第4話 清風明月はいつまで続くかな。

彼女は次の日から話し掛けて来なくなった。私は皆と帰るようになった。やっぱり学年の子達と帰るのが一番安心する。

「ねぇ、唯ちゃんは好きな人とかいるの?」

嬉しかった。胸の奥の方から心臓を抱き締める私の腕が心地よい程度に温かい。愛生ちゃんと居たとき締め付けられて痛かっただけなのに、

「私は特には…」

「ふーんそうなんだ。じゃあ休日とかはなにやってるの。」

「えっと勉強してお昼寝してご飯作って終わり…かな。」

「そうなんだ!偉いね、」

もう少し話していたかった、会話は終わってしまった。皆にどう思われただろうか、やっぱり「面白くない」とか思われたのでは。そう思うと怖い。胸の奥が針につつかれた感じ。私がもう少し面白い人間だったらだけど私は人間の形をしたグズだから仕方がない。きっと心の中は空洞になっている何も無いのに黒煙でそれを隠しているような感じだろうか。

「私こっちだからバイバイぃ~」

私は微笑んだ。精一杯

そこからそこの路地を右に曲がると奥手に見えるのが我が家だ。昔は使われていた痕跡のある花壇にホース、植物の生えていない利用価値のない庭。無駄に大きな家のドアを開ける。

「ただいま」

玄関にはヒールの高い靴が一足並べられていた今日は母の方が先だったらしい。靴を玄関寄りに揃え自分の部屋へ向かう階段の途中で

母がリビングからちょこっと顔をだし

「唯、寒いから先にお風呂にはいりなさい。」

「わかった。ありがとっ」

自分の部屋へと向かい制服をハンガーに掛け下着をクローゼットから引っ張りあげ風呂場へと向かった。廊下には暖房が効いておらずとても寒い。四季おりおりが楽しめる我が国はそんなこと言ったって結局のところ暑いのは嫌だし、寒いのも嫌なのだ。

ガララララ

「寒っ」

独り言なんて滅多に言わないに反射的だと思わず口に出してしまう。「お風呂に入る」とさっき言われたが別に浴槽に肩まで浸かるわけではなく、シャワーを浴びるぐらいだ。これは我が国がどんな季節でも変わらない。15分程度で上がり長い髪の毛を10分程度かけ乾かす。

不意に上をみやげた。空がいつもより高く済んでいるような気がする。月も今日は明度と彩度が高く華麗されて見える。隣の家の木がさわさわと音をたけ雲と一緒に綺麗な旋律を奏ながら歌っている。まさに清風明月。東京の田舎でもこんな空が見えるらんて知らないかった。この町でこの宇宙を見たのは私だけだ。そう確信した。あの空で踊ってみたいそんな妄想が頭をよぎる。気が付けば辺り一面いや、私を囲っていた。この場には生命力さえも感じる。まるで宇宙の神になったみたい今ならなんでも出来るような気がする。

「ゆ~い!」

体を虫が走るように覚醒から放たれた。もっとあの綺麗な空と一緒に遊びたかったと上をみやげても空は答えてくれなかった。

リビングへと駆け足で戻る。

「ごめんね、髪の毛が乾かなくて」

少々無理がある嘘をついてしまった。でも空と一緒に戯れていたなんてそんなメルフェンなこと気恥ずかしくて言うにも絶えない。そんて母はそういうことで感動する人でもない。ごくりと唾を飲み込む喉に詰まりそうになって苦しい。

「そうなのそろそろ髪切ろうね。さぁご飯にしましょう。今日は早く帰って来れたからロールキャベツ作ったのよ。」

と母が表情を緩めそう言った。

「どう?美味しい?」

輝やいた瞳で見つめてくる。何とも言えない味なのは昔からだからこれがお袋の味なのだろうとそう言い聞かせた。

「美味しいよ。特にこのコンソメスープが、」

私も表情を緩めた。これ以上の会話は特にはない。別に無くてもいい、私は不意に言ってしまった。

「ねぇお母さん。夜ご飯いちいち私のこと待ってなくていいよ。そっちの方が時間短縮になるし、二人暮らしなのに毎夜ご飯向き合いながらご飯食べるのは面倒くさいかなって」

別に悪い提案ではないと思う。結局のところ私が嫌なだけだけど。








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鏡の中で笑いましょ。 ベトア @poisonspider0830

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