もし永遠があるのなら、過去も未来も

垂木祭り。
地元のそれほど大きくはないお祭りは、加奈と幹大にとって忘れられない『最高のお祭り』だ。
幹大の視点を追うと、浴衣から、香りから、その簪から加奈ではない別の「消えてしまった」少女の存在が浮かび上がる。
加奈の存在が宙に浮く。
彼女のおどけた口調がさらに、読み手を不安にさせる。
このふたりは本心から付き合っているわけではないんじゃないか――?

以下、詳細割愛。

本文を読み進めると幹大の気持ちが、右へ、左へ、過去から未来へ、フラッシュバックするように揺れていることがわかる。
定まらない視点。
加奈はただ、そこにいるだけのその場限りの女なんだろうか、と不安になる。

ここからが作者の腕の見せどころで、ある種、ありふれた展開をキラキラしたものに変えていく。
「この先どうなるかな?」
という気持ちがたった四千文字足らずの文章の中で強くなる。

ふたりの秘密、そしてふたりの出した結論はその目で確かめてほしい。
きっとこの物語を読んでよかったと思えるものだから。

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