人が神になるまで、番外編

赤月なつき(あかつきなつき)

ロアイトとラズワード

 「私たち、お付き合いしています。」

 もう少し驚かれても良いのになんでかみんな納得したような顔をするのです。私達は紆余曲折あって今、恋人同士になりました。それも皇帝陛下が突然【皇族恋人計画】なんてものを打ち出したお陰なのですが。ガーネット姉上はタイン兄上と、アメシスはスマラカタと結ばれて、最後に私たちがそうなりました。一番難しいと私は思っておりましたのに、意外とすんなりことは進みました。あの人は私のことがよほど好きだったようです。 では私はどうでしょう。……好き、なんでしょうね。好きです。頬が熱くなりそうです。いいえ顔が熱いです。自然操作魔術に人の顔を熱くする魔法はありません。なのでこれは私が勝手に熱くなっているのです。

 おや、ラズワード兄上が呼んでます。そろそろここに書くのはやめましょうか。それでは、日記様。また明日


「ロアイト、君は日記に様をつけるのかい」

「……はい?ああ。そうですよ、思いの丈を綴っているので」

「で僕にはなんて呼ぶんだっけ」

「ラズワード兄上」

「はあ……」

ため息を吐かれてしまいました。なんだか心外です。

「一度でいいからさ、……いや」

今度は沈黙ですか。なんですかさっきから

「僕を様付けで呼んでもらえないかな」

「はい?……ラズワード兄様」

「やっぱりそう呼ぶよね。君ならそうするよね。そんな気がした。あー!先が思いやられる」

「もう!さっきからなんなんですか」

「君のことについて悩んでいるんだよ」

「悩んでるって何をですか、と言うか私何か問題でもあるんですか」

「あるよ!だって君、僕を兄って呼んでるじゃないか!恋人なのに」

なんだそんなことか。

「仕方ないでしょう。兄上は兄上ですもの」

「だが恋人同士だ。なら兄と呼ぶのは変だ!なぜそう呼ぶのだ。昔そう呼んでいたじゃないか」

「それ何年前の話ですか!しかもあれはまだ皇族入りしていなかった時です!関係が変わったんです」

「陛下は!恋人計画を出しておられた。ならば兄妹としての関係は一時断つべきだろう」

「陛下を出汁にしないでください。確かに恋人計画ですが、兄妹であることを辞めろとはおっしゃられていませんでした。私はあなたを尊敬し、愛するからこそ兄上とお呼びしてるのに」

彼の勢いが止んだ。少し頬が赤いような……

「それ、ほんとうかい」

「どれですか。兄妹であるのは辞めませんからね」

「いや、愛するからって……。それほんとうかい?」

急に顔が沸騰した!

徐々に距離が詰められる。私の得意な間合いからだんだん外れていく。

「……」

なんと答えれば良いのだろう。私のうちに眠る契約者たちはなぜか不機嫌な奴と上機嫌な奴が居る。

「ロアイト」

顔近っ!辞めろー、それ苦手なんだよ。鼻息かかる。背筋というか、腰というか、兎に角。胸がドギマギするのだ。

「僕のことが好きって、愛してるってほんとうかい。君は滅多に本心を口にしないからね。教えてくれないなら無理やり聞こうかな」

「無理やりって?」

嫌な予感がする!

「そりゃあ……恋人同士のやりかたでね♡」

押し倒される!そうだった!ここ、私の部屋だった!寝室!ベッド!危険なんだが!だからお前ら不機嫌な奴がいたのか!あと上機嫌なのお前蝶だろ!呑気にするな!主人のピンチだぞ!

「ま、待ってください!確かに私生まれは王族ですが、下賤な時期の方が長いのです。……ってちょっと!!」

身包み剥がされそう……なんだが!

「もう。聞かれたことにしか答えちゃだめだよ〜。立場を弁えたらどうだい。僕は君の兄だよ。いいや、私は第一皇子さ。権利上、私の方が第二皇女の君より立場が上なのさ。ほうら、逆らえないだろう?」

クッソ!この悪魔が!そうだったよ。ここ、魔界だった。まともな奴なんか居るわけないんだ。

「仕方ないですね。お任せしますよ。ただし痛くはしないでくださいね。私には上層の方と権利を争って闘う権利があるのですから」

「おや、決闘でもするのかい。それは怖いねえ。君は一番手強い。用心するよ」


………………………………………………………………………………………


 完全敗北です。あの野郎、契約者以外と相手したことないって言ったのに。(魔界に来てからは)むかつくんですが。仕方ありません。負けたら相手の言うことに従うしか。私は彼の人をラズワード様、と呼ぶしかなくなりました。しかもあの人私をロア、と呼ぶことにしたらしいです。なんで恥ずかしい!まるでアツアツのカップルみたいです!

 まあ悪い気はしませんが。さて、ラズワード様がうるさいのでこの辺にしましょうか。日記さん

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