第19話
「伯父さん!
凛ちゃんのお爺さんがコロナに感染しちゃったよ!」
「重症なのか?!」
「そんなの分からないよ!
早く薬を手に入れてよ!
もう自分で何とかする時間なんかないよ!」
勝人は正直困っていた。
蓮は慌て騒いでいるが、若く元気な蓮や凛ちゃんは心配いらない。
感染したとしても軽くすむ。
問題は感染したというお爺さんだけだ。
つい大好きな蓮に自慢してしまった自分が悪いのだと勝人も思っていたが、蓮が異世界での常識で日本で生活してしまったら、どのような大惨事を起こすのか想像するのも恐ろしい。
この手で蓮を殺さないといけない可能性もある。
霊薬を使えば、コロナでも完治させられるだろうと勝人は考えていた。
だがそれを使えば、絶対に出所が探られる。
異世界の事を権力者に知られると、蓮達がどのような眼にあわされるか分からないと恐れていた。
勝人は蓮の幼い身勝手さを利用することにした。
蓮は恋する凛ちゃんの事は心配していても、見も知らない凛ちゃんのお爺ちゃんの事などどうでもいのだ。
だから凛ちゃんだけは助けると約束する事で、騒がせないようにした。
「分かった、もし凛ちゃんがコロナに感染して、しかも重症化するようなら、伯父さんが何とかしてあげる。
だから心配するんじゃない。
分かったな!」
「え、ほんと?!
凛ちゃんを助けてくれるんだね?
絶対だよ!
約束だからね!」
情けないことだが、蓮のは慈愛の心ではなく、本能による劣情だろう。
初恋というどうしようもない衝動的な本能だと確信した。
予想通り凛ちゃんのお爺ちゃんの事を平気で見捨てる。
お爺ちゃんも治してくれと駄々をこねた場合は、薬が一つしかないから、凛ちゃんのためにとっておくと説得するつもりだったが、その必要もなかった。
同時に蓮に対する道徳教育をもっと厳しくしようと決意した。
今までは可愛い甥を大切に思うあまり過保護にしていたが、少々危険な目にあわせてでも、命の大切さを教えようと決意した。
「蓮!
そろそろ起きて戦え!
蓮が強くならないと凛ちゃんを助けられないぞ。
本当に凛ちゃんが好きなら、倒れるまで戦え。
いや、倒れる直前で止めてやるから、自分で限界を決めて戦いを止めるな!」
勝人は体力が回復しているにもかかわらず、いつまでも横になっている蓮をどやしつけて活を入れた。
できるだけ早く蓮を鍛え、コロナなどの病気に罹患しないように、罹患しても重症化しないように、何よりも地球の権力者に狙われても、自力で跳ね返せる力をつけさせてやろうと考えた。
臨時休校になったので、異世界にコロナウィルスの特効薬を探しに行きます。 克全 @dokatu
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