第2話

ふんふんふん・・・


この曲、私の今の気持ちを表した曲でノリノリで軽く踊りながら曲の世界に入り楽しむ。

ここのサビ、テンション上がるな~

前にライブに行った時、必死に応援するため飛び跳ねたり声援を送った。


彼女も気持ちよさそうに歌ってたし、素晴らしいライブだった。

スポットライトに当たりながら可愛く、私を見て!私を応援して!って言う気持ちが伝わってくる。

だから、私は答えたい。

私はここにいるよ!貴方を全力で応援してるよって。


早く会いたい、会って好きと伝えたい。



「琴美ちゃん…いつも応援してくれてありがとう」



脳内で大好きなアイドルの声が聞こえてくる。

私はこの言葉を待っているんだ。

一言、ありがとうが聞きたいだけ。

こんな簡単な言葉なのに、彼女がなかなか言ってこないからイライラが募ってしまう。



「琴美、手紙が届いてるわよ」


「勝手に入らないでよ」


「届けてきてあげたのに…我儘な子ね」


「ふん、早く頂戴」


「はい、どうぞ」



無神経な母から受け取ったハガキは、私がだいぶ前に出した手紙だった。

何で、戻ってくるの?

大好きな彼女に送った想いのこもったファンレター戻ってきた。


意味がわからない…


封も開けた形跡がないし、事務所が勝手に送り返してきたの?

ひどい!ファンを蔑ろにしている!

ファンあってのアイドルじゃないの?



イライラが止まらない。

爪をギリギリと噛みながら、事務所への悪態をつく。

私と彼女を遠ざける悪魔の事務所。

もしかしたら、彼女が私にレスポンスを返してくれないのは事務所が制限してるから?

きっとそうだ…だから、、



「お母さん!この場所に連れて行って」


「はぁ?何言ってるのよ」


「早く!文句言いに行くの」


「いい加減にしなさい!変な手紙ばかり書いて、もうやめてよ!」


「変な手紙…バカにしないで!私の想いのこもったファンレターを!」



母がため息をつく。

悲しそうに…哀れな子のように。

私が可哀想に見えるの?

いい加減にして、私はこんなに幸せなのに。



「早く、連れて行って!」


「行ってどうするの?」


「彼女を助けるの!悪徳事務所から」


「どうやって…」


「まだ、決めてないけど…行ってから決める!」


「だから、どうやって…バーチャルアイドルを助けるの!」


「カノンは絶対、私に助けを求めてる!」


「だから、3Dの映像でしょ!いい加減に目を覚まして!」



だから、何?

カノンが3D、バーチャルアイドルで何が悪いの?

私にとっては最高のアイドル、それの何が悪いの!



「琴美…カノンだっけ?その子はこの世に存在しないの。いい加減、目を覚ましなさい」


「いるじゃん、ライブだってするしテレビにも出演したよ」


「だから、あれは映像で…」


「うるさい!うるさい!みんな、私の邪魔をする。やっと、心から応援できるものを見つけたのに…」


「現実を見て!」



頭が痛い…みんな嫌い!

嫌い!嫌い!嫌い!私の邪魔をするな!

バーチャルアイドルを応援して何が悪いの?

頑張ってるじゃん、私はただ応援したいだけなのに。


お母さんと話しても拉致があかない。

カノンの元へ行くしかない…今すぐにカノンの元へ行くには私が映像の中に入るには私に電流を流すしかないよね。



私は泣いている母を無視し浴室まで行き、昨日の残り湯に身を包む。

カノンを守るために目を閉じ、私は映像になる。

あぁ…ドライヤーから流れる電気が私の体を駆け巡る。



ビリビリ…意識が飛んでいく。

私はブラックホールに吸い込まれ、体の血が湧きたち爆発した。

これで、カノンにいつでも会える。

もう誰も邪魔はさせない。

私は、カノンに会いに行くため赤を捨てた。

これで、カノンと一緒。





カ・ノ・ン・マ・ッ・テ・テ


ス・グ・二・ア・イ・二・イ・ク・カ・ラ

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黒と赤 キノシタ @aoko0516

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