従来のプロ制度は終焉を迎えつつあるのではないか。
たとえば、ネット小説家が賞を経ずにいきなりプロです! と産声を上げるわけだが、その根拠となるのはいわゆる素人票である。本来、プロであるはずの編集者が後追いで箔づけするのは本末転倒という他ない。
何年か前に歌のオーディション番組を観ていたら、審査員の一人がこれは大衆に支持される歌だから売れるみたいなことを言っていて、興醒めしたのを覚えている。
政治に限らず、民衆の欲はあらゆるものを飲み込んでいくように思える。
そのエネルギーを力に変えられる者が勝者ということになるが、果たして正解か。歴史は勝者が作るというから正しいのだろう、今のところ。それに抗う真のプロの活躍に期待したい。
声優を志す著者さんによる、現在進行形の今を描くエッセイです。
著者さんが通ってこられた道のりは、まさに「アイドル声優」というワードが生まれたときから在り続ける業界裾野のリアルです。
まさに赤裸々な自伝ですけど、ここまでご自身と向き合って文章化する潔いまでの強さが、辛(つら)くて辛(から)い道のりにたまらないドラマ性を醸し出して、読む側からすると引き込まれるんですよ。
自伝というものは、どうしても偏ってしまうものです。だって全部の表現が視点主(著者)の価値観で構成されますからね。それもまた魅力ではあるのですが――こちらは事象をきちんと描いた上で心情を添える形になっているので、まさにそこで起きたことがそのままに感じ取れるのですよね。この構成方法、エッセイ書かれる方は参考になるかと思います。
今現在、新しい活動も開始している著者さんが一歩一歩辿り、進んできた半生の記録。ネタはもちろん、読み応えも最高ですよ!
(「聞こえますか、このメッセージ」4選/文=髙橋 剛)