全世界各国代表ジャンケン大会の決勝で俺がチョキを出した理由の公式見解

あさかん

全世界各国代表ジャンケン大会の決勝で俺がチョキを出した理由の公式見解

『全世界各国代表ジャンケン大会ってのも面白いんじゃないか? 皆はどう思う? 私はそれが実施されればとてもクールでファンタスティックな大会になると確信している』


 国のトップがSNSで突拍子もないことを言いだす。そしてそれはいつもアメリカの大統領だ。まあ、そんなことは日常茶飯事だから、他の国の面々も大抵はアメリカンジョークとして軽く受け流しているんだけどさ。


 ……厄介なことに今回はアメリカ大統領が放ったそのSNSのジョークに中国の国家主席さんが即リプをしやがったんだよ。


『面白そうネ。私も同感アルよ』


 っていうか、このリプを日本語翻訳した奴誰だよ。いつの時代の漫画の中国人キャラだよ。まあ、このように国家主席さんが食い付いちゃったもんだからお隣の韓国さんなんかも『我々はアメリカ大統領の発表直後から賛同する方向で緻密に調整を繰り返していた』とか、それこそ後出しジャンケンのようなことを言いだす始末。


 そんな感じで他の諸外国のお偉いさん方も『え? 今ってそんな空気なの?』と、スルーの空気から一転して続々と賛同の表明をしていったのさ。


 きっとこんな状況は本人すら予想してなかったんだろうね。その言い出しっぺのアメリカ大統領が『え、マジで? ワシの閃き凄くない?』と、多分一番驚いていたと思う。


 そして我が日本と言えば、最後の最後に、国順でいけばラストを飾る196番目にようやく沈黙を破った。


『えー、私共も、えー、慎重に慎重を重ねて論議を論議を重ねた結果、えー、結論としましては、えー、無事賛同に至ることとなりまして……』


 結局『遅えよ』と各国から総ツッコミを浴びた日本が4年に1度の開催が決定された『全世界各国代表ジャンケン大会』の記念すべき第1回目の大会費用の大半を捻出しなくてはならないことになったんだが、一概にジャンケンと言えど国や地域によって様々な様式があるなかで、費用捻出の見返りとして『ニッポン式ジャンケン』が採用されることになった。


 もちろんと銘打つだけに196の全ての国が参加する。より多くの人を対象とする場合に単純なゲームほど盛り上がり易いと言われるが、それは本当だったようだ。実際にテレビとネットの両方を合わせれば、リアルタイム放送だけでも世界人口の約半数以上が固唾を飲んで自国の代表の戦いを見守っていたくらいだからね。


 工場や学校なんかも自国の戦いが始まると操業や授業を停止して皆で観戦してくれていたって後で友人から聞いた。


 さて、肝心要である実際に行われたジャンケン勝負の状況を説明しようか。


 どこの国も揉めに揉めたのは代表選出だった。つまり誰が自国の代表としてジャンケン舞台に立つかという問題だ。


 アメリカさんなんかは『言い出しっぺのワシが代表にならんでどうするのか』と問答無用で大統領がアメリカ代表選手の権利を掴んで離さなかった結果、一回戦敗退。後の支持率に大きく影響したらしい。


 他の国はジャンケン=運要素が必須ということで、国中からラッキーマン、ラッキーレディを探して選出するのが基本みたいだったんだが、エチオピアさんだったけか、エクアドルさんだったけかも『大統領に選ばれた私こそが一番の幸運の持ち主である』と主張し代表選手となった結果、アメリカと同様に一回戦敗退。彼の帰国後は大きなデモ隊によって迎えられたらしい。


 ちなみに日本代表は『5歳~80歳までの全日本国民を対象とした厳正なる抽選の結果』この俺が選ばれた。ヨーロッパ諸国なんかは『大富豪』とか『世界一の美女と結婚できた男』とか幸運人こううんびととして大半の国民が納得する華々しい経歴の持ち主が選ばれているのに、極々一般人の俺は何の面白味もない選び方で日本代表に選出されたので当然ガン拒否を試みる。


 しかし、日本政府から求められた断る言い訳を『面倒くさいから』にしてしまったところ『拒否する正当な理由』に該当しなかったため、半ば強制的に世界舞台に押しやられることになった。


 元々ヤル気に欠けていた俺は早めに負けて即刻帰国したいのが本音だったのだが、運が良いのか悪いのか順調に勝ち上がってしまい、アジア民族ってジャンケン運に長けているのだろうか、勝ち残った1割の国で決勝を競う最終グループにはアジアの国が半分残っていた。


 そしてあれよあれよという間に最後2ヶ国になるまで負けることが出来ず、最終決戦の俺のお相手は韓国代表のペ・マンナムさん(47歳)、若手の頃から長丁場で人気を集めていた韓国の国民的アイドルらしい。


 無論最終決戦ともなれば韓国さんも国を挙げての大観戦、大盛り上がりのようだ。こちらの日本の皆さんもそれなりに応援してくれていたのだが、正直俺をジャンケン舞台に追いやった政府のお偉いさん方は『ぶっちゃけ適当にやってくれていいから』と決勝戦までは余り関心が無かった。


 それでも流石に全世界優勝が決まる決勝ともなれば話が違うということで、政府も統計学者とか心理学者とか有名な占い師をこっちに寄こしてきて、確率的にはパーが良いとか、グーに機運が感じられるとか、統一性の無い堅物たちが口々に俺へ言い放つ。


 それなのに『最終的にはキミが決めてくれ』って丸投げも良いところだ。まあ正直負けた時の事を考えたら誰も責任を取りたくないんだろう。


 さあ、運命の一戦。


 俺は学者たちの意見をガン無視してチョキを出した。


 そして、相手のペさんが出した手は……パー!


 こうして4年周期で開催される記念すべき第一回全世界各国代表ジャンケン大会は日本の優勝となった。


 ああ、そうだ。


 何で俺がチョキを出したのか? だったよな。


 もし最悪にも最後まで勝ち残ってしまった時に最後に出す手はこれにしようって、最初から決めていたのさ。


 俺はその直近の週に放送された特殊パーマの若奥さんが番組の最後に出した札に全てを托した。



 サ●エさんって本当に凄いと思う。

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