第3話 『ブレインカノス』の所有者
ここ、クレサントの街の大通り『カマルロード』は沢山の商業施設が隣接して建ち並んでいる……時間も時間なので閉店している店がほとんどだが……
ちなみに僕が来るのは初めてだ。
「ここに、居んのか?」
「とりあえず、セレネシティから近いから来ようかと」
光のイルミネーションが大通りを明るく照らしている。煌びやかな彩られたネオン状の光は歩く人の目を奪っていた。
「めっちゃ、光ってんじゃねぇか」
「うん、すごい綺麗だなぁ」
歩道は石畳で四角い区切りのレンガが積み上げられた様な道でイルミネーションに薄暗く照らされたそれは夜の神秘的な雰囲気を醸し出していた。
正直人探しでもしていなければもっと楽しめていただろう。
……今度ゆっくり堪能しに来ようっと。
早く記憶を取り戻さなければ。
とその前に。
「あっ、ごめんちょっとトイレ」
「ん? あぁ、OK」
僕達は近くにあったコンビニ『クレサントマーケット』に寄った。
「いらっしゃいませ! ようこそ『クレサント』へ!」
という声を後ろに聞こえた所で僕はお手洗いの戸を閉める。
トイレを済ませると僕は店内で漫画の立ち読みをしているレギトに声を掛けた。
「行こう、レギト……あっ? その漫画知ってるの?」
「これ? いや読むのは初めてだ、でも結構面白いぜ」
僕が持ってる漫画だ、タイトルは『
「僕の家に全巻あるよ? 良かったら今度借りる? あ……でもレギト、バイト忙しそうだしそんな時間ないか……」
「まじ? いいのかよ? 今日会ったばかりだし……なんか、悪いぜ、依頼人なのによ」
フフ……そんな事ないよ……僕の面白いと思った漫画を面白いと言ってくれる人に悪い奴なんていないさ……
「大丈夫だよ、僕はもう全部読んだし、3周してるから」
是非堪能していただきたい!この作品を!
「まじ? じゃあ借りよっかな〜」
その時僕の『トゥルーアビリティマ』の能力が反応した。
『ブレインカノス』 記憶を閉まう
『ブレインカノス』 スーツに記憶を閉まう
僕はすぐ周りを見た、するとコンビニの水滴が付いているガラス越しから見える外を青いスーツに黒いズボンを履いた男性が傘を差して歩いて行くのが見えた。
「おい、シゼ? どうした? いきなり血相を変えて?」
僕はその男性をコンビニ店内のガラス越しから目で追った。
『ブレインカノス』 相手に触れるとスーツに記憶を閉まう事が出来る
……!? 間違いない! 今この人を見たら能力の詳細が呼応するかの様に入ってくる。
「……おい、もしかして今のが……」
レギトも気付いたようだ、僕は急いで黙ってコンビニを出る。レギトも着いてくる。
僕は急いだコンビニをでてすぐ左の一本道の歩道を駆ける。
青色スーツの男性は横断歩道を渡っている所だった。
「ハァッ、ハァッ」
走ると地面に少し溜まった水溜りを、何回か踏んだ。結構雨が降っている。目を開けるのが困難というほどでは無いがもう服は洗濯必須だろう。
「シゼ、急げ!信号の色が変わるぞ!」
僕を追い越し先に走っていたレギトが後ろを振り向く。
「分かってるよ!」
何とか僕とレギトは横断歩道の点滅が切れる前に渡り切って右の一本道の歩道を走り追いかける。
このまま走れば追いつける、相手はまだ歩いている。
僕の記憶の蓋をついに開けられるかもしれない……僕の心臓が高鳴っていた……いや高鳴っているのは全力で走って追いかけているからかもしれない。
一本道の歩道の道中僕の視線の先で左側の建物の入り口階段の様な所に腰掛けている黒色のカッパを着ている人物がふと目に入った。レギトから見ても先にいる距離だ。
その時『トゥルーアビリティマ』の能力が反応。
『ナイト・ス・コール』 雨に濡れている者を眠らせる
は?
その時目の前のレギトがヘッドスライディングをした。
普通なら、おいおいちょっとなにガタイのいい狼の獣人が平地で転がってんだよ!? (もしくは何でスポーツの練習してんだよ!?) と思うところだが、状況が状況だ……
「レギト? 起きて!」
僕はレギトを揺り動かす。反応が返ってこない……息はしているが目は閉じている……やはりこれは転んだんじゃ無い……眠らされている!
「起きて? 転んだんじゃ無いの?」
女性の声が意味ありげなイントネーションで聞いてくる。
しまった……と僕は思った……そして近くのカッパを着た女性の方を振り向く。黒いカッパのフードで顔を隠している、そして右手を上げていた……
『ナイト・ス・コール』 手を挙げる事で雨に濡れている者を眠らせる
さらなる詳細が確認出来た。まずい!このままでは僕も……
「ねぇ、坊や、そこの狼さんは具合でも悪いんじゃないの? 良かったら家に来る? 寝床なら余分にあるよ?」
「あっ、大丈夫です……僕が連れて行きますから……」
「そう、じゃあ……」
僕は嫌な予感がした、だからすぐ彼女を取り押さえようと向かっていった。
だがやはり遅かった……彼女は一瞬ビックリしていたが笑って言った。
「勘がいいね、でも遅い」
彼女は右手を下ろし左手を挙げた。
瞬間僕の視界は揺らいでいく……彼女のカッパのフードの奥を確認する事も出来ず、ポチャリと水が頰に跳ねるのを感じた……
せっかく……見つけたのに……邪魔……
と思った所でシゼの意識は完全に落ちた。
トゥルーベット @ousiro
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。トゥルーベットの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
近況ノート
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます