第53話 復讐編 『獅子の穴・襲撃』


 プロレスラー養成所『獅子の穴』はトウキョウエリアのアダチエリアにあった。


 ここにライオンマスクが門下生50名以上を抱え、日々、格闘の訓練を行っていた。


 が、今はそのライオンマスクその人、ナオト・デイトがその両腕を怪我で失い、引退したため、その弟子の育成に余念がなかった。




 ナオトの弟子の中で、もっとも有望なのは、ミギトの移動の際、運転手をしてくれていたカーネ・ダショータと、シーマ・テツオウだ。


 この二人は、異常なくらいナオトを崇拝している上に、実力もあるのでナオトも期待しているようだった。


 カーネは磁気バイクレースの元プロ選手だったので、バイクのテクニックがすごい。もうそこらのプロバイクレーサーでもまだカーネには敵わないくらいだ。





 カーネのレスラー名は、バイクスターだ。



 もうひとりのシーマはメカニックとしても、すごく才能がある人で、ナオトの車『ヴェネツィアの翼』や、磁気バイクの整備を担当している。

もちろん、運転もそこらの一般人には決して負けはしない。



 シーマのレスラー名は、スティールダストだ。





 そんなナオトの養成所『獅子の穴』で有望株の二人をナオトが直々に鍛えていた訓練が終わり、通いの練習生は帰ってしまった夜の出来事だった。


 三名の暗殺者が『獅子の穴』を急襲したのだ。





 「……ん? 今、なにか怪訝な音がしませんでしたか?」


 「え? そうっすか? オレは何も聞こえませんでしたけど?」


 カーネとシーマがそんなやりとりをしたその様子をじっと見ていたナオトは厳しい顔をした。




 「カーネ。シーマ。奥のトレーニングルームに行っていろ。」


 ナオトが二人に向かってそんなことを言った。


 二人は顔を見合わせ、ナオトにこう言った。




 「ナオトさん! オレたちを信用してくださんせ! 」


 「賊っすよね!? オレもやったりますよ! ナオトさん! あなたもそんな身体じゃないッスか!?」


 「おまえたち……。」





 ガッシャーーーン!!



 何か窓が割れた音だ!


 賊が侵入してきたらしい。





 ガッシャーーーン!


 さらに違う方向からも窓が割れた音がする。


 賊は二手に分かれて侵入してきたようだ。




 「侵入者です! 侵入者です! 警戒してください!」


 シルフ系のセキュリティA・Iが警告してくる。



 ナオトたちがいる食堂にいち早くやってきたのは、豺狼と不死鬼の二人だった。


 やはりペアで動くのがこの二人のスタイルなのだろう。




 「これはこれは……。ライオンマスクさんですか? 怪我して再起不能というのは本当だったのですねぇ……。」


 「ぐが!」


 豺狼がそう言って、ナオトのほうをじろじろと見る。




 「なんだ……!? 貴様ら、牢屋に入ってたのではないのか?」



 ナオトは二人の顔を見て思わずそう言った。


 二人のことはナオトがミギトたちを助けに行ったときに見ていて知っていたからだ。


 だが、この二人の方からすると、あの時は気絶していたため、ライオンマスクの正体は知らなかったのだ。




 ニヤリと邪悪な笑みを浮かべ、豺狼が言う。


 「くっくっく……。言質を取りましたよ? わしらの顔を知っているのは、警察関係者以外は、あの小僧たちの仲間しかいない!」


 「ぐが?」


 「ああ。不死鬼よ。わからんか? つまり、あやつこそ本物のライオンマスクであると同時に、シシオウ様を襲ったライオンマスクその本人であったということじゃ!」




 「ちっ……。口を滑らせたようだな……。」


 ナオトも自分のミスに気づいたが、もはや後の祭りだった。



 「まあ、ここで、お前らをもう一度牢屋にぶち込めば……。なんの問題もないだろ?」




 ナオトは車椅子に乗ったままそう言って、豺狼と不死鬼を睨んだ。


 その言葉を聞いて、豺狼は怪訝な顔をした。



 「ふん……。貴様はそんな身体でわしらに敵うと思っておるのか!?」




 「貴様らぁ! 何者だ!? ここがレスラー道場『獅子の穴』と知っての狼藉か?」


 「シーマ……。おめぇはセリフが時代劇みたいなんスよ! まあコイツラが狼藉者だっつーのは、オレも同意見だがなっ!!」


 「おまえら……。この爺さんは危険だ。うかつに近づくなよ?」


 ナオトはシーマとカーネの二人に注意をする。




 ナオトは弟子たちに注意をして、車椅子で少し後ろに下がった。


 果たして、車椅子のナオトに十魔剣の二人を相手にできるのか……?




 「やれぃ!! 不死鬼よ!!」


 「うがぁーーーっ!!」


 豺狼と不死鬼の二人が襲ってきた。


 巨体の化け物の肩の上に小柄の爺さんが乗っかっていて、見る見る顔つきが狼のそれに変わっていく。


 そう、今宵はちょうど満月……。


 豺狼の能力『窒息しそうなスリルな瞬間・SOUL』の最大能力を発揮できるのだ。


 月明かりで能力が上がり、肉体強化をするのだ。


 そして……。




 その遠吠えで一瞬で周りの空気を吹き飛ばし消すことができる。


 月明かりの当たっている部分の空気を意図的に消し飛ばすことができるのだ。


 「わぉおおーーーーんっ!!」




 「ぐぅ……!?」


 「う……、ああっ!!」


 「むぅ……!?」


 ナオトたちは一瞬で息ができなくなってしまった。




 「はーっはっはっはっ!! バカなやつらめ……。わしらに逆らうとこうなるのじゃ!」


 豺狼が勢いづいて攻め立てる……。




 ……が、次の瞬間―。



 ドカッ……!!



 「ぬおお!?」


 「ぐが?」


 豺狼と不死鬼があっという間に、逆に吹き飛ばされていた。




 「ぐ……、はぁ。はぁ。助かった。」


 「しかし……、いったい誰が……助けてくれたんだ?」


 シーマとカーネは何が起きたのかわからなかった様子だ。




 「ふふ……。来てくれたか……。我が親友……。」


 ナオトがそう声をかけた方向に一人の男が立っていた。




 「当たり前さ!? 親友のピンチには地球の裏側にいたって……、駆けつけるさ!?」


 そう答えたのはムツク・モジ-ザ。


 各地を放浪している無敵の格闘家であり、ナオトの親友。無敵の武闘家『クラウド』の異名を持つその男だった。


 格闘家ランキング世界ナンバー1、武力ランキング(個人)でも世界ランキング3位、そして生命力ランキングでも世界3位という脅威の肉体力の男であった。




 「おめぇさんは……。有名人じゃのぉ? しかし、その男に手を貸すというのなら……、その生命、無いものと思え?」


 「ぐがっ!」


 豺狼が起き上がり、ムツクに向かってそう言った。




 すると、ムツクの身体がものすごいチャクラを噴出しだしたのだ……。


 シュゥゥウウウウウウゥウ……


 見ている周りのものがその勢いで思わず、目を凝らしてしまうほどの……。



 「おまえら……。そのセリフはそっくり返してやるぜ? よくも、オレの親友にひどい仕打ちをしてくれたな? 覚悟するのはてめぇらのほうさ!!」



 そう言ったムツクの目はまぶしいほどの輝きを放っていたのだった―。





~続く~



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