


キザだったよなあ…なんて今となっては僕も思う。

結局、あれから一回も「頑張れ」なんて言われた事は無い。


でも僕はそれでいいんだ。彼女が声をかけ続けてくれれば。



「これでいいの?」

「うん。これで僕達に少しでも共感してくれる人がいてくれればいいな。」


僕達は二人で笑いあった。

広い、広い空の下で。

僕達はずっと繋がっている。









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