セミは脱け殻

架橋 椋香

最早最上川

現場げんばげんばげんばげんばげんばげんばげんばげんば

 最早最上川もはやもがみがわだな、と言った。

 冷麺は冷麺である。世の道理に逆らうのは効率的ではない。

 これは効率を愛する者のための物語だ、と言おうかなんて思ったさ、そりゃあ。でも仕方がなかったんだ。僕にだって限界がある。効率的なのは嫌いじゃあないよ。でもさ、誰もがお前見たいに効率的にやれるわけじゃないんだ。目的のために命を投げられる奴らばかりじゃないんだよ。当然のようにビルの屋上から見下ろす景色は怖いし――それは確かに僕が高所恐怖症なだけなのかもしれないけど――それでもお前だって生きてればお腹も空くだろう?

 そうだ、京都いこう。なんて思い立っても、いくら思い立ったが吉日だろうとすぐに行けるわけじゃないだろう?


現実リアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアル


 小説を読んでるときはいつもこうだ。なぜかこんなにも冷静さを欠く。今度からあの子の前では小説を読むのは止めておこう。気を付けないと僕はすぐに京都行きの新幹線の指定席券を買ってしまう。でも乗車券は買い忘れる。あるある、なのかどうかは知らない。


 まあ、そんなこんなで胡散臭うさんくさい龍が龍◯散を食う小説を読んでいたわけだが、

 『ぼく、大きくなったら遊牧民になるんだ!』と子供。たぶん叶わないよなんて言えない。いや、言ってあげてもいいんだ。温かいシャーベットみたいなで。それが大人としての役目だってことも分かっている。丁寧ていねいに夢を壊して、組み換えれば、もっと高い思考の塔が作れるように。

 でも周りにも大人は沢山いるわけである。わざわざ僕がやらなくても、僕よりもっと上手に壊せる人がきっといるだろう。僕が下手に壊してしまったら申し訳ない。と考えて、現実から逃げてしまうのである。温かいシャーベットみたいなならいいのに。


現場げんばげんばげんばげんばげんばげんばげんば



 と、いうわけで来ちゃいました北海道。飛行機で。

 "あれ?京都やないの?"と思ったそこのあなた、甘いね。京都は僕の家の所在地ありかだ。でも京都行きの新幹線の指定席券を買っちゃったので帰りは新幹線。

 と思ったら指定席券、新鹿児島からだった。詰んだ。まあいいや、さっさと雪合戦して、帰ろう。


──帰宅。


 と、いうわけで来ちゃいました沖縄。飛行機で。

 "あれ?鹿児島やないの?"と思ったそこのあなた、甘いね。沖縄から新幹線で京都に帰れば鹿児島を通るだろう?

 あれ?沖縄って島なの?

 名前に『島』って付いてる鹿児島が島じゃないのに、沖縄は島なの?

 詰んだ。


──現場からは以上です。


現実リアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアルリアル


──現実からも、以上です。


新次元アトランティスアトランティスアトランティスアトランティスアトランティスアトランティス


 新次元、参上!!現実逃避野郎をぶった斬る!!


謎組織『フフフフフハハハハハ』


新次元『何?!うあああぁぁぁぁあぁ』


──新次元、異常です。


──謎組織は逃げ出した。


 この世界は、もう、たぶん、何もない。


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セミは脱け殻 架橋 椋香 @mukunokinokaori

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