姉のいない世界

姉が死んでから、死に明確な理由などなくただただ我々の前に現れると考えるようになった。だからきっと姉の死にも理由はない。あれは事故で病気でただの自殺だ。そうすることでしか俺は納得できなかった。


この世界に新しいものが生まれる度に「あぁ、姉はこれを見ることなく、世を去ってしまったのだな」と感じてしまう。その度に、姉の存在が風化してしまうような感覚に陥る。世間は言う「遺族は過去に囚われている」と。周りからすれば、それは確かなのかもしれない。でもそれは当事者からすれば、囚われているんじゃない。大事な人を忘れてしまわない為の健全な心理現象だ。


そして、僕は閏日、四年に一度の姉の誕生日に勿忘草をたむけるのであった。


「忘れないよ。姉貴」


勿忘草の花言葉はそう。『―』

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勿忘草 千代田 白緋 @shirohi

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