この作品では余命宣告を受けた少女と主人公の悲恋を描いた作品となっているのですが、作品のアクセントになっている要素で主人公の『記憶異常』というものがあって、
この記憶異常のきっかけは常に作品の中で暗に示されているので、察しの良い人ならすぐにわかると思うのですが、ここで陳腐な作品にならない構成の工夫点があって、『迫り来る最期』の要素。伝えれないというポイントが作品をおもしろくしるのかな~と...。
目を覚まして多くの人と話す中で、どこか隠し事をされているような感覚になる主人公なのですが、これが1章で描かれる物語の起点で、途中出会って仲良くなった少女が、『みんなが隠している主人公の真実を教えてあげる。ただし──』といったニュアンスの条件をだして1章の幕引きに...。というのが大まかな冒頭の流れ。
ここでちょっと印象に残ったこの後のシナリオを勝手にサブタイトルをつけて提示すると。
『伝えることのできない真実と理由』
『何度も出会いを繰り返した二人』
『君と見た思い出の桜』
『もう見ることのできないかもしれない君と見た桜』
といったものが多数。
百合作品として描かれるこちらの作品ですが、異性愛じゃなくて同性同士じゃないといけないシナリオや様々な対比表現など、作品を読むうえで抑えててほしいなと思うポイントをしっかり抑えて表現されているので、読み終わっても繰り返し読みたいと思えるとても魅力的な面白い作品となっていました。
あまりレビューで比較評価をするのもどうかとは思うのですが、誇張表現なしに書店に並んでいる書籍にも勝っていると思うクオリティの作品なので、ぜひ手に取って読んでみてほしいと思いました。
私一人の感性での評価ではありますが、WEB小説の中では天井レベルの面白さを持つ作品だと思います。
私の評価は☆3ですが、正直☆3では物足りないと思うほど...、とても印象に深く残る作品になりそうです。
事故に遭った少女、美桜(みお)が1年以上経って目を覚ました。やがて彼女は、彼女のことを好きな真璃(まり)と出会う。真璃や周りの人の言動から違和感を覚えた美桜は、真璃が倒れたことから、真実の一部を知る。
実は美桜は記憶を失っているだけで、もっと早くに目を覚ましていたため、真璃とはいくつもの思い出を作ってきたのだった。
倒れた真璃の願いをかなえるため、病院で出会った友人の咲とともに、失った記憶と自分の感情の源を求めて、病院をめぐっていくのだが……?
と、やや重いあらすじながら、基本的には明るく、いちゃいちゃしている百合ラブストーリー。
また、登場人物それぞれに、数々の謎がちりばめられて読み進めると止まらない。
百合というよりはむしろ普遍的な愛を描いた小説といえるかもしれない。
ぜひ読んでほしいと思う。
このお話は入院している女の子の物語です。
彼女は階段から落ちて怪我をして入院して、けど一年間の間、眠り続けていたということで、いろいろと記憶がない状態でお話がスタートします。
ただその中で主人公の美桜は、いくつかただ記憶を無くしていたにしてはおかしな状況に気がついていきます。
それが何だろう、何が隠されているんだろう、という気持ちにさせてくれて、主人公と同じ目線で物語をみていられて、続きを読みたいなという気持ちにさせてくれます。
その中で出会った少女、同じく入院していた真璃なのですが。
彼女は出会ったばかりにしては、とても距離を近く詰めてきます。
美桜もそんな彼女に違和感を覚えるのですが、またそれも一つの秘密が隠されています。
そんなミステリー的な要素と、恋愛要素が重なって、どきどきしながら見ていける物語です。
そしてその中で、誰かを想う気持ちは本当に尊いものだなぁと感じさせてくれました。私は何よりその点が一番素敵な部分だと思いました。
ぜひ一度読んでいただきたい物語です。
ある事故で意識不明だった少女、美桜(みお)は、約一年ぶりに目を覚ました。 リハビリと経過観察のために入院生活を送ることになった美桜は、同じく入院している車椅子に乗る少女、真璃(まり)に出会う……。
物語は、主人公の一人である美桜(みお)が約一年振りに病室で目を覚ましたところから始まります。
一年も意識が戻らなかった原因は、自宅の階段から落ちたことだよ、と説明された美桜は、本当だろうか? と釈然としない思いを抱えます。
けれど、違和感は、他にも様々病院内に存在していたのです。
仕事で海外に出ているから、という理由で見舞いに来ない母親。
時折不自然な対応を見せる、顔馴染みの看護師。
初対面のはずなのに、やたら近い距離で接してくる少女、真璃(まり)。
さらには、病院内を彷徨い歩く不思議な少女。
これらの謎は、適切なタイミングで物語の中に配置されていきます。ごく自然にページを捲らせる引きの上手さと構成の巧みさは、特筆ものです。
さて、最初は真璃の対応を訝しんでいた美桜でしたが、次第に彼女が描く絵画と彼女の存在そのものに惹き付けられていって……?
本作、いわゆる百合、というジャンルに属する恋愛作品なのですが、ミステリーものが好きな方も、楽しめるのではないでしょうか。
もっとも、百合、とは言っても身構える必要はありません。女の子二人による甘酸っぱくもじれったい純愛ものなのですから。いちゃいちゃする二人の様子にほんわかさせられます。
章ごとに視点を変えつつ進行していく一人称は、しっかりとした描写をしつつも決してくどくなく、柔らかい地の文で綴られる文章に、ごく自然に情景が頭に浮かびます。
会話文と地の文の比率が、ライト文芸というジャンルにおける理想値に近いのでしょうかね? 兎に角読みやすいのです。登場人物の動きの中に織り込まれる心情に、見事なまでの伏線。書き手としても参考になる部分が多いです。
しかも驚いたことにこの作者さん。これが処女作なんだそうです。
これは最早、才能ですよ。ほんと、勘弁してほしいですね (苦笑)
珠玉の百合作品。この機会に触れてみませんか?
謎が謎を呼ぶ展開に、またきっと、彼女たちに逢いに行きたくなることでしょう。