薄暗いグレーで覆われた水彩画のよう

 世界が薄暗いグレイに覆われている、不思議な空気感が魅力的な作品です。
 主人公が触れるシーツの皺や、壁紙の模様…、無生物であるはずのそれらが不意に生物のように蠢めく(比喩としてでも)のも、この世界なら何の違和感もなく受け入れられてしまいます。
 「僕は他人に訴えたいことがない」と言っておられるのを下敷きにして読むと、多分この物語も強いメッセージ性はないのだと思われます。けれど、図書館の廃墟に残った本に群れる蝶は、何なんだろう?と考えさせる力があるし、弟はどうして死んでしまったのだろう?ととても気になるし…、で一気に最後まで読んでしまいました。
 他の小説も気になりますが、時間の都合で、なかなか進まないとは思います。でも、少しずつ読破していきたいです。
そういえば、カフカの城、の雰囲気とも似ています。