夢の正体

俺はいつもの様に布団から起き上がった。起きて数分後にはいつも忘れてしまう夢をなぜだかはっきりと覚えていた。なんとも不思議な夢だったから。


リビングに行くと母の姿がない。きっと、俺が起きるよりも先に仕事に出たのだろう。


今日は姉の本当の誕生日の日だ。昨日にも言ったけど、改めて「おめでとう」が言いたくなった。そして、寝間着のまま、姉の部屋の前に向かう。


すると、ドアの下から光が漏れていた。それは俺に不吉な何かを感じさせる。姉は決して早起きじゃない。ドア下から光が漏れているのは大方、姉が自殺未遂をした後の合図。俺はこの時から、震えが止まらなかった。何か良くない事が起こる。俺は姉の部屋のドアノブに手をかけようとしたが留まる。心で誰かが叫んでいる。


「開けるな、良くない風景が広がっているぞ」


その制止を無視して、ドアノブをひねり、部屋に入る。部屋の中の光は漏れた光とは違って、俺の目を焼いた。光から目を背ける様に、床を見ると姉がそこにいた。いや、あった。姉はクローゼットの取っ手にタオルを巻き付け、座りながら首を吊っていた。


俺は急いで、首にめり込んだタオルを外す。俺は姉の手に指を当てて、脈を測る。血管の脈動が全く感じられない。その瞬間。俺の頭に駆け巡る今朝の夢。そうか、そういう事だったのかよ。なんで、なんであんな夢を俺に見せたんだよ。俺は姉を抱きしめて叫ぶ。


「忘れる訳ないじゃねえかよ!あんたは……あんたは!大好きな家族なんだぞ!」


集合住宅にもかかわらず、俺は叫んだ。近所迷惑なんて知るものか。俺は姉を抱きしめて離さなかった。


「予知夢は防げる時にしか、意味ないじゃないか。花言葉で伝えるなんて、お洒落なことしてんじゃねえよ」


心からの叫びが部屋に溶けた。

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