現象。

「――それで、お前は小人…俗に言うUMAという生命体なのか?」

湊は先ほど冷蔵庫から持ってきたキャベツを少女に与えながら少し興味津々で聞いてみた。

すると少女はムシャムシャとキャベツを齧っていたその口の動きを止めて、ボーっと固まる。

そして少しした後に少女は口をゆっくりと開く。

「…私は二日前まで高校に通う普通の大きさの人間だった。でも二日前の下校中、さっきの川で一人石切をしていたら急に目の前が真っ暗になって、気がついたらあの瓶の中に…」

少女の声はだんだんと小さくなっていった。そしてしゅんとなりながらキャベツをゆっくりと齧る。

(こいつが小人になったのはなにか原因が…?)

湊はそう深く考えてみるが、小人になる現象なんて今まで聞いたことがない。

「そういえばお前は家に帰らなくてもいいのか?」

「大丈夫、お母さんは私が子供の時にお父さん以外の男を作ってどこかに行ったし、お父さんは大阪に出張中であと数年は帰ってこないから…」

少女の顔はだんだんと暗くなっていく。

(なんか悪いことを聞いたな…)

湊は気まずくなり無言になる。

その一つの部屋には重たい空気が流れる。

「…あの、お前ってさ――」

なにか話をしようと湊が少女のほうを向くと、少女はジト目で湊を睨んでいた。

「あのさ、そのお前呼びやめて。 私には陽菜っていう立派な名前があるんだから!!」

「お、おう…」

そんな注意をすると、陽菜はまたキャベツをムシャムシャしだした。

(なんか小動物みたいで可愛いな…)

そんなことを考えながら湊は陽菜を眺めていた。

すると、湊達の居る部屋の扉がコンコンと叩かれる。

「湊、ご飯が出来たわよ。」

陽菜と湊の空気が少し和んだ頃扉の向こうからからそんな母の呼び声が聞こえた。

「おん、もうすぐ行くわ。」

「早く来なさいよ。 さもなければ一分ごとにあんたの好物の唐揚げが一つずつ消えていくからね。」

そんな恐ろしいことを言い残すと、扉の向こうから足音が遠ざかっていくのが聞こえた。

「じゃあ俺は飯を食ってくるから行くわ。」

「あ、暗いのは怖いから部屋の電気はつけといてね。」

「……。」

湊は無言で部屋を出ていくと、陽菜は首を傾げた。



「――ふぅ…、ただいま~。」

「お…い。」

部屋に入ると陽菜がなにかを叫んでる。

濡れた髪の水滴をタオルで拭き取りながら湊が陽菜に近づいてみると何を言っているかが聞き取れた。

「遅い!! 私一人なんだから暇だし…寂しい…。」

「風呂にも入っててな、すまん。」

陽菜の周りを見てみると、大量与えたはずのキャベツが無くなっていた。

(こいつには娯楽が必要か…)

そう考えた湊は無言で扉を出て行った。

そして数分後、湊は片手に綿を持って帰ってきた。

「これ、ベットの代わりだ。」

そう言って軽い綿を陽菜にポイっと投げた。

「わぁぁぁ…!!」

ふわふわしている綿に飛び込む陽菜を湊は和やかに見ていた。すると、あることに気づいた。

「お前、服着てないから色々と…見えてるぞ…?」

その言葉に楽しく遊んでいた陽菜は固まり、綿の中に体を埋める。

「今すぐ服を頂戴!!」

「そんなもんねーよ! 明日まで待ってろ!!」

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